女子サッカープロ化の意義(後編)

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 日本初となる女子プロサッカーリーグの名称が「WEリーグ(Women Empowerment League)」と発表され、2021年9月の開幕に向けて、着々と準備が進んでいる。参加チーム数は6〜10で、当面の間、降格はない予定だ。なでしこリーグからも、多くのチームが新リーグ参入を視野に入れているようで、順調に進めば、WEリーグの知名度は向上していくだろう。


アメリカでは日本以上に、さまざまな世代が女子サッカーを観戦に訪れる

 そこで気になるのは、アマチュアリーグとしてその歴史を紡いできた「なでしこリーグ」の存在がどうなっていくのかだ。主力選手がWEリーグへ流れることになれば、当然、注目度が下がっていくことが危惧される。

「WEリーグ開幕後4年程度は、なでしこリーグは我慢の時間になるでしょう。そこをしっかりと支えなければ、この改革はうまく進まないと思います」

 そう語るプロリーグ設立準備室の岩上和道氏は、なでしこリーグ理事長でもある。

 プロ化によって、なでしこリーグが大きなダメージを受けることは避けられず、スポンサーがWEリーグへ流れる可能性もある。

「それでもサポートしたいと言ってくださるスポンサーもありますが、当然、短期的には(なでしこリーグの)オペレーションを縮小していくことになるでしょう。この厳しくなる時期を日本サッカー協会(JFA)がしっかりとサポートしていくことが重要です」(岩上氏)

 岩上氏の言葉からは、プロ化が頓挫してきたこれまでとは異なるJFAの大きな覚悟が伺える。JFA副会長でもある岩上氏は、昨年4月なでしこリーグ理事長に就任。その際、「日本女子サッカー改革のために日本サッカー協会が本腰を入れるという意味で、私が就任することになった」と決意を語っている。

 当面、プロリーグ側は選手の環境やパフォーマンスの向上と、ブランディングや周知徹底、運営に注力することになるだろう。しかし、今回の改革全体のカギを握るのは、なでしこリーグ側なのではないだろうか。なぜなら、なでしこリーグがさまざまな選手にとって強固な受け皿として存在していなければ、WEリーグにも影響が出てくるからだ。つまり、女子サッカー選手になる道筋となりつつある土壌を維持、発展させることができるのは、なでしこリーグにほかならないということだ。

「(現在のなでしこリーグのクラブで)プロクラブにならない選択をするチームも当然ありますよね。そういったチームには、『この先、なでしこリーグはやっていけるのか』『自分たちは放り出されてしまうんじゃないか』という心配や不安もある。そこは我々がしっかりと支えていきます」(岩上氏)

 これまで、なでしこリーグでは各クラブの苦しい経営と観客動員数の少なさが課題になってきた。WEリーグが存在感を強めていけば、その好影響は次第になでしこリーグにも及ぶに違いない。ただし、効果の波及には時間を要する。その苦しい期間をどう乗り越えていくかが最大のテーマだ。

 また、環境が異なるとはいえ、海外リーグからヒントを得ることも可能だろう。興味深いのはアメリカの例だと岩上氏は言う。

「NWSLのオーランド・プライドのスタッフに話を聞いたのですが、昨年のワールドカップでアメリカが優勝した勢いもあり、全9チームの平均観客数は約7000人程度だそうです。チームによって差はあるようですが、それ以前でも5000〜6000人は動員していたということです(昨年のなでしこリーグ1部リーグの1試合平均は1345人)。観客層の中心は、選手と同世代の女性とファミリー層だということですが、日本では、その層をほとんど開拓できていません。これは、なでしこリーグとWEリーグの双方に通じる課題で、トライしていく価値があると思います」(岩上氏)

 女性客やファミリー層がスタジアムに来場するようになれば、プロモーション面でも確実にプラスの効果がありそうだ。そのためには、グッズや来場特典を用意するなど入念なリサーチをすべきで、チームの負担は増えるが、地域密着実現には不可欠な要素でもある。

「女子サッカーは面白いですよ。さまざまな角度から検証したことで、『いいところがいっぱいあるじゃないか』と感じています。なでしこリーグとWEリーグは一心同体ですから、常に連携を取りながらやっていきます。サッカーをやっている女の子が、自分もサッカー選手になろうと現実的に思ってもらえるように、WEリーグとともに、なでしこリーグも受け皿になれれば」(岩上氏)

 今回のWEリーグ発足は、課題をすべてクリアしたうえで出発するわけではない。女子サッカーがプロ化されるだけではなく、日本女子サッカー界全体の大改革だ。多額の投資を決断したJFA、高度な自立運営を目指す新リーグ及びチーム、そしてプロとして世界トップレベルのパフォーマンスを求められる選手たち。それぞれが覚悟を見せる時だ。

 日本女子サッカーは今、分岐点に立っている。WEリーグ開幕からの4年間は、飛躍あるのみ――。かつてない挑戦が今、始まろうとしている。