課題の守備面で改善の兆しが見える村越(29番)。まずはプロデビューが目標となる。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 無名の若きドリブラーが出場機会を虎視眈々と狙っている。

 高卒ルーキーの村越凱光――。神奈川県出身で、高校は福岡県の“新興校”飯塚高へ進学。冬の選手権などの華やかな舞台とは無縁だったが、高校3年次の春に松本の鹿児島キャンプに練習参加し、ポテンシャルを評価されてプロ入りを勝ち取った。

 スピードとスタミナを兼ね備える18歳の村越は、得意の左足を巧みに使いながら、キレのあるドリブルでDFを翻弄するプレーが真骨頂。加入直後から「ハーフウェーラインからでも一気にドリブルを仕掛けて、ゴールに絡んだり、自分で得点を決めたい。最終的には(先発に)定着して優勝したい」と威勢も良かった。
 
 とはいえ、初めてのプロの世界では悩む時期が続いた。ファーストタッチでボールの置きどころが定まらず得意の形に持ち込めなければ、守備時のポジショニングも曖昧。思うようなパフォーマンスを発揮できずに、悔しさを引きずり過ぎることもあった。

 実際にチームが活動休止する前の4月中旬に取材をした時は、前向きな言葉を発しながらも、どこか思い悩んでいた印象を受けた。持ち味のドリブルをアピールしたい一方で、ディフェンスが課題なのは本人も理解しており、「守備力の低さが明確に分かったので、そこをどう克服するかが問題。スペースを消したり、中を閉めたりする決まりが、まだ少ししか頭に入っていない」と煮え切らない表情だった。
 
 しかし、約1か月ぶりにトレーニングが再開した時は、覇気を取り戻していた。

 基本的に非公開のためインターネットを通じての取材だったが、画面越しでも明らかに口ぶりも表情も力強くなっていた。なにかあったのかを尋ねると、自主トレーニングについて振り返ってくれた。

 まずはフィジカル面。感染予防を徹底しながら基礎を鍛え直した結果、「前はキツかった攻守の切り替えが、今はスムーズにできている」。走力テストでもチームトップの結果を残して大きな自信を得た。
 
 技術面でも進歩の兆しがあるという。ドリブルをする時の重心を後ろから前に移すように村主博正コーチからアドバイスを受けてフォームを修正。時間は要したが、その取り組みの結果、推進力が増して以前より視野が広がった。「キャンプで通用しなかったドリブルが今は効いている。試合が始まれば成長した姿を見せられると思う」と手応えを掴んでいる。

 今はまだプロデビューしていない“卵”の状態。中断期間を経て複数の故障者が続々と復帰しており、競争は熾烈だが、「(競争は)いつかは乗り越えなければいけない。そのタイミングが早くなっただけ。まずは試合に出て活躍して、チームを勝利に導けるような選手になりたい」と怯む様子はない。

 初々しさを残しつつも、強い決意を滲ませる18歳のドリブラーは一見の価値ありだ。

取材・文●大枝令(スポーツライター)

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