綾小路 翔(氣志團)×平野雄大ロング対談! “家フェス”で感じた「音楽とテレビの可能性」【後編】

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新型コロナウイルス感染拡大に伴う全国的な自粛期間真っ只中の5月6日深夜、画期的な番組がオンエアーされた。それが、家フェス『STAY HOME,STAY STRONG〜音楽で日本を元気に!〜』だ。

綾小路 翔(氣志團)インタビュー記事:フォトギャラリー

フジテレビ地上波、CS放送フジテレビONE、動画配信サービス「FOD」で放送・配信されたこのプログラムは、総勢38アーティストが、思い思いのスタイルで収録した在宅パフォーマンスを繰り広げるという、まったく新しいスタイルの音楽番組だった。

リアル以上に響いた各アーティストのガチな思い、そして短い制作期間で番組を作り上げた制作スタッフのマジな思い、これらを実行委員長の氣志團・綾小路 翔とフジテレビの平野雄大が、その裏側も含めて語り尽くす。

綾小路 翔(氣志團)が語る。あの画期的な音楽番組“家フェス”が成し遂げたこと(前編)、音楽番組“家フェス”の裏側と反響(中編)に続く後編(最終回)をお届けします。

「音楽の真髄」を出演アーティストが感じさせてくれた

── 当たり前ですけど、番組制作に携わった人たちみんながひとつのチームになっていたということが、成功の要因としては大きかったのでしょうか?

綾小路 この時代にまず必要なのはスピードだと思っていて。今こそ、しがらみとかそういうもの関係なしに、物理的には動けないかもしれないけどそれでも動くっていうことが求められてるんじゃないかなって、凄く感じていたんですよね。

それを体現したのが、今回この番組を作り上げたチームだったので、その一員になれたことが何より誇らしかったですね。

── お話を聞いていると、バンドを組むときの初期衝動にとても近いものを感じますね。

綾小路 ほんとそうですね。中3になった時にやっと自分たちの天下が来たと思ったら、今度は暴走族でまた縦社会の一番下っ端かよ!って落胆したんです。

だから誰にも指図されずに自由に単車乗り回してーよって思ってたはずなのに、すげえカッコいいチームを見かけちゃって、結局自分からそこに入りたくなっちゃった。その時の感じに似ているんですよね…ってわかりづらい例えですかね(笑)。

番組上は実行委員長みたいになってるんですけど、実際は自分からブッ込ませてくださいってだけなんですよ。だからもう、鉄砲玉みたいな感じで行けたんですよね(笑)。

もともと気質がそっちですから。そんな僕に「長」なんて肩書をつけてもらったもんだから、舞い上がっちゃって(笑)。もう死んでもいいぜ、みたいな気持ちで行けましたね。なんかね、久々だったんですよ、そんな気持ちになれたのは。

氣志團ってどこのシーンにも混じれないバンドだし、そもそも自分含めて全員がどこのチームにも入れてもらえない奴らで集まってできたバンドなんで、そこがプライドでもあったし、とはいえどこかいじけて成長してきたんでしょうね。

だから気がつけば、自らの意思で誰かの輪の中に入っていくことはほぼ皆無で。でもそんな自分から見ても、カッコいい! 入りてえ!って心の底から思えるチームでした。

自分の中で忘れていた感覚を取り戻すような感じでした。永遠の16歳なんて言ってますけど、デビューして20年以上経って、色んなことを知れたし、知ってしまった。ずっとガキのまんまじゃいられないのかなとも思うようになった。

でも今回ばかりは本当に16歳の頃の気持ちになれましたね。わずか数日間の出来事ではあったんですけど、僕が音楽に惹かれた瞬間を思い出したりしました。

べつに崇高な音楽で育ったわけではなくて、これだったら俺でもできるんじゃねえか!? なんていう勘違いからすべては始まったのですが、それはやっぱりロックの根っこの部分に感銘を受けたんだと思うんですよね。

その「音楽の真髄」みたいなものを今回出演してくれたアーティストのみなさん全員が感じさせてくれました。

── 誰とも直接会ってないのに、たくさんのものを感じられたというか。親近感も含めて。そこは不思議ですね。

綾小路 例えばクリスタル・ケイちゃんだとか木村カエラちゃんだとか、本来ドブネズミの糞みたいな俺たちが近寄ることもできないような方々とも音楽でつながることができましたからね(笑)。

