「気持ちをポジティブに切り替えられないとき」って、ありますよね。

ネガティブな出来事が立て続けに起きると、「どうして自分ばっかり…」と心が負のループに入ってしまうこともあると思います。

そんなとき、たくましくポジティブに変換する方法はないものか…

ということで今回お話を伺ったのが、Twitterにつづった “切ない出来事”が反響を呼び、5月に書籍『実家が全焼したらインフルエンサーになりました』(KADOKAWA)を上梓した、実家が全焼したサノさん。


【実家が全焼したサノ】新橋で働くサラリーマン。幼少期に実家が全焼したことを機に、切ない人生を送る。学生時代にホストクラブで働き、卒業後はバーを経営。その後事業拡大を目指し大学院でMBAを取得するも、バーは潰れてしまう。Twitterで「実家が全焼したサノ」というアカウントで日々切なかった出来事を投稿し話題を集め、2020年5月に書籍『実家が全焼したらインフルエンサーになりました』を発表

実家の全焼、母親の蒸発、父親の自殺など…壮絶な経験をされつつも「僕は人生をわりと気に入っています」と語るサノさんに、“ネガティブな出来事をポジティブに乗り越える方法”を聞きました。

〈聞き手=サノトモキ〉

「なんでもポジティブに考えよう!」って、いいことばっかじゃない

サノ:
名前が完全にかぶってて申し訳ないんですけど…

今日はよろしくお願いします!


サノ×サノのややこしい図。ちなみに新R25のサノは小学生のころ火事を通報したことがあります

実家が全焼したサノさん:
今日のテーマは「ネガティブな出来事をポジティブに乗り越える方法」だと思うんですけど…

最初にひとつ、お断りしておきたいことがあって。

サノ:
なんでしょう?

実家が全焼したサノさん:
僕、「“現在進行形で起きているネガティブな出来事”をポジティブに乗り越える方法」については、正直わからないんですよね…

ネガティブな出来事が起きたときは、ネガティブなまま受け入れることが大切」だと思ってるので…


えっ

実家が全焼したサノさん:
イヤなことがあったのに無理に明るく振舞うのは心が疲れてしまいますし、根拠なく前向きに考えると対処法を間違ってより泥沼化してしまうことも多いと思うんです。

ネガティブな事実をポジティブに変換するのって、意外といいことばかりではない気がするんですよね。

サノ:
…たしかに、「なんでもポジティブに考えよう!」ってちょっと理想論っぽい気はしちゃうかも。

取材しに来ておいてなんですけど…

実家が全焼したサノさん:
でも一方で、「過去」の話はいくらでもポジティブに解釈できると思っています。

僕が“切ない経験”をポジティブに変換できたのも、あくまでも「過去の話」だからで。


つまり、彼が教えてくれるのは「ネガティブな過去をポジティブに変換する方法」。それも知りたいです!

実家が全焼した男が語る“ネガティブな過去をポジティブに変換する方法”

サノ:
ネガティブな経験っていつまで経っても思い出したくないものですが…

どうやってポジティブに解釈するんですか?

実家が全焼したサノさん:
ネガティブな出来事の延長線上に、「自分が幸せだと思える結果」をひとつでも作る

僕はずっとこの考え方で、“解釈の上塗り”を繰り返してきた感じなんですよね。



実家が全焼したサノさん:
たとえば僕は、大学卒業後経営しはじめたバーが開業して半年間ずっと赤字だったんですけど…

そのとき、赤字解消のためにとにかくなんでも試して失敗しまくったんですね。

ひたすら労働時間を増やしたときは、人間は17時間労働を数カ月続けると血尿や血便が出て、体にぶつぶつができるということがわかりました。

典型的な失敗例ですね。

サノ:
淡々とした語り口が逆に切ない。

実家が全焼したサノさん:
そんな失敗の連続の中で、試してみて成功したのが、「ボトムアップ型経営」でした。簡単に言えば「従業員の声を聞こう」ということです。

従業員の声に耳を傾け、言われるままにお店の経営を改善していった結果、落ち着いた雰囲気だった僕のお店はレゲエの音楽が爆音で流れ、ダーツが設置され、ギャルとギャル男が集まるバーへと進化を遂げ、僕は毎日震えながら自分のお店に通うことになったのですが…

結果的に離職率は大きく改善し、お店も黒字化しました。


成功エピソードなのに、どうしてこうも切ないのか

実家が全焼したサノさん:
ネガティブな出来事のまま物語が終わってしまっていたら、当然いつまでも辛い過去として振り返るしかないんですけど…

ポジティブに昇華できる「結末」を自分なりに作ることができれば、「過去」はいくらでもポジティブに解釈できるんです。

サノ:
なるほど…「終わりよければすべてよし」を、自分で用意するってことか。

実家が全焼したサノさん:
それこそ、実家が全焼したのは「切ない」の一言では片付けられない出来事でした。全焼した後、さらに父から10万円を騙し取られた時は、三日三晩泣きました。

実家全焼後、父親が息子の10万を鮮やかに奪い去っていく衝撃の話はこちら

実家が全焼したサノさん:
でも、そんな話をTwitterに投稿して、多くの方が笑ってくださり、それが本にまでなったことで、僕が一人で抱え込んでいた切ない思い出も、愉快な思い出へと昇華されていく感覚があって。



実家が全焼したサノさん:
だから、辛い状況にいるときは、「まだ結末じゃない」と考えることが大切だと思います。

ハッピーエンドを迎えるまで、物語を終わらせない。

「打率で自分の価値を測る人ほど、失敗したとき大ダメージを受ける」

実家が全焼したサノさん:
だから僕は、ネガティブなことが起きたら、とりあえずたくさん種をまきます。


種…?

