リーグ開幕戦の仙台戦やルヴァンカップの鹿島戦にも先発した成瀬。右SBとして評価を高めている。(C)SOCCER DIGEST

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 FW金崎夢生に続き、6月7日にはGKランゲラックの新型コロナウイルスの陽性判定を発表した名古屋。今後のチームトレーニングのスケジュールは未定だが、小西工己代表取締役社長が説明する通り、7月4日のJ1再開に向け、できる限りの準備を行なうことになる。

 そのなかで再開後の注目株を挙げるとすれば、昇格2年目のDF成瀬竣平だろう。中断前に行なわれたふたつの公式戦(ルヴァンカップとリーグ開幕戦)、そして準公式戦と言えるダゾーンの中継が入ったふたつの練習試合すべてにスタメン出場し、熾烈な右SB戦線に新風を吹き込んでいる。

 太田宏介、吉田豊、そして宮原和也とレギュラークラスに負傷者が相次いだ開幕前後のチームを救ったこの若武者は、「自分は確立された選手ではないので、その分はまた一からのスタートだと思っている」と謙遜しつつも、「同じポジションの選手には今まで以上に負けたくない」と、頼もしい。

 
 ユース時代は「守備的サイドハーフ」と呼ばれ、得意のドリブルを活かした攻撃以上に、その献身性が買われていた。風間八宏監督時代には2種登録としてルヴァンカップなどで出場機会を得ていたが、SB起用はその頃から続く彼の活かし方となっている。

 前体制では技術の高さと運動量、現フィッカデンティ体制下では守備のコーチングに成長の跡を見せ、より現代的なSBとしての研鑽に勤しむ日々。チームの活動休止時期には良い手本を見つけたらしく、目下研究を進めている。

「最近はダニエウ・アウベス選手(バルセロナなどで活躍し現在はサンパウロでプレー)の動画をよく見ています。ボールの持ち方だったり、クロスをどうやって蹴っているのかなというのは特に注目していますね。守備のことは(フィッカデンティ)監督がみっちり教えてくれるので(笑)、攻撃的なところを自分で学んでいこうかなと。

 いろいろ見たなかでは今の自分が理想とする選手が彼でした。アンケートには『トレント・アレクサンダー=アーノルド(リバプール)』って書いているんですけど、僕はあんなにクロスが上手くない(笑)。理想ではありますけど、今は誰を目標にしたいかと言ったら、ダニエウ・アウベス選手になりますね」

 あくまで考えているのは攻撃面での貢献度アップだ。守備はシステム上での考えもあれば連係もある。DFライン中央には丸山祐市と中谷進之介という頼れる先輩たちがいる。元々、闘争心も強いタイプだけに対人守備で後れを取ることも少ない。
 明るく素直なパーソナリティはチームメイトへの受けも上々で、攻撃の中心人物である阿部浩之とはもはや師弟関係の様相。

 キャンプから個人戦術の面でもよく鍛えられてきた成瀬は「守備をした中でどう攻撃につなげていくか、そのクオリティが足りていなかった」と次なる課題を見据える。

 ブラジル代表でキャプテンまで務めた世界有数のSBであるD・アウベスのプレーには「自分の特徴がもっと活きやすくなるプレー」を学べると言うが、いかんせん、まだ研究をフルに試す機会がない。

 ただ、事態が落ち着いてくれば、少しずつ、実戦形式の中でのトライ、あるいは答え合わせができるようになるはず。

 7月1日のJ1再開が決まった直後には「これから自分たちがどこに向かって走り出したらいいのかが明確になった」と力強く語っていた。
 
 早生まれ(2001年1月17日生まれ)で、来年に延期された東京オリンピック、そして2024年開催予定のパリオリンピックの両方に出場可能だ。本人は「過程が大事なので、しっかり試合に出て、目指すことができれば」と話すが、目の前のチャンスに食いつかないほど淡泊でもない。

 チームは“コロナ騒動”に揺れてはいるが、D・アウベスのエッセンスを取り入れた自分なりのSB像を確立し、まず狙うのは開幕スタメンに続く“再開スタメン”。166センチの小兵から溢れ出すバイタリティは、ピッチ内外で光るはずだ。

取材・文●今井雄一朗(フリーライター)

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