シャープ AQUOS R5Gの立ち位置とは? 5Gスマートフォンで増える中国製品との闘い

様々な5G対応スマートフォンがNTTドコモ、au、ソフトバンクのラインナップに追加されている。
5Gのスマートフォンでは、これまでの定番であった国内製品や韓国製スマートフォンに加え、SIMフリースマートフォン市場において高性能と低価格でシェアを広げている中国メーカー製が増えている。
一方で、これまで破竹の勢いがあったファーウェイ製品が大手通信事業者のラインナップから外れてしまっている。これはアメリカの規制措置による影響で、部品調達だけではなくソフトウェアまで自社でまかなう必要に迫られたからだ。
これによって製品としては魅力があるものの、大手通信事業者のユーザーが利用した場合、十分なサポートをするのが難しいという判断によるものだと思われる。
そこで次の一手として、大手通信事業者はまさに第2のファーウェイとなるメーカーの発掘をしている状況なのだ。
多くのユーザーに知名度がある国内メーカーや、ハイスペックや機能そしてブランド力を上げている韓国メーカーに対して、それらを超える勢いが今の中国製品にはある。
現在の中国メーカーは、高い技術力と最新デザインへのチャレンジ、そして割安感のある販売価格だ。
果たして、こうした強い中国製品に対して、国内メーカーは太刀打ちできるのだろうか?!

AQUOS R5Gはマスクをしていても安心の、ロック解除用の指紋センサーを搭載する
今回は、シャープが3月に発売した「AQUOS R5G」の製品としての立ち位置とその魅力について紹介したいと思う。
AQUOS Rシリーズは、シャープのスマートフォンのフラグシップモデルの一つ。
カメラや普段使いのレスポンスなど、コミュニケーションをするためのスマートフォンの使い方にフォーカスしたシリーズである。
もう一つのフラグシップとしては、AQUOS Zeroシリーズがある。
こちらは、ハイスペックと軽量、そして自社開発の有機ELディスプレイを搭載し、ゲーミングや動画視聴などにフォーカスしたモデルだ。
ターゲットが異なるフラグシップスマートフォンを用意する手法は、海外メーカーが国や地域にあったスマートフォンをローンチする手法がある。
国内メーカーでは、消費者に分かりやすいよう価格差による上下関係を持たせた製品ラインナップが定石だ。
市場にフラグシップモデルを複数用意すると、販売台数が分散し台数ベースで他社との比較実績で好成績を残すのが難しくなるからである。
一方で、誰もがスマートフォンを持つようになった現在の買い換え動機では、自分のスタイルに合ったスマートフォンがラインナップされていることが重要となる。そこで大手通信事業者は、各メーカーが得意とする分野のフラグシップモデルをラインナップさせ、ユーザーニーズに応えているというわけだ。
シャープは、販売台数は分散するものの2つのフラグシップモデルでこうした需要を取り込みつつ、さらに売れ筋の低価格スマートフォンシリーズ展開することで、様々な需要をキャッチアップしている。その結果、国内Androidスマートフォンのシェアを大きく伸ばしているという実績を作ったのである。
AQUOS R5Gの進化ポイントは5Gネットワーク対応だ。
今の4G接続でも十分速いのだが、エリアや混雑状況によって回線速度が著しく低下することもある。5Gの場合は、4Gよりもデータの流れがスムーズになるため、回線が混雑していても快適に利用することができる。
とはいえ、現状での5Gエリアは狭すぎるため、まだまだその恩恵を受けることが難しい。将来的には高画質な動画を屋外でも安定した画質で楽しめるようになるだろう。
現状ではメーカーは5G対応製品を出したが、5Gネットワーク未整備エリアが多く、メーカーもユーザーも歯がゆい状況といえる。

AQUOS R5Gの、もう一つの進化ポイントが、8K動画機能である。
背面のカメラは、約4800万画素の超広角カメラと約1220万画素の標準カメラ、そして約1220万画素の望遠カメラ、そして距離を測るToFカメラを搭載する。なお、標準カメラと望遠カメラには光学式手ブレ補正も搭載している。
コミュニケーション領域にフォーカスしたAQUOS R5Gの強化ポイントは、このトレンドの3カメラ+ToFカメラによる4カメラ構成を採用したこと、そして8Kの動画撮影に対応したことである。
8K TV AQUOSを出しているシャープだから、8Kの動画撮影機能を搭載したように思うかも知れないが、AQUOS R5Gでの8Kの使い方はもっと柔軟だ。

赤枠がFHDの16倍の情報量をもつ8K動画
そもそも8Kテレビがないのに8Kで動画を撮る人はまずいないだろう。
動画の鑑賞や共有や投稿なら2Kテレビ(FHD)の解像度で十分だ。
AQUOS R5Gが推す8K動画は、FHDの16倍の解像度をもつ8K映像で「とりあえず撮影しておけば、あとで加工できますよ」というスタンスなのである。
しかも、その加工は「AQUOS R5Gが自動でやりますので、面倒な手間をかけません」という作り込みだ。

使い方は簡単で、8Kで撮影した動画を再生する際に「フォーカス再生」を選ぶと、映像から注目すべき被写体を探し出して、その部分をクローズアップする。移動する被写体であれば、まるで別カメラで撮影したかのようにその被写体を追い続ける。

自動でクローズアップされる被写体は、人物だけではなく大きく目立つ物などさまざまだ
被写体が遠ければ望遠ズームレンズで撮影したような効果を得ることができ、被写体が近い場合は撮影時に映りこんだ余計な部分が見えなくなるようになる。
8Kで撮影した動画のサンプル
AQUOS Rシリーズは、これまで動画と静止画の同時記録や、動画を振りかえりたくなるようなダイジェストムービー作成機能など、動画との付き合い方を変えるための取り込みに力を入れている。
他社は、スマートフォンの多様な機能をユーザーの裁量に託しているが、シャープは明確に使い方を提供している。
シャープのスタンスの違いは、ここにあるように思う。
とはいえ、フラグシップ機を選んで購入する層にはこうした機能を使わずに、高画質で撮影して自分で編集するという使い方をする人も多いかも知れない。
一見、この機能は無駄に思えるかも知れないが、イメージセンサーやチップセットの高性能化・低価格化が進めばエントリーモデルにも搭載されるようになり、一気に広まっていくだろう。

AQUOS R5Gは、ハイエンドのチップセットSnapdragon 865、12GBの大容量RAM、256GBの内蔵ストレージ、おサイフケータイなどに対応しており、このスペックなら快適に数年は余裕で使っていける。
中国製品の強みが、高いパフォーマンスと価格戦略だとすれば、シャープのAQUOS R5Gは、高いパフォーマンスと新たに体験できるスマートフォンの使い方、その作り込みこそが強みである。
我々ユーザーは、もっとこうして欲しい、こんな機能があったら使いたい、そんな思いをメーカーに知ってもらう。こうした繋がりで、もっと良い製品が世に出て欲しいと思う。
執筆 mi2_303