Jリーグの日程が発表された。

 新型コロナウイルスの感染拡大に配慮して、7月いっぱいは近隣クラブとの対戦となっている。移動によるリスクを減らすためだ。 

 北海道コンサドーレ札幌は7月4日から18日の4試合までが、アウェイゲームの連続となっている。12月12日から19日にかけて予定される32節から34節も、アウェイでの3連戦となった。

 再開後は中断期間のない連戦となる。一度躓いたチームは、いつも以上に立て直しが難しい。

 そのうえで札幌は、シーズンの入りと締めくくりという大切な局面を、ホームで戦うことができない。シーズンの最終盤まで優勝争いを演じていたり、ACLの出場権を争っていたりしたら、ラスト3試合のアウェイ連戦はいかにも苦々しいだろう。「1試合だけでもホームだったら」という思いが、頭をもたげるに違いない。リーグ戦を開催していくうえでの公平性が、札幌のスケジュールには欠けてしまっている。

 ミハイロ・ペトロヴィッチ監督と選手たちには気の毒だが、今回ばかりはそれもしかたのないことである。彼らチームの感染リスクを抑えながらの試合消化を最優先すると、移動をできるだけ減らすことが大前提となるからだ。

 J1、J2、J3のいずれも、シーズンインから2試合は無観客で行われる。「無観客試合」に代わる呼称として、「リモートマッチ」が使われることになった。

 無観客試合という表現は、制裁のニュアンスを含む。サッカーにおいてはクラブや協会が何らかの不祥事を起こした際に、その代償としてホームゲームに観客を入れることができなくなることが、無観客試合として理解されてきた。

 新型コロナウイルスの感染拡大による無観客試合は、Jリーグや各クラブに対する制裁ではない。かつて経験したことのないウイルスとの戦いであり、終わりの見えない難局をリーグ、クラブ、ファン・サポーターが一体となって乗り切っていくためにも、新しい呼称を求めたのは理解できる。Jリーグだけでなく団体球技が揃って「リモートマッチ」を採用したことも、スポーツ界の協調と呼称の認知向上につながっていくだろう。

「リモート」とは「離れている状態」のことを指す。「オフィスから離れた」働き方として、「リモートワーク」という言葉が使われるようになった。「テレワーク」も同じような意味を持つが、複数人が集まるミーティングなどには「リモート会議」が使われる。飲み会も「テレ飲み会」ではなく「リモート飲み会」だ。

 スタジアムで戦う選手たち画面の前のファン・サポーターが、離れていてもともに戦う。心をひとつにする。そういった意味合いが込められている「リモートマッチ」は、幅広い層に馴染みやすい。リモートで飲み会をしながら試合を楽しむ、といった過ごしかたも定着していくのではないだろうか。

 いずれにしても大切なのは、呼称ではなく確実に試合が行われていくことだ。東京では夜の街を中心に、感染者数が再び増えている。PCR検査を積極的にやっているからとの説明もあるが、Jリーグはこれから各クラブのPCR検査を実施する。

 感染者が出てしまった場合の対応については、Jリーグでシミュレーションをしていることだろう。PCR検査は定期的に行われていくので、リーグ戦開幕後に感染者が出てしまう可能性も否定できない。選手自身の予防だけでは感染を防ぎきれないから、新型コロナウイルスは厄介なのだ。

 19日に開幕を迎えるプロ野球やJリーグは、大人数のグループが日常的に行動をともにしても「感染者を出さない、出したとしても拡大させない」モデルケースと成り得る。社会的使命も背負いながらのシーズンインは、大きな期待と責任を背負うものでもある。