1/12グランドセントラル駅の外に立つホットドッグスタンド。3月中旬撮影。ニューヨークは新型コロナウイルス感染拡大の渦中にあった。PHOTOGRAPH BY NATAN DVIR 2/12ドヴィルは11年を過ごしたニューヨークの思い出の場所を数日かけて訪れ、カメラに収めた。ここブライアント・パークも好きだった場所だ。PHOTOGRAPH BY NATAN DVIR 3/12テルアヴィヴへと発つ日が迫るなか、ドヴィルはニューヨークを象徴するお気に入りのランドマークを最後に撮っておきたい気持ちに駆り立てられたという。トリニティ教会の墓地もそんな場所のひとつだ。PHOTOGRAPH BY NATAN DVIR 4/122008年にニューヨークへ移って以来、この街の地下鉄はドヴィルを魅了してきた。感染拡大が始まってから公共交通機関は避けてきたが、この日は駅構内まで下りてこの写真を撮った。PHOTOGRAPH BY NATAN DVIR 5/125番街はニューヨークに来て最初に手がけたシリーズ作品のテーマに選んだ場所だ。今回、店舗が軒並み閉まって閑散としたショッピングエリアで、忘れ難いショットを撮影した。PHOTOGRAPH BY NATAN DVIR 6/12シリーズ「The Last Walks」の写真は、すべて「iPhone X」のパノラマ撮影機能で撮った。写真はブルックリン橋。PHOTOGRAPH BY NATAN DVIR 7/12今回撮影した場所の多くは、ドヴィルが住んでいたトライベッカのアパートメントから歩いて行ける範囲にある。ロウワーマンハッタンの商業施設ブルックフィールド・プレイスも徒歩圏内だ。PHOTOGRAPH BY NATAN DVIR 8/12ドヴィルは長年、広告に惹かれてきた。外出制限で人通りが途絶えた機会を利用し、不気味な静けさに包まれたタイムズスクエアにカメラを向けた。PHOTOGRAPH BY NATAN DVIR 9/12撮影時にはマスクと手袋を着用し、通行人との距離を保った。写真はワン・ワールドトレードセンター。PHOTOGRAPH BY NATAN DVIR 10/12撮影中、ドヴィルはニューヨーカーの行動に変化を感じた。普段は他人と目を合わせない人が多いが、すれ違った人の多くが笑顔を向けたりうなずいてみせたりし、困難をともにしていることを確かめあうかのようだったという。写真は911メモリアルミュージアム。PHOTOGRAPH BY NATAN DVIR 11/12パストレインのワールドトレードセンター駅を撮影したパノラマ写真。人の姿はまばらで、ニューヨークから公的な生活が突然消えたことを示している。PHOTOGRAPH BY NATAN DVIR 12/12グランドセントラル駅のメインホールはニューヨークでも指折りの美しいスポットだ。しかし、街全体が封鎖され旅行や観光がストップしたいま、訪れる人の姿はほとんどない。PHOTOGRAPH BY NATAN DVIR

写真家のナタン・ドヴィルは3月のある夜、人が消えたニューヨークの5番街にたたずんで涙をこらえていた。

「人の姿が消えたニューヨーク:ロックダウン下の街をとらえた12枚のパノラマ写真」の写真・リンク付きの記事はこちら

ショッピングの中心地であるこの通りは、2008年にこの街にやって来たドヴィルが最初に撮影プロジェクトの被写体に選んだエリアだった。そんな思い出の場所は、いまや街全体のロックダウン(都市封鎖)によってまるでゴーストタウンと化し、ブティックも土産物店もみなシャッターを下ろしていた。

ドヴィルは11年暮らしたニューヨークを離れ、故郷イスラエルのテルアヴィヴへと発つ日を翌日に控えていた。帰国は数カ月前から計画していたが、パンデミックの影響で前倒しになっていたのだ。

「5番街に立っていると胸がいっぱいになってきました。あの場所で撮ってきたすべての写真が目に浮かびました」と、ドヴィルは振り返る。「とにかく両手をしっかり安定させてシャッターを切ろうとしていました」

ニューヨークに別れを告げるプロジェクト

ドヴィルは5番街を切り取ったパノラマ写真を「iPhone X」で撮った。イスラエルへの帰国を前にニューヨークでの最後の日々を記録した作品「The Last Walks」の1枚だ。

新型コロナウイルスの感染拡大の“中心地”となったニューヨークでは、ピーク時には1日の死者数が連日700人を超えていた。そんなパンデミックのさなかに街を離れなければならないという現実が、ニューヨークに別れを告げる最後のプロジェクトをさらに胸に迫るものにした。

ドヴィルは3月21日の出発を前に数日かけて街へ出かけ、お気に入りの場所をカメラに収めて回った。ブライアント・パーク、新ワールドトレードセンターの「オキュラス」、ブルックリン橋、グランドセントラル駅などだ。

どの通りも人の姿はまばらだったが、それでも用心して対策をとった。マスクをし、使い捨て手袋をたびたび取り換え、人との距離を6フィート(1.8m)以上開けた。地下鉄には乗らず、徒歩かタクシーを使った。

人とのつながりを求めて

通りでたまに人とすれ違ううちに、ドヴィルはいつもと違うことに気づいた。ニューヨーカーは普段、基本的に他者には干渉しない(ドヴィルはこの「他者に関心を向けないニューヨーカー」をテーマにしたシリーズ作品「Platforms」も発表している)。ところが、すれ違う人が何人も、明らかに目を合わせてきたのだ。

「みんな、何らかの人とのつながりを求めている気がしました。互いに笑顔を向けあっていた感じです。みんなが同じ状況をともにする仲間であるかのように」

気に入っている写真のひとつが、グランドセントラル駅の外で撮った1枚だという。非常事態のなか、ホットドッグの屋台が夜の通りにぽつんと立っている。

「これがわたしにとってのニューヨークです」とドヴィルは言う。「パンデミックのときでも、ホットドッグスタンドはそこにある。いつものホットドッグスタンドがあちこちにね」