ほめ本 こころ通わすコミュニケーション』(前田安正 著、ぱる出版)は、新人の書籍編集者が「ほめる」をテーマに本をつくる過程を通し、自らつくる本の内容を理解していくというストーリー仕立てになった書籍。

ところで、「ほめる」ということばには本来どのような意味があるのでしょうか?

そのことについては、以下のような記述があります。

辞書を引くと「ほめる」は「高い評価を与え、それを栄えあるように言うこと。たたえる」などとあり、「ほめる」という動詞は「目上の人に対しては用いることはできない」と書かれたものもある。そのため、評価する側とされる側には立場の違いが生じる。「ほめる」という動詞だけでなく、目上の人をほめるという行為自体にも、心理的な壁が立ちはだかってしまうのだ。

しかし、語釈にはもう一つある。「祝う。ことほぐ。祝福する」。相手を祝福するとき、そこには敬意が生じる。評価という枠を離れて「敬意」として「ほめる」を捉え直せるのではないか。敬意であれば、年上・年下という関係をことさら意識する必要はない。(「まえがき」より)

いわば「ほめる」とは、相手に対する「評価」ではなく「敬意」であるということ。

こうした考え方を軸として、本書ではメールの書き方、謝罪の仕方、仕事の確認・変更の仕方などの“仕事の基本”のなかに「ほめ」を取り入れ、上手にコミュニケーションをとる方法を解説しているわけです。

きょうは「ほめACTIION 4 意を尽くし理を尽くして、人を動かす」中の、年下が年上にほめことばを使う際の基本のなかから、いくつかの要点をピックアップしてみたいと思います。

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ほめ本 こころ通わすコミュニケーション

1,540円

ご苦労さまでした/お疲れさまでした

「ご」も「お」も、漢字で書けば「御」。

この使い分けを大雑把に説明すると、「御+漢語」の場合が「ご」、「御+和語」の場合が「お」になります。とはいえ、これに外れる使い方も多いので注意が必要。

漢語とは日本で使われている漢字のうち、中国の発音に基づいて読むもの。音読みに多く、たとえば「ご苦労さま」の「苦労」が漢語にあたるわけです。

そして和語は日本固有のことばとみられるもののことで、「やま(山)」「かわ(川)」などがそれにあたります。

「つかれる」という和語に「お」と「さま」がついて出来たのが「お疲れさま」。

ちなみに「ご苦労さま」も「お疲れさま」も、ねぎらいの意味などに使うことばですが、対象にする相手を選ぶようです。

→「ご苦労さま」は目下の人に対して使う

→「お疲れさま」は同僚、目上の人に対して使う

(139ページより)

これが慣習になっているわけです。(138ページより)

がんばってください

「がんばる」とは、「あることを成し遂げるために、困難に耐えて努力する」こと。このことばは年上の人に使ってはいけないといわれますが、その理由は「困難に耐えて努力する」という意味があるから。

つまり「がんばってください」というと、「努力しろ」といっているようなものになってしまうわけです。

言い換えとしては、

→ますますのご活躍をお祈りしております。

→ますますの活躍をご期待申し上げております。

(140ページより)

などがあります。

ちなみに「ますますの活躍をご期待申し上げております」の「活躍」に「ご」がついていないのは、「ご期待申し上げております」があるから。

“ご活躍”に“ご期待”と、過剰に盛りすぎる必要はなく、「ご」がかぶってしまうと違和感を感じさせもするからです。(139ページより)

なるほど、いいですね

素直なほめことばのようにも思えますが、“タメ口”に聞こえてしまう可能性も。そのため、少しだけことばを添えて伝えるといいそうです。

→私にそういう発想はできませんでした。深く共感いたしました。

→この世界観には感服いたしました。眼から鱗が落ちる思いです。

→このような視点で捉えられるとは、想像だにできませんでした。

→○○様の慧眼、恐れ入ります。心から感動しました。

(142ページより)

このようにすれば、目上の人に対しても失礼にはならないかもしれません。

ちなみに「慧眼(けいがん)」は、「物事の本質を見抜く眼力・洞察力」という意味。(142ページより)

了解しました

「了解」は、「物事の内容や事情を理解して承認すること」ですが、あまりていねいなイメージがないこともあり、目上の人に使うべきではないという考え方も。したがって、

→承知しました

→承知いたしました

(143ページより)

といういいかたをすればいいでしょう。「承知」は「目上の人の命令などをうけたまわること」なので、失礼にはあたらないわけです。

なお、「しました」を「いたしました」にすれば、さらにていねいな言い回しに。(143ページより)

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ほめ本 こころ通わすコミュニケーション

1,540円

ストーリー仕立てというフォーマットを取り入れている点は、もしかしたら好みを分かつことになるかもしれません。

とはいえ、「ほめる」ことばの使い方を手っ取り早く理解できるというメリットがあることは事実。

本書を通じて“基本”を知っておき、さまざまな場面で役立てたいところです。

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Photo: 印南敦史

Source: ぱる出版