坂口佳穂インタビュー(前編)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ビーチバレーボール界も国内外のすべてのトーナメントが中断されている。昨年、国内ツアー3勝、1-Star(※)ながらFIVB(国際バレーボール連盟)ワールドツアーでも初優勝を遂げて、今年はさらなるステップアップを目指していた坂口佳穂(24歳/マイナビ)にとっても、もどかしい状況にある。
※Star=大会のグレード。5段階に分けられており、最も高い大会が5-Starで、最も低い大会が1-Star

 ともあれ、このオフには例年どおり海外合宿を敢行し、入念な強化を図ってきた坂口。緊急事態宣言が発令される前に彼女を直撃し、まずは昨季の戦いぶりを振り返りつつ、新シーズン、そして来年の夏に向けての思いを語ってもらった――。



――昨シーズンは、国内のマイナビジャパンビーチバレーボールツアーで3勝。最終戦となるツアーファイナルの優勝もあって、堂々のツアーポイントランキング1位でした。また、2019−2020 FIVBワールドツアー・テルアビブ大会(イスラエル/2019年11月)では初優勝も遂げました。新たに村上礼華選手(23歳/ダイキアクシス)とペアを組んだシーズンでもありましたが、あらためて振り返ってみての、率直な感想を聞かせてください。

「ワールドツアーもたくさん回って、とても大変なシーズンだったように思います。一昨年までは、経験豊富な選手とチームを組むことが多かったので、いかに自分がパートナーに頼ってきたのか、痛感させられたシーズンでもありました。

 これまでは、先輩方にいろいろと教えてもらいながらやってきたのですが、もう誰も何も言ってくれません。(何か問題があれば)礼華も言ってはくれますが、(以前とは違うことを自覚して)『自分で、何でも気づかないといけないな』と思いました。

 それで、いろいろと2人で試行錯誤してきたことが、ツアーファイナルやワールドツアーの優勝につながったと思っています。大変でしたが、少しずつでも課題をクリアできた1年だったかなと思います。

 ツアーファイナルでは、不思議なのですが、勝ちにいくというより、『プレーを楽しもう!』という気持ちのほうが大きかったですね。(日本のトップチームがすべてそろった)難しい大会でしたが、あらゆることが吹っ切れて”落ちついていた”というのか。それでも、チームには勢いがあったように思います。1年かけてチームを作ってきた積み重ねが、最終戦に出たのではないでしょうか。

 ワールドツアー初優勝も、とてもうれしい出来事でした。1-Starの大会だったので、表彰台には上がらないといけないとは思っていましたが、レベルが低いわけでもありませんでした。準決勝の相手は以前、ワールドツアー韓国大会(1-Star)の決勝で負けたロシアチームでしたが、今回はフルセットで勝つことができました。優勝と同時に、チームの成長も実感できた大会でした」

――国内外で優勝という結果が伴ってきたのは、どういったところに要因があると思いますか?

「試合のなかで調子が落ちてしまっても、自分たちでしっかり修正できるようになったのかなと思います。そこは、技術的なこともありますが、精神的な部分もそうでした。状況が悪いなかで、パートナーへどういった声をかけるのかも大切ですから。

 コーチからは『間違ってもいいから、自分たちで考えること、工夫すること』という点について、よく言われました。それができるようになってきたのかな、とは思います。

 技術的には、サーブ力のアップですね。海外のチーム相手では、ディフェンスから切り返して点数を取ることが難しいので、サーブで相手を崩していかないと勝てません。だから、ミスをしてもいいから、サーブから攻めていくことを意識していって、徐々にそれがうまくいくことが増えていきました。

 あとは、合宿なども含めて(年間を通して)フィジカルトレーニングをかなりやってきました。それで、長いラリーの最後でもしっかり打てるようになりましたし、砂の上での動きがよくなって、パストスのボールコントロールが落ちつくようになりました」

――村上選手とのチーム1年目でしたが、年齢も近いですし、うまくコミュニケーションがとれて、シーズンが進むにつれ、いいチームになってきたように見えました。

「礼華はバレーセンスもあるし、身体がしなやかなので、どんなボールにでも対応できるんです。海外だと、相手の高いブロックに対して、的を絞らせないようにトスを散らして攻撃したいのですが、私がレシーブでミスをしても、しっかりトスを上げてくれます。だから、私は安心してミスしていました(笑)」


昨季の戦いぶりを振り返る坂口佳穂

――シーズンオフには、パラグアイ、スペインと海外で長期合宿を行ないました。成果はどうですか。

「長かった!(笑)。パラグアイは、毎日気温が35度以上で、湿度もあって、長くてキツい合宿でしたが、いい時間を過ごせました。基礎体力の向上と基礎練習がメインでしたが、あの環境で練習できていれば、1年間のシーズン、どこへ行っても、体力的にまったく怖くないと思いました。

 スペインは、ヨーロッパの強豪チームが合宿で集まる場所で、彼女らとゲームトレーニングをして、たくさん刺激をもらいました。パワーと高さのあるチームと毎日対戦するので、だんだん慣れて勝つこともできるようになって、とてもいい合宿でした。

(現在、指導を受けている)ブラジル人のコーチは、基礎的な練習メニューが多く、私は常に足を動かすように言われています。精神面でも、コーチはポジティブな言葉でモチベーションを上げてくれます。

 それと、よく『頭を使え!』と言われるので、昨年以上に自分たちで考えるようになっていますね。コーチとは本音で話せるので、いい関係ができていると思います」

――ワールドツアーは中断して、国内ツアーの開幕も延期されていますが、今シーズンの目標をどう置いていますか。

「シーズンがどうなるのかわかりませんが、ワールドツアーでは、3-Starでの表彰台、4-Starでのトップ10入りを目指しています。本当なら今年、日本代表チーム決定戦(※5月開催予定だったが、時期未定で延期)で勝って、東京オリンピックに出たいと思っていました。

 それはともかく、私たちは日本一になって、『世界で通用するチームになりたい』という目標は変わりません。それに向かって、一つひとつの試合を戦っていきたいと思います」

(つづく)

坂口佳穂(さかぐち・かほ)
1996年3月25日生まれ。宮崎県出身。武蔵野大卒。身長173cm。血液型A