千葉時代はオシム監督にプロフェッショナリズムを叩き込まれた羽生。写真:Jリーグフォト

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 元日本代表で現在FC東京のクラブナビゲーターを務める羽生直剛にとって、人生の恩師と呼べるのがイビチャ・オシムだ。羽生がジェフユナイテッド千葉でプレーしていた頃、「生き様というか、すべてを教わった人」である。

 羽生がなにより格好いいと思ったのは「監督としての腹の括り方」だ。

「千葉時代、キャプテンの阿部(勇樹)がオシムさんに『休みをください』とお願いしたことがあったんです。それまで3か月も休みがなかったので、チームの代表として阿部が行った感じだったんですけど、オシムさんの答は『それはお前が監督になってからやれ』だった。『今は私がボスだから、従ってもらう。ただし、結果が出なかったらすべて私の責任だ』と言われたそうで、これを聞いて素直に凄いなと」

 ど同時に、羽生はこう思ったという。

「これが真のプロ。自分もそういう生き方をして、プロの選手になりたい。そういう人間になりたい」

 プロとして信念を貫く大切さをオシムから学んだ羽生がそこから急成長し、日本代表にまで選ばれることになるとは、本人も想像していなかったらしい。現役を引退しても、羽生はどこかでオシムを意識している。

「なんかチャレンジする姿を見せなきゃ、オシムさんに会わす顔がない」
 
 尊敬できる“上司”に出会えることは幸運である。羽生もオシムのような指導者に出会えて、羽生もさぞ幸せなのだろうと思いきや、意外な答が返ってきた。

「僕の中でオシムさんこそ真の指導者。オシムさんが偉大すぎて、自分がそういう仕事をできない。幸せだと思うんですが、一方で本当に幸せだったのか、もしかしたら会わないほうがよかったんじゃないかとすら思う。会ってなければ、自分ももう少し緩くというか、心にゆとりのある生活ができたかもしれません(笑)」

 ただ、オシムという最高の上司と出会って、自分の限界値を高めることはできたはずだ。現状に満足せず、前進あるのみ。オシムとの時間がなければ、そうしたポジティブなスタンスになれなかった可能性はある。

「お前はチャレンジしているのかと問い続ける、そういう生活スタイルになっていますよね。メンタルの部分も含め、ガラリと変えてくれた人ですね、オシムさんは」

 笑顔でそう話す羽生。ひとつ確かなことは、オシムとの出会いによって、羽生直剛という人間の深みは間違いなく増した。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
    
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