DNGA第3弾として2020年6月に発売予定の「タフト」(写真:ダイハツ

2020年6月に発売予定の軽自動車、ダイハツ「タフト」が発売前から人気だ。自動車関連メディアのみならず、ライフスタイル系メディアを含めてまさに“タフト祭り”の様相を呈している。

新型コロナウイルスの感染拡大で非常事態宣言下にあったにもかかわらず、4月のYahoo!ニュースの経済カテゴリーのランキングでは、タフト関連のニュースが上位になることが多かった。

きっかけは、4月1日に先行予約が始まったこと。次いで4月20日にタフト専用ホームページが開設されたことだ。


「タフト」に全車標準装備となる「スカイフィールトップ」(写真:ダイハツ)

前席の大型ガラスルーフ「スカイフィールトップ」を全車に標準装備することや、ボディカラーに新色のアースカラーを含む全9色をラインアップすることなど、タフトの持ち味である“他車にない楽しさ”が明らかになったほか、荷室の使い勝手やシートアレンジなどの写真も公開された。

同時に、さまざまな自動車メディアからもタフトにまつわる情報は発信されるようになり、幅広い層から関心が高まっている。そうしたタフト関連ニュースでは、ライバルとして「ハスラー」と「ジムニー」の名前が挙がる場合が多い。

タフト量産決定プロセスはミライースと同じ?

この点について筆者は1月、本サイトで掲載した「ハスラー」「タフト」がライバルといえない理由で、2モデルの商品性の違いを説明した。


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記事の中でも少し触れたが、「ダイハツはタフト以外にジムニー対抗となるモデルを出す計画がある」という噂が絶えない。ジムニー対抗とは、説明するまでもなく高いオフロード走破性を持つ本格的な四輪駆動車だ。

本当に、そんなクルマが出るのだろうか。本稿では、過去のダイハツの新車開発の経緯と、ダイハツの事業の実情から、“噂の本格4駆”登場の可能性を探る。

4月20日に公開されたタフトの商品情報を見ながら、あることを思い出した。それは、「ミライース」誕生までのプロセスだ。ミライースの原型は、東京モーターショー2009に出展されたコンセプトモデル「イース(e:S)」だ。

東京モーターショー2009に出展されたコンセプトモデルのイースは、全長3100弌濮管1475弌濮換1530个2ドア車。重量は700圓如燃費は10・15モードで当時としてはかなり意欲的な“リッター30km”を目指すとした。


東京モーターショー2009に登場した「イース(e:S)」(写真:ダイハツ)

のちにミライースの成功を経てダイハツ本社役員となるイースの開発者に、ショーの現場でじっくり話を聞いた。彼は「ダイハツが軽に求める、小さい・軽い・燃費よしを徹底的に追求した形。2ドアでスポーティなイメージだが、これで大人がしっかり4人乗れる」と熱を込めて語っていたのを覚えている。ところが……。

約2年後の2011年9月に発表されたミライースは2ドアではなく4ドア車で、イースと比べて全長も約30竸びた。デザインもスタイリッシュというより、庶民派な雰囲気。名前のとおり「ミラっぽく」なった。


2011年に市販された「ミライース」(写真:ダイハツ)

率直に言えば、イースとミライースはまるで違うモデルに見える。その理由について開発担当の彼は「上(役員会等)から、これでは数が出ないという判断で企画を大幅に変更した」と、ダイハツ社内での経緯を話してくれた。

ここからは筆者の推測だが、新型タフトではイースの経験が生かされているのではないかと思う。

タフトの企画段階には2ドア案もあった?

タフトの原型は、東京モーターショー2019に出展した「WakuWaku」だ。


東京モーターショー2019に登場した「WakuWaku」(写真:ダイハツ)

2ドアのように見える4ドア車である。ここからタフトの先行予約開始までは6カ月程度であるので、WakuWakuはほぼ量産の状態で登場したはずだ。となると、その2年ほど前の初期デザインには当然、イースのような2ドア車案もあったに違いない。

これが、世間で噂される「ジムニー対抗」に相当するのではないか。

タフトがイースと違い、早い段階で2ドアっぽい4ドアとするため、「スカイフィールトップ」という裏技を使うことを決定できた背景には、2つの理由があると思う。

ひとつは、「タント」というベース車があること。もうひとつは、2016年にトヨタの完全小会社となったことだ。中長期かつ総括的な製品企画の立案を“行わざるをえない”状況になってきたのだと思う。

そのうえで、トヨタ・ダイハツによるSUV中期戦略を考えてみよう。これまでの製品戦略を踏まえると、時系列では次のようになると予測される。

■2019年7 月:DNGA第1弾「タント」
■2019年11月:DNGAのOEM第1弾「ロッキー」「ライズ」
■2020年6月:タント派生第1弾「タフト」(ハスラーけん制) 
■2021年?月:タント派生第2弾「???」(ジムニーけん制)​

ジムニー対抗車にまつわる噂はたくさんあるが、その中には「ラダーフレームの本格4駆」、「DNGAによるFR(後輪駆動)」、「テリオス後継」といったものもある。


「テリオス」は1997年に登場したコンパクトSUV。軽自動車の「テリオスキッド(写真)」もあった(写真:ダイハツ)

希望的観測も多いが、仮にラダーフレームの採用があるとすると、海外向けも考慮し「ミニランドクルーザー」のようなイメージで、軽自動車だけでなく「ヤリス」用1.5リッターエンジンなどを搭載する登録車(普通車)のトヨタ向けOEMも考慮されるはずだ。

すでにアメリカや中国では約4割、ヨーロッパでも3割以上をSUVが占めているが、世界市場でさらにSUVシフトが進むとすれば、トヨタ向けOEMモデルもありえない話ではない。一方で、DNGAで“軽のFR化”はかなり無理があるように思えるが、こちらもトヨタ向けOEM次第だろうか。

登場するなら車名はテリオス? ラガー?

モデル名については「ロッキー」や「タフト」など、このところの過去のモデル名の復活が続いている。この路線がこれからも続くとすれば、イメージ的には都会派の「テリオス」よりもオフローダーの「ラガー」(1984〜1997年製造)という選択もあるはず。

新型タフト企画の初期案に、往年のタフトのような2ドア車があったとすれば、ジムニー対抗にもタフトのロゴが一部に残るかもしれない。だた、「ジムニー対抗」には大きな試練がある。

新型コロナウイルス感染の拡大の影響により、「事業の立て直しが急務であるこの時期に、こんな数が出ないクルマ(ジムニー対抗の量産)は無理だ。当面は諦めろ」と、開発陣の提案を上層部が受け入れないというシナリオも考えられる。果たして、ダイハツのジムニー対抗は登場するのだろうか。