僕、こう見えても引っ込み思案なんで、フェスの現場なんか行っても意外と誰とも喋れないで帰ること多いんですよ。だけど今回は誰とも会ってないんだけど、すごく“つながった感”があったんですよね。

今度みんなとどこかの現場で会ったら、俺から話しかけられるんじゃないかな?って(笑)。不思議な連帯感がありますね。だから今のコロナの状況がなかったら、こんなふうにつながれることはおそらくなかったと思うんですよね。

でも、この人とはつながれる理由はないのかなっていうのは、そういうふうに思い込んでいるだけだし、音楽ってどんな状況でも何か大切なことに気づかせてくれるんだなって思いましたね。

だからまたいっぱい欲が出てきちゃいましたよね。この番組に携わらせていただいたおかげで、もっともっとやりたいことができちゃったし。そうだ雄大さん、今度フジテレビでLUNA SEAのイベントやるんですよね?

平野 『MUSIC AID FEST.〜FOR POST PANDEMIC〜』(※5/31にフジテレビONEで無料放送された。LUNA SEAの呼びかけにより総勢25組を超えるアーティストがリモート収録によるライブ演奏を披露した)ですね。

綾小路 めちゃくちゃ対抗意識燃やしてるんで(笑)。LUNA SEA先輩、見せてもらいますよって(笑)。で、そんなところから、今度はそのイベントともつながりたい(笑)。

今回やったことは決して無駄じゃない。むしろ画期的だった

── テレビ番組として感じた可能性はどんな部分ですか?

平野 LOVE PSYCHEDELICOのNAOKIさんが「たくさんの人に素敵な日常がプレゼントできるなんて、テレビ番組作りって素晴らしい仕事だな! と思いました。素敵な番組に招待してくれてありがとう!」って言ってくれたんです。

ほんとそうだなって思ったんですよね。何かそういう基本的なことも忘れてたというか。やっぱりそれは、さっき翔さんもおっしゃったみたいに、僕らもバンドを組むような気持ちで、俺たちはこんな気持ちなんだけど、やる? やらない? 賛同してくれるなら一緒に歌おうっていう感じで始まったことがすべてなんですよね。何もかもが手探りでしたし、正直に言えば、出来上がりのイメージも最初はバラバラでした。

だからみんなで同じリズム刻んでチューニング合わせながら突き進むしか方法がなかったんですよ。今だから言えますけど、ブッキングがスタートした時は、全然無理だなって思いましたから。

今回二人三脚でやった三浦淳(『LOVE MUSIC』チーフプロデューサー)なんか二日くらい経って誰も決まんなかったら、企画を取り下げましょうって言ってたくらいでした。

「今さらできねえよ、そんなこと!」なんて言いながら、なんとか自分たちの気持ちを伝えて、賛同してくださるアーティストの方たちが徐々に増えていき、そして翔さんが加わってくれたことで一気に視界が広がりました。

結果、38アーティストも集まってくれて、尺はまんないよー、と嬉しい悲鳴になって。とにかくやったことのないことをやるんだ、今伝えたい思いを形にするんだっていうテレビ番組を作る上での基本を改めて思い知ったという部分が、何よりこれからに向けての可能性だと思います。

細かいことで言えば、CRAZY KEN BANDの横山剣さんがあんな上手にオルガンを弾けるんだとか。MINMIさんのピアノ弾き語り素敵だな、とか、アーティストにとってみれば当たり前なことだと思うんですけど、我々はいつも完成形しか見れないし聴けないので、普段見れない一面を見れたというのも貴重でした。

こういった一面ももっとテレビで見たいし、これからの番組作りにおいてヒントになる部分がたくさんありましたね。

綾小路 今回ちょっと(出演するのは)厳しいっていう方もいたと思うんですよ。タイミング的なこともあっただろうし、環境的なこともあっただろうし。何せ東京ってなかなか大きな声を張り上げられる住宅ってないんでね(笑)。

