リーグ中断前の山形との開幕戦には先発フル出場。伝統の7番を背負い、攻守両面で躍動感溢れるプレーを見せ、2-0の完封勝利に貢献した。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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「まだ1試合しか付けていないから実感はないけれど、伝統のある大きな背番号なので、責任はしっかり感じている。自分らしさを出しながら、番号に見合ったパフォーマンスをしていきたい」

 そう話すのは、今季から新しく『7番』を背負う上原力也だ。

 ユース出身の生え抜きで、今年6年目を迎える中堅。4年目の2018年シーズンに、怪我を抱えたムサエフに代わりボランチを務め上げ、以来中盤に定着。今季開幕戦(対山形/〇2-0)も激戦となったボランチのスタメン争いを制して先発フル出場した。

 ミスの少なさとキープ力、視野の広さを生かした適切なポジショニングと展開力、そして機をとらえた攻撃参加が持ち味。加入当時から名波浩前監督が高く評価していたそれらの能力は、特別な足の速さも身体の大きさも持たないMFにとって、「中学時代からずっと意識している自分のプレーの芯ともいうべきもの」だ。その芯を失わずに、上原はプロの場ですべての経験を糧に成長を続けている。

 プロ1、2年目は試合になかなか出られなかったが、焦りに振り回されることなく、黙々と自分を高めてきた。名波前監督の下では、サイドやCBなど、あらゆるポジションを経験。抵抗もあったが、前向きに取り組むことでプレーの幅を広げ、対人の強さを向上させることに繋げた。
 
 チームメイトからも多くを吸収した。特に影響を受けたのは、「一つひとつのプレーをよく見て、盗めるだけ盗んだ」と言う川辺駿(現・広島)だった。

「駿くんと言えば誰もが攻撃が魅力の選手というイメージを持つと思うけど、実はすごくしっかり守備をしていて、そこが一番勉強になった。良い守備をすれば、前に出て行くパワーが上がるし、タイミングも自然に良くなるという話もよくしていたし、本当にたくさんのものを得たと思う」

『理想』とする選手になるために、上原が特に意識してきているのは、課題でもあった守備力を伸ばすこと。昨季のフェルナンド・フベロ新監督の就任は、またひとつその進化を促すきっかけになった。

 23節のG大阪戦ではゲームキャプテンを任されたが、フベロ監督が指揮を執った次節からの2試合はベンチ外に。しかし、驚きや悔しさにのまれず、上原は何が足りないかを考え冷静に自分を見つめ直し、湘南との練習試合で「ガツガツ削りに行くくらい」の激しいディフェンスプレーでアピール。3試合目から再びボランチに定着した。
 
 新指揮官の下で残留を目指した昨季終盤、チームが守備に重心を置くなかで上原は持ち前の攻め上がりを自重し、アンカーの位置で「バックを助けリスク管理をする役割」をシュアにこなした。今季開幕戦も「初戦で硬さが出るだろうし、1点勝負になる」と考えて臨み、攻撃的かつ精力的にプレーするボランチの相棒・山本康裕のカバーやサポート役をまっとう。新境地とも言うべきプレーで、勝利に貢献している。

 目指しているのは、「攻守両面に優れ、攻守両面の起点となってゲームをコントロールできる」ボランチだ。「攻撃だけが良い、守備だけが良いという選手にはなりたくない。今も攻撃のほうが好きだし強みがあると思っているけど、ボール奪取やカバーを怠らず、前線でも後方でも相手に怖がられる選手になりたい」。その胸には、成長を支える矜持がある。

 素早いボール奪取、対人の強さは、フベロ監督の守備戦術の肝。この中断中も、切り替えの速さを養う練習、1対1や1対2の対人守備の強化を図るメニューに、上原は自身のステッアップを期して取り組んでいる。
 
 一方で今季、チームはリスク管理をしつつも、より攻撃色を強めている。サイド攻撃にもより力が入れられており、開幕戦はSBの位置取りも高めで、積極的な上がりが要求された。そのなかで、「昨季よりは前に出る回数が増えそう」なことは、上原にとって楽しみのひとつ。「チーム戦術を大事にしながら得点にも絡んでいきたいし、サイドへのダイレクトな1本で状況を打開するなど、パスでのチャンスメイクも狙いたい。アシストのアシストがボランチの醍醐味。『ここから始まっているんだぞ』というプレーが一番気持ち良い。そういうプレーを見せていきたい」と、意気込んでいる。

 J1復帰という絶対的な目標があるがゆえに、コロナ禍で活動がままならない状況でも、チームのモチベーションや緊張感は衰えていない。再開後、過密日程でミッション達成を目指す磐田のピッチには、攻守に躍動し、新たな持ち味を発揮しながら一歩一歩、理想に近づき、成長を見せる若き7番の姿があるだろう。

取材・文●高橋のぶこ

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