【J再開コラム】「サッカーのある生活、最高やんけ」。きっとあなたもそう思う。|岡島智哉(報知新聞社)

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 実に、生きがいのない4ヶ月間だった。

 FUJI XEROX SUPER CUP 2020での9人連続PK失敗、J1開幕戦・湘南ベルマーレ対浦和レッズでの鮮烈なVAR初登場。いずれも記者席で目撃した。ああ懐かしき。遠い昔のことのように感じる。

 私が生まれた2年後にJリーグは開幕した。私にとって、「Jリーグがない春」は人生で初めての経験だった。退屈だった。

 サッカーは不要不急にカテゴライズされた。DAZNなどでサッカー観戦ができる「ステイホーム」はきっと、それはそれで幸せなものだったに違いない。しかし、日本だけでなく、世界中からボールを蹴る音が消えてしまった。

 再開後、選手は中2、3日が当たり前の過酷な日程に直面する。それはサポーターにとっても同じだし、記者にとっても同じだ。12月のシーズン終了まで、目が回るほど忙しい5カ月間となる。

 へっへっへ。この時を待っていました。喜んで、目が回るほど忙しくなります。

 未知のウイルスとの闘いは、これからも続いていく。先日、「新しい観戦様式」が発表された。スタジアム収容人数の50パーセントが来場可能となる8月1日以降も、手拍子ダメ、歌などの大声ダメ、タオル回しダメ、ハイタッチダメ。うーん、厳しい。

 いわゆる「ライト層」が離れてしまっていることは、最近のJリーグ関連記事のPV数からも推察できる。東日本大震災の際、Jリーグは約1カ月中断した。J1の平均観客動員数を見ると、2010年(1万8428人)の水準に戻るまで、実に7年を要した(2017年は1万8883人)。ワクチンが完成し、スタジアムのフル動員が可能になったとしても、コロナ禍でサッカーから離れてしまった人々を呼び戻すには数年かかるだろう。

 それでも今は、様々な制限を楽しみながら、今ここにあるサッカーに浸る時だ。熱狂あふれる密なスタジアムはもう少し先だが、逆境を力に。

 キャンプなどの練習試合を取材していると、選手の中にすさまじいコーチング力を持つ人がいることに気づく。無観客や観衆制限試合では、耳をそばだてずとも聞こえてくるはずだ。また鹿島アントラーズを例に挙げると、永木亮太、三竿健斗らが相手に体をぶつけてボールをかっさらうシーンは、ラグビーばりの「ドスン」という音がする。おでこの中心でボールの中心を捉える上田綺世、関川郁万らのへディングは、「バチンッ」という破裂音のような響きが広がる。ゴールネットが揺れる「パサーッ」という音も、個人的に大好きだ。ぜひご静聴願いたい。

 段ボールサポーター、リモート応援、投げ銭など、各クラブが知恵を絞って編み出した取り組みにも注目だ。声が出せないならばと、「We Will Rock You」のリズムで足踏みしたりなんかしちゃったりして。クラブ職員のおじさんたちが務める「ボールパーソン」や「担架隊」も、なんだかほほえましいではないか。

 昨年、体調不良で2カ月ほど休職した。復帰初戦は12月21日の天皇杯準決勝・鹿島アントラーズ対V・ファーレン長崎。結果として鹿島が3−2で勝利し決勝に進出したが、試合内容はパッとしなかった。長崎の気力よりも、鹿島の低調ぶりが目立った。一発勝負のトーナメントらしさがない迫力に欠けた試合だった。私自身も取材活動にドクターストップがかかっていたため、ただリハビリをかねて記者席から試合を眺めることしかできなかった。

 しかし、2カ月ぶりに味わうJリーグは最高だった。試合前からスタジアム周辺にユニホーム姿のサポーターが集い、笑顔と真顔を交互に浮かべながら戦いの時を待つ。大声援を背に、選手がウォーミングアップを開始する。一瞬の静けさを経て、選手入場。高速カウンターでボルテージを上げ、ゴールに沸き、失点に頭を抱え、判定に怒り狂うスタンドを眺めながら、「サッカーのある生活、最高やんけ」と思った。

 Jリーグは大きな一歩を踏み出します。どんな制限があろうとも、あの時の自分と同じような感情を抱く人が多く出てくるのではないでしょうか。さあ、4カ月ぶりのJリーグ再開の時。繰り返しになりますが、この時を待っていました。喜んで、目が回るほど忙しくなります。

文=岡島智哉(報知新聞社)