【古いクルマに厳しい】日本だけ? アメリカ/韓国/欧州の自動車税、調べてみた 免除/優遇あり
自動車税「重課」制度 開始から18年text:Kumiko Kato(加藤久美子)
「重課」という言葉が不快に感じるのは筆者だけだろうか? 「じゅうか」という言葉の響きも「重い十字架を背負う」イメージで、何となく罪の意識を感じてしまう。
2020年に納付する自動車税で初の重課となるガソリン乗用車は2006年度に初度登録されたクルマとなる。
自動車税の重課制度が始まったのは2002年から。正式な名称は「グリーン化税制」 ポルシェ自動車税の重課制度が始まったのは2002年から。正式な名称は「グリーン化税制」で重課もあれば軽課もある。
早い話、古いクルマは環境負荷が大きいから自動車税の税額を上げるペナルティを課すということだ。
乗用車の場合、ガソリン車は車齢13年以上、ディーゼル車は11年以上で約15%の重課となる。
また、車検の時に納める重量税も古い車は車齢13年と同18年以上で重課となる。
1.5t以下の場合の重量税(2年分)
エコカー:15,000円
13年未満:24,600円
13〜18年:34,200円
18年以上:37,800円
かなり大きな差となっている。
なお、初度登録からの年数で一律(エコカー除く)に重課対象としている。
また個々のクルマの燃費ではなく初度登録した日が基準となるため、中古輸入車を海外から持ち込んだ場合も日本では新規登録(=初度登録)となる。
1990年製造のクルマでも「新車」扱いとなるので、重課対象となるのは13年後となるわけだ。
では諸外国ではどうなのか? 古いクルマに対する各国の対応を調べてみた。
アメリカ 古いクルマの検査を軽く
アメリカには1994年以降に義務付けられたアメリカ合衆国環境保護庁(EPA)が定める排ガス規制がある。
こちらは製造から21年以上経過した車両には免除される。
輸入車も同様で、アメリカ国内で販売される車両が対象となる。
アメリカは個々の州による規制もあり、中でももっとも厳しいことで知られるカリフォルニア州独自の排ガス規制の場合、1975年以前に製造されたクルマは対象外となる。
また、これまでも何度か記事で紹介してきたが、アメリカには製造から25年以上経過したクルマに対するクラシックカーのルールがある。俗にいう「25年ルール」だ。(同様のルールがカナダにもあり、こちらは「15年ルール」となる)
こちらもEPA同様、輸入車を含めたアメリカで販売される車両に適用されるもので簡単に言うと、もろもろの保安基準が撤廃されるというルールだ。
右ハンドル車もクラッシュテストなどなしに米国内で販売/登録が可能になる。
製造から25年過ぎた各国の名車が続々とアメリカに向けて旅立っているのはこれが理由だ。
日本は古いクルマは環境負荷が大きいとして、「重課」という方法で罪償いをさせているが、北米では「長い間ご苦労さん。厳しい規制対象から外してあげるよ!」という優遇措置を持って迎え入れているわけだ。
お隣の韓国 古いほど税額が安くなる
あまり紹介されることがない韓国の事情を紹介しておこう。
韓国にも「自動車税」(チャドンチャ・セ)という名のオーナーが納める税金がある。
登録から3年目以降、毎年5%ずつ安くなっていく。12年以上は50%で固定される。(半額以下になることはなく、20年経っても30年経っても新車税額の50%)
韓国は新車至上主義の国ゆえ、クルマが古くなる=価値が下がる(から税金を安く)という考えに基づいている。
ちなみに、かつては排気量を5段階に分けて税額を設定していたが、(大排気量ほど高額で不利)、非関税障壁と指摘されアメリカなどからの抗議によって現在は大排気量が不利にならない3段階の設定となっている。
また、燃費やCO2排出量によって自動車税額を変えるという議論も出されたが、こちらも韓国自動車業界の反発によって導入が見送られている。
ではその韓国の自動車税。どれくらいなのだろうか?
非営業乗用車の自動車税(1ウォン=0.087円で計算)
-1000cc:1ccあたり80ウォン(約7円)
1000-1600cc:同じく140ウォン(約12円)
1600cc以上:同じく200ウォン(約17.4円)
1600ccで19200円、2000ccで34800円なので、新車から3年までは日本とそれほど大きな違いはない。
が、3年経過後から安くなっていくのは素晴らしいシステムだ。
さらに、その年の1月に自動車税を納付すれば10%オフとなる「早割り」も採用されている。
欧州、25〜30年以上で「免税」多く
自動車の歴史が長いヨーロッパは環境基準の厳しい国々であっても、古いクルマに対する様々な優遇措置がある。
ドイツ
ドイツには「オールドタイマー」という制度があり、税金や車検など様々な優遇措置がある。
ドイツでは初度登録から30年経過し、オリジナルを保っているクルマには「Hナンバー」(末尾がH)が付与される。 ポルシェ初度登録から30年経過し、オリジナルを保っているクルマには「Hナンバー」(末尾がH)を付与するが、どんな部品を使って修理したのかがわかる整備記録簿の提出が必須。
塗装も極力純正塗料であることが求められる。
例えば1960年代のクルマに最新のオーディオを付けるのも当然NG。なおドイツは都市によって環境規制があるが、Hナンバー車は規制関係ナシに走行できる。
また、「07」から始まる旧車用の設定もある。旧車イベントへ参加のための移動、試乗と検査、修理やメンテナンスのための移動のみ許される。
1枚のプレートを複数の旧車に付け替えて使えるのもポイント。
税金は安く設定されているが、考え方としては旧車文化の振興をうたいつつ環境に悪い古いクルマを必要以上に走らせたくない、という目論見もある。
イタリア
自動車税は燃費基準をベースに税額がきまる。20年以上経過したクルマは「クラシックカー」として減税対象となり30年以上で免除となる。
かつて20年以上の中古車が大量に海外に流出したことから、イタリアの旧車文化を守るためにイタリア政府が実施した旧車への優遇措置である。
イギリス
初度登録から40年以上経過の自家用車は自動車税が免税。
同様にMOT(日本で言うところの車検)も免除となる。かつては1960年以前に登録したクルマが対象となっていたが、現在は「登録から40年」が対象。
ただし、40年以上経過でも、過去30年間に、シャシー、サスペンション、エンジンなどの基礎的部分にカスタムを施していたらMOD除外の対象外となる。
長く愛されてきたクルマをたいせつに
日本人の自動車平均使用年数は年々伸びている。自動車検査登録情報協会の調べによると、1989年の9.09年から2019年の13.26年と30年間で4年以上の差だ。
近年、自動車メーカーやディーラーによる歴代クラウンやNAロードスター、ハコスカGT-Rなど往年の名車をレストアするプロジェクトも始動している。いずれも「長く愛されてきたクルマを愛でる文化を育てたい」という思いからだ。
日本の自動車税は2019年10月に「値下げ」が開始された。対象となるのは2019年10月以降に初回新規登録を受けた自家用乗用車(登録車)のみ。古いクルマは無縁だった。