【レクサスLM】初のミニバン 価格が中国で暴騰 新古車が3500万円にも 値上がりした背景
レクサス初ミニバン「LM」 2/24に中国発売text:Kumiko Kato(加藤久美子)
2019年4月に開催された上海モーターショーでワールドプレミアとなったレクサス初のミニバン「レクサスLM 300h」
レクサス初のミニバンということで、発表当時は日本でも大変大きな話題となり、日本での発売を期待する声も大きかった。
レクサスLM 加藤博人そして中国での販売価格が発表されたのが2020年1月15日のこと。以下がそのモデル名と価格だ。
レクサスLM 2020モデルの新車価格
300h(7人乗りエレガントスタイル):116万元(約1856万円)
300h(4人乗りロイヤルスタイル):146万元(約2340万円)
レクサスは、中国での生産をしていない。ほとんどは九州工場で生産されており、北米向けなど一部は北米で生産されている。
そのため、中国で販売されるレクサス車はすべて日本からの輸入車で関税(15%)などを含んで高額な価格となっている。
ちなみに、数ある中国で販売される他のレクサスはどれくらいの価格なのか。
上級モデルで比較してみると……
レクサス上位モデルの新車価格
LS:81.1〜117万元(約999万6000円〜1710万円)
LX:141.7万元(約1135万円)
LC:115.5〜126.2万元(約1326万円〜1479万円)
LM:116〜146万元(約1856万円〜2340万円)
中国ではLSよりもLCよりも高価格だ。LM販売前は最高額だったSUVのLXよりもさらに5万元(約80万円)も高額な価格設定となっている。
しかし! これで驚いてはいけない。実際に発売されてから3か月経過した現在。
LMの「中古車」価格がとんでもない価格になっていた。
LMの新古車 4座は3200万円以上!
コロナ渦で4月に取材を予定していた北京モーターショーも延期となり、中国のクルマ事情、とくに新車販売については意識の外だった。
BYDや五菱などの中国自動車メーカーがマスクを作り始めたとか、ホンダやトヨタが中国での生産を少しずつ再開させた、などのニュースは目にしていたのだが。
レクサスLMの中古車紹介ページ。価格は174.80〜219.00万元。日本円にすると約2797万円〜3500万円。 汽車之家そして5月下旬。LMの発売を思い出し、中国最大の自動車情報サイト「汽車之家」に掲載されているレクサスLMのページを確認したところ……発売済みとなっていた。
こんな状況でこんな高額なクルマが果たして売れているのか? 評判は?
と調べていたところ新車価格の横に記載された「中古車価格」を見て驚いた!
中国語で中古車のことは「二手車」というのだが、その価格がなんと174.80〜219.00万元。日本円にすると、約2797万円〜3500万円!
「二手車」が掲載されているページを見てみると、10台のLMが紹介されていた。
どれも2020年4月〜5月に登録された車両のようだ。(中には登録月の記載がないものもある)
そしてすべて、走行距離は0.01公里(=100m)となっており、「準新車」と記されている。つまり、日本で言うところの「新古車」のような扱いになる。
販売しているのは中古車販売店だ。中には「会員制」のお店もある。
なぜこんなに高いのか?
中国ではレクサスが異常なまでの人気
日本と同じ2005年に中国でのディーラー展開が始まって今年で15年。昨年ついに累計販売台数が100万台を超えた。
レクサスLMの後部座席。 レクサス2019年1〜12月の主要地域別の販売実績は以下となっている。
2019年1〜12月の主要地域別の販売実績
北米:約32.5万台(前年比100%)
中国:約20.2万台(前年比125%)
欧州:約8.7万台(前年比114%)
日本:約6.2万台(前年比113%)
中近東:約3.2万台(前年比108%)
東アジア:約3.4万台(前年比108%)
世界のどの地域でも好調だが特に好調なのは前年比125%の中国だ。
中国の新車販売台数は2018年から2年連続で減少しており、2019年の自動車販売台数は前年比8.2%減の2576万9000台。乗用車だけの数字は前年比9.6%減の2144万4000台。
このような状況の中でレクサスの販売台数が前年比125%という数字がいかに凄い事かおわかりだろう。
ちなみにレクサス同様、トヨタ車も同レベルの好調さをキープしている。
中国の富裕層がレクサスを好むのは日本から輸入された「本物の日本製高級車」だからだ。
中国ではメルセデス・ベンツやアウディ、BMWはもちろん、日本の高級車ブランド、アキュラ(ホンダ)、インフィニティ(日産)も中国メーカーとの合弁会社を作って中国内で生産している。
米国テスラも合弁規制解除後の2019年より中国での生産を始めた。
しかし、レクサスは品質をまもるため、日本で製造することにこだわっており、今後も中国での生産は考えていないという。
LMはなぜこんなに高値になったのか
中国ではディーラーが販売価格を自由に決めることができる。
希望小売価格は存在するが、レクサスのディーラーが中古車販売店に希望小売価格以上で販売することも当然可能だ。
レクサスLMの世界公開時のようす。 加藤博人そして、中古車店はディーラーから買った新車のLMをいったん登録して、新古車として一般ユーザーに販売するという流れのようである。
それにしても高級バージョンの4座モデルは軒並み210万元以上(3360万円)の値段をつけている。7座にも200万元の値段がついているものもある。
この現象はレクサス全体に起こっているのだろうか? と思って他の車種を調べてみたところ、他の車種については普通に中古車らしく適正に価格が下がっている。
LX、LS、LCも中古車の価値残存率を表す「保値率」は1年後で75%前後だ。
ちなみに、他にも同様の高人気をキープしている日本車が中国にはある。レクサスLMのベースとなっている、トヨタ・アルファード&ヴェルファイヤだ。
希望小売価格はいずれも最上級グレードで約1400万円だが、保値率は93%以上。中古車としてもっとも高額なアルファード&ヴェルファイヤは2000〜2200万円の価格をつけており、平均して5年落ちでやっと正規の新車価格レベルとなる。
高級ミニバンが大人気の中国自動車市場だが、他社からも実は続々と、この数か月間に新しい高級ミニバンが発売されている。
3月にはモデルチェンジで高級感がアップしたビユイックGL8、さらにGL8の高級4座モデル「アベニール」の販売もスタートし、5月末にはVWから全く新しい高級ミニバン「ヴィロラン」も登場した。
ヒートアップする中国高級ミニバン市場でLMやアル・ヴェルがどのように戦っていくのだろうか?
おそらく他の追随を辞すことはないだろうけれど。