実家が全焼したサノさん:
もちろんたくさん失敗もします。

でもどれかひとつの種から芽が出て成功したとき、他の失敗はすべて、ひとつの成功の養分になる。

1勝9敗でもいいからとにかく最後に“1勝”あげることができれば、物語はポジティブに塗り替えられるようになると思うんですよね。

サノ:
でも正直…ネガティブな気持ちになってるときに、1勝を取りに行くために9敗もするメンタルになれなくないですか?

実家が全焼したサノさん:
たくさん種を蒔くのを躊躇する人も多いと思いますが…

打率じゃなくてヒット数」で勝負しようとすると、少し気持ちが楽になるかもしれません。


「打率じゃなくてヒット数」。これは気になる

実家が全焼したサノさん:
世の中、1勝9敗を納得できない人のほうが多いと思うんですよ。

できるだけ「負け」の数を減らして、「勝ち」だけで自分の実績を積もうとしてしまうというか。

それは、打率で自分の価値を測ってしまってるからだと思うんですよね。「ここで失敗すると自分の打率が下がっちゃうから…」と考えて、打席に立つ数が圧倒的に減ってしまってるというか。

サノ:
うわ、僕完全にそうかも…

「毎回成功してる人」でいたいと思いすぎて、身動き取れなくなっちゃうやつ…

実家が全焼したサノさん:
そうなると、「次の打席」に自分でもめちゃくちゃプレッシャーをかけちゃうじゃないですか。

打率で考える人や、1つの打席にすべて賭けてしまう人ほど、失敗したとき大ダメージを負ってしまう気がします。


全文字図星で恥ずかしい

実家が全焼したサノさん:
でも、10個種を蒔いて打席数を増やしておけば、ひとつ失敗しても気持ち的には「10分の1ダメージ」しか食らわないで済むんですよね。

他9個の種がまだ生きてるから。

サノ:
たしかに。

実家が全焼したサノさん:
だから僕は、打率よりも「ヒット数」で自分をプレゼンするし、そこを指標にして生きています

僕、打率でいったら相当低いと思います(笑)。

でもヒット数だけで勝負していると考えられたら、種を蒔くのが少し怖くなくなって、失敗の数に比例してヒット数も少し多い人生になるかもしれません。

サノ:
その結果、ネガティブな出来事をポジティブに解釈できるチャンスも増えると。

「打率じゃなくてヒット数」で勝負する。これはメモしとこう…!

ネガティブな出来事を乗り越えるために、“ポジティブ”になる必要はない。

実家が全焼したサノさん:
過去をポジティブに解釈するためには、とにかくたくさん種を蒔いて頑張ってみて、自分が幸せだと思える結果をひとつでも作ること。

これが僕の答えなのですが…

最後に、「べつにポジティブな人間になる必要はまったくない」って話をしておきたくて。

サノ:
どういうことですか?

実家が全焼したサノさん:
僕は誰かの相談に乗るとき、無理に前向きに考えさせようとはしません。

それは「対処法を誤らないため」とは別の理由があって…

ネガティブな気持ちでいることがその人を救っている場合だって、あると思うからです。



実家が全焼したサノさん:
「私はあの辛い過去のせいで今でもこんなに苦しいんだ」と今の苦しみを「過去の責任」にすることで、少し気持ちが楽になって、乗り越えられることもきっとあると思っていて。

最終的に、自分にとって幸せな結末を出すための種を蒔けるなら、その過程は後ろ向きでもなんでもいいんです。

前向きになることより、いまの自分の気持ちを肯定してあげるほうがよっぽど大切だし、ネガティブな出来事を乗り越えていく力になると思います。

サノ:
イヤなことを乗り越えるために、前向きになる必要はない。これだけでもめちゃくちゃ心が楽になる気がする…

今日は素敵なお話、ありがとうございました!



誰の人生にもネガティブな出来事は起こるし、それを乗り越えなくちゃいけないときがある。

ただ、「あとから塗り替えればそれでいいんだ」と思っておくだけでも、ずいぶん心持ちが違うように感じました。

僕も切ない出来事を胸に秘めて辛くなってしまったときは、どうすればハッピーエンドにできるかをイメージしてみたいと思います。

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この記事では真面目に語っていただきましたが、書籍は正直切なさだけでなく、爆笑必至な部分も多々ありました…(サノさんのTwitterを見れば雰囲気が一発でわかります)

個人的には出だしの「父が8回転して離婚した話」が好きです。気になった方はぜひチェックしてみてください!