昨季19試合に出場した長谷川(40番)。プレースキックは左右両足で蹴ることができる。写真:徳原隆元

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 今季行なわれたルヴァンカップとリーグ戦の2試合を見る限り、長谷川雄志の覚醒は今なお続いている。2試合ともに師と仰ぐ小林裕紀とボランチを組み、臨機応変にポジションを変えながら攻撃を構築すれば、逞しさが増したフィジカルを活かして守備でも貢献。23歳とまだまだ成長が見込めるタレントだ。

 長谷川は宮崎産業経営大の出身で、学生時代は全国的に無名の選手。しかしプロ1年目の昨季、ルヴァンカップで着実に実戦経験を積むと、リーグ戦でも5月頃からコンスタントに出場機会を掴んだ。実績のない“無印良品”だったのだ。

 アマチュア時代は感覚でのプレーが多く、片野坂知宏監督の求める戦術理解には時間を要したものの、ある意味フラットな状態だったのが幸いして飛躍的に成長。昨夏に名古屋から移籍してきた小林裕からも多くを学んだ。

 長谷川は「ポジショニングと言ってもいろいろあるが、裕紀くんは的確に指示してくれた。相手の身体の向きや視線を見て狙いどころを明確にするプレーを学んだ」と影響力の大きさを話す。小林裕の指示は目から鱗で、パンパンになっていた頭を氷解していった。「練習でアドバイスをもらった形が試合で活かせて、あれはこういうことか」とサッカーが楽しくなったという。
 
「僕は無名の選手だし、J1でもJ2でも関係ない。とにかく試合に出て、サッカーが上手くなりたいだけ」と物怖じせず、トップリーグでの実戦経験で滞在能力がさらに引き出された。相手の攻撃の芽を潰してボールを奪うと、積極的に前線やサイドへ展開。1秒ごとに戦況が変化する試合のなかで、無難なボール回しに終始するのではなく、得点に直結するパスを心掛けている。

「イメージが直結するようになったのはホームの浦和戦(17節)ですかね。裏に抜けたコズくん(小塚和季)にパスを通し、ノリくん(藤本憲明)につながり得点を奪えた」

 事実、この試合を機に覚醒が始まったように感じる。

 攻撃陣を操るパスは高精度で、本人も「一番得意なのはパス」と自負する。チームメイトの知念慶が「状況に応じていろんな質のパスを使い分けられる選手」と評したように、特にラストパスを受けるFW陣からの信頼は厚い。

「今季は前線の選手が大幅に変わって攻撃のアプローチが変わりそう。バイタルエリアで勝負できる選手が増えたので、くさびのパスが多くなったし、そこからのミドルシュートが増えるはず。攻撃陣の特徴を最大限に活かすことができれば、もっと攻撃的なサッカーができると思う」

 7月4日に再開されるJ1リーグに向け、「毎日ランニングをしたり、ひとりでボールを蹴ったり、身体が鈍らないようにしてきた」と準備に怠りはない。長谷川の攻撃のタクトを振るプレー――一級品と言える高精度パスには注目だ。

取材・文●柚野真也(フリーライター)

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