Jリーグが導入した
ホームグロウン制度とは(1)

 Jリーグは先頃、今季J1クラブにおけるホームグロウン選手の人数(3月27日時点。その後の移籍により数人の増減あり)を発表した。クラブ別最多はセレッソ大阪の16人、同最少は大分トリニータの4人で、18クラブ合計では160人である。

 Jリーグは昨季から、ホームグロウン(Home Grown。以下、HG)制度を導入した。HGとは、日本語にすれば「地元育ち」といった意味だが、必ずしもホームタウンで生まれ育った地元出身選手を指すわけではない。

 Jリーグは規則のなかで、ホームグロウン選手をこう定義している。

〈12歳の誕生日を迎える年度から21歳の誕生日を迎える年度までの期間において、特定のJクラブの第1種、第2種、第3種又は第4種チームに登録された期間(以下、本条において「育成期間」という)の合計日数が990日(Jリーグの3シーズンに相当する期間)以上である選手を、本条において当該Jクラブのホームグロウン選手という〉

 あれこれと数字が出てきてややこしいが、要するにどういうことか。

 簡単に言えば、「小学校6年生から高校卒業後3年目までの間に、合計3年以上所属していた選手」が、そのクラブでHG選手として認められる。より実態に即した現実的な基準にかみ砕けば、
(1)中学校3年間、アカデミー(ジュニアユースチーム)に所属する。
(2)高校3年間、アカデミー(ユースチーム)に所属する。
(3)高校卒業の翌年度から3年間、トップチームに所属する。
のいずれかに該当する選手ということになる。

 もちろん、小学6年から中学2年までの3年間でもいいし、小学6年、中学2年、高校1年の各1年ずつ合計3年間でもいいのだが、現実にはそれらはかなりレアケースだろう。

 Jリーグが定めるHG制度では、J1各クラブに2人以上のHG選手の登録を義務づけており、それに満たなかった場合、不足した人数分、プロA契約の登録選手枠(25人。AFCチャンピオンズリーグ出場クラブは27人)が減らされることになっている。

 つまり、HG制度とは、各クラブが責任を持って選手の育成に取り組むことを促すものであり、HG選手の出身地に縛りはない。HGの意味するところは、「地元育ち」というより、「自クラブ育ち」である。

 この制度の注目すべき点は、「育成期間」を「21歳の誕生日を迎える年度まで」としていることだ。

 たとえば、今や川崎フロンターレの”顔”とも言うべき、中村憲剛。今年40歳になる中村は、川崎ひと筋で18年目を迎えた生え抜きであり、これぞHG選手のように思える。

 しかし、中央大卒の中村が川崎入りしたのは、「23歳の誕生日を迎える年度から」。すなわち、「21歳の誕生日を迎える年度まで」の育成期間には川崎に所属しておらず、HG選手には当たらない。


川崎フロンターレの「顔」でありながら、ホームグロウン選手に当たらない中村憲剛

 つまり、中村に限らず、Jクラブのアカデミーに所属した経歴がなく、学校の部活や、いわゆる町クラブでプレーしたあと、大学を経由してJクラブ入りした選手は、その時点でいかなるクラブのHG選手にもなり得ないということだ。

 同じルーキーであっても、高卒ルーキーはまだ育成の最終段階にあるが、大卒ルーキーはすでに育成段階を終えた選手。HG制度のうえでは、両者は明確に区別されているのである。

 さて、冒頭にも記したように、今季J1全体で160人、1クラブ平均では約8.8人のHG選手が登録された。HG選手の条件を考えると、一朝一夕に増やせないことは明らかなのだから、その根本となる発想は、すでにHG制度導入以前から各クラブに浸透していたということだろう。