でもオンエアーを見ていて、俺の方がもっとできるぞって思った人もいるでしょうし、そうやって刺激して、刺激されて、広がっていけばうれしいですね。

ウイルスって完全にはなくならないと思うんですよ。ワクチンが開発されたとしても、どこかで共存していかないといけないわけで。さらにはコロナが落ち着いたとしても、今後どんなものが出てくるかもわからないですからね。

我々が生まれてからこれまでは、たまたま運よくそういうことを気にせずに生きて来られましたけど、ここ数年はSFの中の話だなって思っていたようなことが現実になったりしてますからね。

もしかしたら1年のうち何ヶ月かは自宅に篭らなければいけない時代が来るのかもしれないし。そういう予測不能な未来に向けて、今回やったことっていうのは決して無駄じゃないし、むしろ画期的だったと思うんですよね。

どうなるかはわからないけど、これはこれでやってよかった。だから広がっていけばいいよねって思いますね。この時代のこの状況を、少しでもいい方向に持っていきたいですね。

── 一方で、あの番組を見て、「早くライブ会場に行きたいな」って思わせたのもひとつのゴールだったのではないでしょうか?

綾小路 そうですね。まずは、家の中に籠もってばかりで鬱屈してしまった心を少しでも明るくしたいっていうのが大きくありました。

その次に、やっぱり音楽最高だから早くコロナをやっつけて、生の音楽をいっぱい浴びに行こうよっていう気持ちになってもらうっていうのがテーマとしてはあったので、そう思ってもらうのが一番うれしいですね。

この状況をみんなで収束させて、大手を振ってみんなでライブハウスに行こう! フェスに行こう!って思ってもらうことが何より大事なことだと思います。

平野 みんながモッシュピットでグルグルやっている昔のフェスの映像なんか見てると、もうこんなことできる日は来ないんじゃないかな……なんて、ちょっとノスタルジックな気分になってしまうんですけど、きっと新しい当たり前を作っていかなければいけないんだなと思います。

だから今回やった家フェス『STAY HOME,STAY STRONG〜音楽で日本を元気に!〜』という番組は、ライブパフォーマンスのひとつの方向性は示せたかなと思うので、今後はますますリアルとバーチャルなものが共存していくような新しい形を模索したいですね。

── 少し先の話になりますが、9/26と27に開催が決定している『氣志團万博2020』が今から非常に楽しみです。

綾小路 ありがとうございます。何とかいい形でやれるように全力で動いています。正直、絶望しかけることばかりなんですけど、今回この番組のおかげで、ものすごくたくさんのヒントをもらいました。今やるべきことをやろうと思っています。がんばります!

●インタビュー全3回:各回更新!

綾小路 翔(氣志團)が語り尽くす!あの画期的な音楽番組“家フェス”が成し遂げたこと(前編)

綾小路 翔(氣志團)が語り尽くす!音楽番組“家フェス”の裏側と反響(中編)

『STAY HOME, STAY STRONG〜音楽で日本を元気に!〜』
★楽曲ノーカット4時間完全版

フジテレビNEXT
※スカパー!/J:COM 無料放送

7/2(木)19:00〜23:00
7/19(日)14:00〜18:00

詳細は公式サイトをご覧ください。

出演
MC:実行委員長 綾小路 翔(氣志團)

出演アーティスト
AI
ISSA (DA PUMP)
綾小路 翔(氣志團)
宇崎竜童
ウルフルズ
奥田民生
ガチャピン・ムック
かりゆし58
木梨憲武
木村カエラ
鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)
クリスタル・ケイ
Creepy Nuts
KREVA
Kj(DragonAsh)
THE BAWDIES
ジェニーハイ
Zeebra
新里英之(HY)
セイジ(ギターウルフ)
世良公則
TAKUMA(10-FEET)
土屋アンナ
TOSHI-LOW(BRAHMAN/OAU)
ナオト・インティライミ
中納良恵(EGO-WRAPPIN’)
新羅慎二(若旦那)
野宮真貴
平井 大
藤井フミヤ
MIYAVI
MINMI
森山直太朗
森山良子
山内総一郎(フジファブリック)
山口隆(サンボマスター)
横山剣(クレイジーケンバンド)
LOVE PSYCHEDELICO
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