ゼネラルマネージャー・西川圭史氏(写真左)とホームタウン推進室長・灰田さち氏(写真右)。写真:村田 亘

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 金沢のクラブ事務所は郊外にある。石川県西部緑地公園陸上競技場にほど近い住宅地。傍には金沢市民に憩いと潤いをもたらす犀川がゆったりと流れている。しかし一歩事務所に入れば、J2再開を間近に控えたスタッフたちが忙しそうに駆け回り、そこここで打ち合わせが行なわれていた。
 
「サポーターのみなさんに少しずつでも助けてもらいたいと思っていたが、我々以上に厳しいのは観光産業に携わるパートナー企業さん。いつも支えてくださっている方にも元気になってもらいたい、みんなにプラスになることを考えたいというのが原点だった」
 
 こう話すのは金沢のゼネラルマネージャーを務める西川圭史氏だ。鳥栖や新潟、大分などが段ボールサポーターを、広島がTシャツを発売し、鹿島がクラウドファンディングでの支援を呼びかけるなど、各クラブがさまざまな方法で新型コロナウイルスによる危機を乗り越えようとするなか、金沢が6月9日に発表したのは『クラブ支援プラン』と『エア遠征プラン』だった。この2つのプランに込めた思いを西川氏は上記のように語った。
 
『クラブ支援プラン』とは、金沢のホームサポーター向けの商品で、リモートマッチで段ボールサポーター(クラブは魂身サポーターと命名)を掲出するというもの。ただし新潟が1500円、大分が2000〜7500円で販売しているのに対し、金沢は11000円。値段を見ても単なる段ボールサポーターとは性格を異にしていることがわかる。

 その証拠に『クラブ支援プラン』では魂身サポーターの掲出だけでなく、余剰分を「トップチーム運営」「試合運営」に役立ててほしいなど、購入者がその用途を指定できる。つまりは「どちらかというと寄付をしていただくという側面が強い」と西川氏は言う。
 
 そしてもう一つの『エア遠征プラン』は、ビジターサポーター向けに販売されたもの。値段は『クラブ支援プラン』と同じで、同様に魂身サポーターをビジターゴール裏に掲出する。ただしこちらのほうはそれに加え、金沢カレーや和洋菓子、海鮮・肉、工芸品といった石川県の特産品8種類のなかからひとつを選択すると、それが返礼品として送られてくるのだ。
 段ボールサポーター掲出を対戦相手にまで広く呼びかけている事例は見たことがない。その理由を西川氏は次のように話す。
 
「我々は日頃からいかにアウェーサポーターにおもてなしをするかを考えている。今シーズン、金沢に来るのを楽しみにしていたサポーターもたくさんいたと思うし、コロナが収まったらまた来てもらいたいという思いがある」
 
 これらふたつのプランの生みの親とも言えるのが、ホームタウン推進室長の灰田さち氏。「本来ならスタジアムに来たついでに観光も楽しんでほしい。だけどいまはコロナの影響で来県される方が少ないし、しばらくは以前のように来ていただけないかもしれない。だから地元のものを全国の方に楽しんでもらいたいと思って企画した」と語るように、その思いは西川氏と同じだ。
 
 そのため『エア遠征プラン』は今シーズンを通して募集している。また『クラブ支援プラン』は17日をもって一旦募集締切となったが、今後は魂身サポーターの掲出ではなく『エア遠征プラン』と同じく返礼品を送ることで継続していくという。これも「なかなか県外に観光に行けないからこそ、石川県民に地元の魅力を再認識してほしい」(灰田)との思いによるものだ。
 
 リモートマッチや人数制限付きの試合に加え、平日開催も多くなる今シーズン。来場できない人にどうクラブの存在を発信するか、ホームタウンの特産品や魅力を知ってもらうか、そしてパートナー企業にも利益をもたらすにはどうすればいいのか。金沢というクラブはこれまでもアイデア勝負の企画で数々の話題をさらってきたが、『クラブ支援プラン』『エア遠征プラン』もまた、この難局を打開するためのアイデアが詰まった企画なのだ。
 
 取材を終え熱気あふれるクラブ事務所をあとにし、西部緑地公園陸上競技場の前を通る。静かにたたずむ金沢のホームスタジアムは、リーグ再開の日を待っている。27日の18時、J2再開の松本戦。そこにはクラブスタッフの思いが込められたホームとビジターの魂身サポーターが並ぶ予定だ。
 
取材・文●村田 亘(フリーライター)