テレワークの機会が増える中、読み手に負担をかけないビジネス文章の重要性はこれまで以上に高まっています(写真:metamorworks/PIXTA)

テレワーク(在宅勤務)の広がりを受け、ビジネスシーンで文章(テキスト)によるコミュニケーションが見直されています。

ビジネスのための文章は、小説やエッセイと違い、読み手が情報を受け取るために、仕方なく必要な部分だけを読む文章です。書き手は「読み手に負担をかけない文章」を心がけて書かなければなりません。

そのため、ビジネス文章には「伝達性(内容が効率よく伝わる)」「論理性(内容が論理的に構成されている)」「作業性(文章を速く書ける)」が求められます。そこで拙書『改訂新版 書く技術・伝える技術』より、この条件を満たす「読み手に負担をかけない文章」が書けるようになるためのヒントをご紹介します。

「デキるビジネス文章」7つの法則

「読み手に負担をかけない文章」には、以下の7つの法則があります。

1. 文章の冒頭には重要な情報をまとめて書く
2. 詳細はパラグラフを使って書く
3. パラグラフの冒頭には要約文を書く
4. 文頭にはすでに述べた情報を書く
5. 並列する情報は同じ構成・同じ表現で書く
6. 1つの文には、1つのポイントだけを書く
7. 無駄なく、簡潔に書く

今回は、この中の3つ(1、5、6)について解説したいと思います。

1. 文章の冒頭には重要な情報をまとめて書く

文章全体はもちろん、各章・各節でも、冒頭には「大事な情報の概略(総論)」を書くことが重要です。総論のない説明がわかりにくいことは、道順を教わっている状況を思い浮かべれば理解できるのではないでしょうか。

【総論なし例文】
「この道をまっすぐ行って、2つ目の交差点を右に折れ、最初の信号を左に、次の二股を左に〜」

【総論あり例文】
市役所でしたら、こっちのほうに歩いて10分ほどです。交差点を4回曲がります。まずこの道を〜」

冒頭に総論が書いてあることで、その先を読む価値があるかどうかを読み手が判断できます。このひと工夫によって、読み手は必要な部分だけを読み進められるのです。

ただし、重要性の低い情報であれば、総論で触れなくても問題ありません。総論では重要な情報しか述べません。

重要性の低い情報まで総論に書けば、総論の文章量が多くなりすぎます。その結果、重要性の低い情報によって、重要性の高い情報が埋没してしまいます。重要性の低い情報は各論でだけ説明します。

5. 並列する情報は同じ構成・同じ表現で書く

並列する情報は、構成も表現もそろえて書きます。これを「パラレリズム」と呼びます。

パラレリズムを守ると、文章は単調になりますが、気にする必要はありません。そろえて書くのですから、単調になります。しかし、単調だからこそ、必要な情報だけを読めたり、一読で理解できたりするのです。

ビジネス文章は文学と違って、伝達性や論理性が何よりも優先されます。パラレリズムを守れば、繰り返されている部分は飛ばせるので、読むべき部分だけを的確に読むことが可能になるのです。


(出所)『改訂新版 書く技術・伝える技術』

とはいえ、並列する情報間で重要性に大きな差がある場合、パラレリズムを守る必要はありません。

重要性に大きな差があるのにパラレリズムを守ると、重要性の低い情報を、重要性の高い情報と同じ構成・同じ表現で説明することになります。これでは、重要性の低い情報によって重要性の高い情報がぼけてしまいます。パラレリズムを守るのは、並列する情報の重要性が等しいか、近い場合だけです。

6. 1つの文には、1つのポイントだけを書く

1つの文では1つのポイントだけを述べます。1つの文の中に2つ以上のポイントを、並列を表す「〜て、」や「〜り、」「〜し、」「〜が、」などの接続助詞を使って並べてはいけません。

【悪い例】
当社は、世界最高レベルの高効率を実現するGHモジュールを搭載した「XTシリーズ」を開発し、当社従来製品比で約25%減の15Wという世界最高水準の低消費電力化を実現しました。

【良い例】
当社は、世界最高レベルの高効率を実現するGHモジュールを搭載した「XTシリーズ」を開発しました。「XTシリーズ」は、当社従来製品比で約25%減の15Wという世界最高水準の低消費電力化を実現しています。

悪い例のように等位接続してしまうと、接続された文がすべて等価となってしまい、すべての文がぼけてしまいます。良い例のように1つのポイントだけを見せるから、文のポイントが強調できるのです。また、文が短くなるので、内容を一読で理解しやすくなります。

ただし、前後の文に強い接続関係があって、かつ、全体が短いなら、接続関係を明示したうえで前後の文をつなぎましょう。接続関係を明示すると、文の中に主節と従属節が生まれるので、主節、つまり重要な情報が強調されます。

接続関係を明示するには、等位接続助詞ではなく、接続関係を明示できる接続助詞を使います。例えば、「〜ので」や「〜によって」です。

逆に、接続関係のある短い文を切って羅列するとわかりにくく、幼稚な印象を与えます。また、接続関係があるのにその関係を明示しないと、読み手によっては接続関係を読み間違えるかもしれません。

【例文】
当社は、GHモジュールを搭載した「XTシリーズ」の開発によって、15Wという世界最高水準の低消費電力化を実現しました。

また、前後の文に強い接続関係があって、かつ、全体が長い場合は、前後で文を2つに切ったうえで、接続語句を付け加えましょう。ここでいう接続語句とは、後ろにどんな内容の文が来るかを予測できる言葉です。例えば、「なぜなら」「したがって」「しかし」「つまり」です。

前後で文をつなげると、長くなるのでわかりにくくなります。接続語句を省略すると、予測ができないのでわかりにくくなるだけではなく、最悪の場合、前後で文の接続関係を読み手が読み間違えてしまう可能性があるからです。

有効な情報を文章で効率よく共有化


インターネットが普及し、ビジネスの現場は情報であふれるようになりました。電子メールを1日に100通以上受信する管理職の方も珍しくありません。また、ホームページを通じて、世界中の膨大な情報の中から必要な情報を効率よく収集する必要も出てきました。

すべてに目を通せないほど多くの情報におぼれながら、日々の仕事をこなしているのです。テレワークが一般的になってきた中、今後も情報量は増えこそすれ、減ることはないでしょう。

あふれる情報の中から、有効な情報を文章によって効率よく共有化して、初めてビジネスの生産性が高まります。情報伝達の手段である文章の質がビジネスの成否を分けるといっても過言ではありません。ビジネス文書の書き方に悩んだときは、ぜひ参考にしてみてください。