新型コロナウイルス流行の影響で、学生がほとんどいない米ジョージタウン大学のキャンパス(2020年5月7日撮影)。(c)SAUL LOEB / AFP

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【AFP=時事】米国の大学の授業料は年間数百万円と高額であるケースが多い。しかし、新型コロナウイルスが流行し、ズーム(Zoom)などのビデオ通話サービスを使った授業が行われている現状において、学生らは年間7万ドル(約750万円)もの授業料を払うことの正当性に疑問を抱いている。学生らの多くは、莫大(ばくだい)な学費ローンを抱えていることも多いのだ。

 こうした状況に「不公平な扱い」を受けていると感じ、学生らがその責任を大学側に求めはじめている。

「私たちが払う授業料には、キャンパスで提供されるデジタル化できないサービスも含まれている」──そう主張するのは、ジョージ・ワシントン大学(George Washington University)で公衆衛生学の修士号を目指すドュルミル・シャー(Dhrumil Shah)さん(24)だ。2年間の修士課程の授業料を一部ローンに頼っていた彼は、大学に何らかの払い戻しを要求する嘆願書の一つに署名した。

 米首都ワシントンの大学では、新型ウイルスの感染拡大を抑制するために発令された外出禁止令によって遠隔で授業が行われているが、シャーさんはその結果として授業の構造や監督指導が失われてしまっていると述べ、対面性が持つ重要性が欠けるために授業が「劇的に」非生産的になっているとした。「これでは失敗体験になってしまう」

 彼だけではない。多くの学生が、キャンパスでフリスビーを楽しむ午後、ハイテク機器のそろった研究室での授業、クレージーな夜のパーティーといった米国の大学ならではの経験が失われていると嘆いているのだ。

 不満を裁判に訴えた学生もいる。AFPが確認したところでは、アデレード・ディクソン(Adelaide Dixon)さんは、オンラインコースや合否判定システムによって得た卒業証書は「価値が低い」として、マイアミ大学(University of Miami)を訴えた。彼女を代表とする約100人の学生らは、大学側に数百万ドルの賠償を求めている。学生が大学側を同様の理由で訴え出た裁判は、少なくとも全米の50校で起きている。

■秋からの新学期は?

 多くの大学はこれらの訴訟について沈黙を守っている。だが、一部の大学は、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)に端を発した前例のない苦境に陥っているとのコメントを出している。

 3月中旬以降、学生の多くがキャンパスから離れている点を考慮して、学生寮の費用を一部払い戻した大学もあるが、授業料の払い戻しに踏み切った大学はない。

 今後、問題はさらに悪化する可能性もある。通常ならば授業再開となる夏の終わりや秋の初めには、どうなるのか? 2000万人の学生は米国のキャンパスに戻ってくるのだろうか?

 キャンパスライフが、まるでウイルス危機などなかったかのように以前の「通常」にすんなりと戻ることは想像しにくい。シャーさんは、ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)の実施や大量の手指消毒剤が必要になると話し、「学生寮やカフェテリアでは、食料品店で敷かれているのと同じような措置が必要だろう」と続けた。

 今後の見通しについて、カリフォルニア州立大学フラートン校(California State University, Fullerton)のパメラ・オリバー(Pamella Oliver)総長は、「秋の学期はバーチャルになることを想定している」との考えを参加したテレビ討論会で表明している。

 しかし多くの大学にとってバーチャルな状態を続けることは、学生と、米国の悲惨な経済状況下でその学費を負担していることが多い保護者達からのプレッシャーがいっそう強まることを意味する。

 これについてアメリカ教育協議会(American Council on Education)のテッド・ミッチェル(Ted Mitchell)会長は、「多くの学生とその家族の収入は減り、高等教育のために払える金額も減るだろう」と議会への書簡に書いた。

 ミッチェル氏の予想では、来年度の大学入学者数は15%減る見通しだ。これは大学にとって230億ドル(約2兆4800億円)という大きな損失となる。

 ハーバード(Harvard)、エール(Yale)、スタンフォード(Stanford)といった全米トップの大学は莫大な基金を持ち、さらに自由に借り入れができる一方、小規模な教育施設は入学者が減少した場合、破たんする可能性もある。

【翻訳編集】AFPBB News

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