 実際、HG選手160人のキャリアをまとめてみると、そのことがよくわかる(注:Jリーグ発表による各選手の所属歴をもとに集計した)。

◆アカデミー出身=119人
【内訳】
・小中高を通じて所属=29人
・中高を通じて所属=62人
・高校時代のみ所属=24人
・中学時代のみ所属=4人

◆アカデミー出身大学経由=19人
【内訳】
・小中高を通じて所属=4人
・中高を通じて所属=7人
・高校時代のみ所属=2人
・中学時代のみ所属 =6人

◆高卒後トップチームに3年間所属=22人
【内訳】
・高体連出身=18人
・クラブユース出身=4人

 全HG選手のうち、自前のアカデミー出身の選手が119人と、全体の7割超を占める。そのうち中学時代(ジュニアユース)のみ所属した選手は4人しかいないのだから、残る115人は自前のユースチームからトップチームに昇格した選手ということになる。

 J1クラブの全登録選手のうち、日本人選手が469人(3月27日時点)ということは、およそ4人に1人が自前のユース出身者になる。これはなかなかの数だ。大学を経由したユース出身者13人を加えれば、その比率はさらに高まる。

 しかも、ユースチームからトップチームに直接昇格した選手115人のうち、高校時代(ユースチーム)のみ所属していた選手は24人に過ぎず、小学時代(ジュニアチーム)から所属している選手が29人、同じく中学時代(ジュニアユースチーム)からの選手が62人と、より多くを占めている。

 つまり、高校生になって初めてアカデミーに入る選手は少数派ということだ。各クラブが腰を据えて、長期的に育成・強化に取り組んでいる様子が、数字からも見えてくる。

 今季J1クラブのなかでは、HG選手が10人以上所属するクラブは7つあるが、いずれもアカデミー出身者がほとんどを占めている。

◆HG選手が10人以上所属するクラブ
※クラブ名=HG登録人数/アカデミー出身人数(うち大学経由人数)
・セレッソ大阪=16人/13人(0人)
・サンフレッチェ広島=15人/10人(3人)
・FC東京=14人/13人(4人)
・ガンバ大阪=12人/12人(1人)
・柏レイソル=12人/12人(1人)
・清水エスパルス=12人/10人(1人)
・鹿島アントラーズ=11人/8人(1人)

 だが、アカデミー出身がほとんどを占めるとはいえ、細かく数字を見ていくと、それぞれのクラブの特徴も見えてくる。

 C大阪、G大阪、柏、清水が、ユースチームからトップチームへの直接昇格でほぼ占められている一方、FC東京と広島は大学経由での昇格が比較的目立つ。自前で選手を育成しつつも、大学をうまく活用しながら選手の成長度を見極めているのだろう。

 鹿島と広島は、このなかではアカデミー出身以外の選手(外部から獲得し、高卒後3年間所属した選手)の比率が高いが、それでも外部依存率が高いというほどではない。大迫勇也(鹿児島城西→)、柴崎岳(青森山田→)など、外部から優秀な人材を獲得してくる印象が強かった鹿島にしても、近年はアカデミー出身者が増えてきている。

 また、最近の現象として興味深いのは、”Uターン組”の増加だ。中学時代(ジュニアユースチーム)のみアカデミーに所属し、大学を経由せずにJクラブ入りしたHG選手が全部で4人いるのだが、そのうち3人が、染野唯月(尚志→鹿島アントラーズ)、田平起也(神戸弘陵→セレッソ大阪)、古宿理久(青森山田→横浜FC)と、今季のルーキーなのである。

 近年、全国高校選手権の注目度が上昇の一途をたどるなか、高校生が晴れの舞台に強く憧れたとしても不思議はない。中学時代はJクラブのアカデミーでプレーしたあと、強豪校での選手権出場を経て、古巣へ戻る。こうした歩みの選手は、今後さらに増えるのかもしれない。

 HG制度の導入は、何より育成が第一の目的ではある。だが、自分が応援するクラブで若い頃からプレーしていた選手というのは、サポーターにとっても思い入れが生まれやすい。地域密着という観点からも、HG選手の存在には大きな意味があるはずだ。

 登録選手全体のおよそ3割をも占めるHG選手は、今年28年目を迎えたJリーグがそれぞれの地域に根差しながら着実に前進していることを示す証と言えるのではないだろうか。