ルヴァンカップの柏戦では、88分にDF新里と交代して途中出場。攻撃的に持ち味を発揮した。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 6月1日、G大阪は他の関西圏クラブと同じタイミングで全体練習を再開させた。未曾有の新型コロナウイルス禍によって、チームは約2か月の活動停止。急ピッチで仕上げていかなければならない。

 そして、その先で待ち受けるのは前例のない過酷スケジュール。宮本恒靖監督は難しいタスクを求められるなか、J1が再開する7月4日までのテーマのひとつとして「戦える戦力を増やす」ことを掲げた。

 若手の起用も増えるだろう今シーズン。その点について、指揮官は否定しない。一方で「だからといって、すぐチャンスが来るわけではない。基準は満たさないといけない」と釘を刺す。

 指揮官の求める“基準”とは運動量を含めたフィジカル面は当然、技術面や戦術理解度の高さ、ポリバレント性。総合的に見渡せば、背番号29の出番は増えていくのではないだろうか。

 山本悠樹。今季、『大学ナンバーワンMF』の肩書きを引っ提げて加入した22歳だ。今季公式戦初戦となった2月16日、ルヴァンカップのグループステージ第1節・柏戦で1点を追う88分に途中出場。すでにプロデビューを果たした大卒ルーキーだ。
 その技術の高さは、わずか14秒の動画を見ただけで垣間見える。4月9日、山本はツイッターにリフティング動画を公開した。「1発成功ではないです!笑」と謙遜するが、ボールを蹴る音すら聞き取りづらい柔らかなタッチは再生回数4万7000回を超えた。
 
 3-5-2を基本システムとするG大阪で、山本が起用されるポジションはアンカー、もしくはインサイドハーフが濃厚だ。沖縄での1次キャンプで行なわれた沖縄SVとのトレーニングマッチでは、前半こそポジショニングなどに迷いが見られたが、後半にきっちり修正。パスを受けやすい位置を取り、的確にボールをつないだ。そして機を見てゴール前に侵入した。ゴールこそ奪えなかったものの、戦術理解度の高さを示した。

 ポジションの汎用性の高さも魅力だ。もともと、草津東高時代から将来を嘱望されていたが、当時はトップ下。ボランチに転向したのは、関西学院大3年生時の秋だった。事実、柏戦では「追いつかないといけない状況だったのでシステム変更をして、自分はトップ下に入った」(山本)。そんななか、久々のポジションでも、投入直後に宇佐美貴史へ絶妙なスルーパスを通して得点チャンスを演出した。
「結果が出なかった。得点を生み出せなかったのは反省です」。柏戦後は安堵の表情を浮かべるのではなく、悔しさを滲ませた。その顔はプロのそれであり、同時に“中盤ならば、どのポジションでも高水準でプレーできる”と言わんばかりのプライドに映った。

 ルヴァンカップの柏戦後、山本は軽度の負傷を患い、戦列を離れた。リーグ開幕の横浜戦でのベンチ入りはならなかった。だが、3月末にはトレーニングに復帰。グループ練習が再開された5月25日にも元気な姿があった(G大阪提供の写真で姿を確認)。

 G大阪の中盤は3枚。大黒柱の遠藤保仁を筆頭に、矢島慎也、倉田秋、井手口陽介、小野裕二が名を連ねる激戦区だが、チャンスがないわけではない。大卒ルーキーに多くのものを求めるのは酷だとは理解しつつ、チームが掲げるタイトル奪取のためにも彼には大きな期待をしたい。

取材・文●飯間 健

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