オーテク初のノイキャン完全無線イヤホンは税込約2.8万円に。5月29日発売

「オーテク」の愛称で知られるオーディオ機器メーカーのオーディオテクニカが、完全無線イヤホン『ATH-ANC300TW』を5月29日に発売します。価格はオープンプライスですが、すでにAmazon.co.jpやヨドバシ.comでは2万7280円(税込)で予約を受け付けています。

本機は、「QuietPoint」のシリーズ名が付けられたアクティブノイズキャンセル(ANC)搭載モデル。1月のCES 2020にて欧米市場向けに発表されていた製品ですが、満を持しての日本版投入となった格好です。

CES発表時の記事:

オーテク初のノイズキャンセルつき完全無線イヤホン「ATH-ANC300TW」発表(2020年1月)

特徴は、「オーディオテクニカの完全無線イヤホンとしては」初のANC搭載製品である点(なお同社は、ヘッドホンやネックバンド式ワイヤレスにおいては古くからANC搭載モデルを発売しているため、「オーテク初」というわけではありません)。

▲1ユニットあたり2基のマイクを備えます

注目のANCシステムは、シリーズと同じQuietPoint名を冠した、いわゆるハイブリッドデジタル式。

耳の近くに配された音導管内にフィードバックマイクロホンを、屋外側に配されたハウジングにはフィードフォワードマイクロホンを搭載。両者を合わせて使うことで強力かつ自然なANC性能が発揮できる、高級モデルでのトレンドとなっているタイプです。

▲耳側のマイクはドライバー(発音体)から耳までの間に位置。効果的にノイズキャンセリングを行なうためのレイアウトです

さらに、オーテクが独自開発したノイズフィルター設計なども導入することで、ノイズキャンセル性能を最大限に高めつつも、違和感を感じることなく自然に雑音が低減される静寂空間を創出する、とアピールします。

また、フィードバックマイクの配置は対ノイズ性能に有利な音導管上。さらに垂直に配置することで、ドライバー(発音ユニット)から出た音を防いでしまう危険性も排除したレイアウトとなっています。

▲専用スマホアプリ『Connect』では、ノイズキャンセリングのパターンなどが選択可能です

また、やはり昨今のトレンドとなっている、純正スマートフォンアプリでの設定機能も対応。『Connect』と名付けられたアプリから、ノイズキャンセル効果3種(航空機向け/外出時向け/オフィスや図書館向け)などを選択可能です。

昨今のANC搭載イヤホンでは当たり前となりつつある、周囲の音を確認できる外音取り込み機能も『クイックヒアスルー』として搭載します。

▲耳から見える位置に、オーテクロゴが描かれたデザイン

隠れた特徴としては、Bluetooth制御チップにクアルコム製品を採用する点を明記しているところが挙げられます。

実は完全無線イヤホン(TWS)では、明示していないもののBluetoothチップはクアルコム製というモデルが多くあります。しかし大手オーディオメーカーの製品で、かつここまでの高級機でありながら採用を明示しているモデルは、現状では多くはありません。

これにより、低遅延な左右独立信号伝送モード『Qualcomm TrueWireless Stereo Plus』(TWS Plus)にも対応。スマートフォン側がTWS Plus対応機種(Snapdragon 855搭載機のうち、ファームウェアも対応したモデル)であれば、伝送レベルの遅延低減や、実動時のバッテリー駆動時間延長などに効果を発揮します。

なおTWS Plus対応機種としては、シャープのAQUOS R3やソニーモバイルのXperia 1/5などが代表的です。

もちろんBluetoothコーデックには、クアルコムのお家芸たる『aptX』にも対応。ただしaptX HDやaptX Adaptiveには対応しません。AACとSBCもサポートします。なおBluetoothバージョンは5.0。

さらに隠れたポイントとして、公式紹介ページで「Connectアプリでコーデックの切り替えなども可能」と記載されているのが目を惹きます。

本機種はaptX対応モデルなので、ホスト側が対応する限りはほとんどの局面でaptXが使われると思われますが、明示的に切り替えが可能なのは興味深いところでしょう。

さらに内蔵マイクでの通話時には、マイク側のノイズキャンセリングとなる「クアルコム cVc(Clear Voice Capture)テクノロジー」が使用され、周囲の暗騒音を低減してクリアな通話をとします。

▲オーテクロゴの天面側には、いわゆるマルチファンクションボタンを備えます。物理ボタンなのがオーテクらしいところやも

イヤホンの基本となるドライバーは本機に合わせた新設計。ポイントは直径5.8mmと、昨今の高級機としてはかなり小口径な点です。これはマイクの入った音導管など、ANC搭載モデルならではの事情に合わせた調整と思われます。

一方で振動板には、分割振動や共振を効果的に防止すべく、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングを実施。これは同社製イヤホンの上位モデル『ATH-CM2000Ti』『ATH-CK2000Ti』にも搭載された技術です(両機種とも、実売価格は5万円台という超高級機)。

こうした高級機にも使われる振動板素材により「音楽を、収録された音の通りに再生できる」とアピール。「全帯域に渡り広大な音場とともに、深い静寂の中でボーカルや楽器の繊細な音色をお楽しみいただけます」と謳います。

▲ケースはバッテリー搭載ながらかなりコンパクト。重量も50g(本体はそれぞれ7g)と軽めです

ただし、昨今の情勢では比較的弱点となりそうなのがバッテリー駆動時間。ANCが高度であり、信号処理能力(と電力)が必要なためか、イヤホン単体では最大約4.5時間と、オーディオ機器メーカーの現行世代としては控えめ。充電ケースとの併用でも最大約18時間と、こちらも現行モデルとしては長くはない印象です。

反面、本体とケースの重量は比較的軽めで、大きさもこのクラスとしては小さめのため、携帯性に優れる点はメリットでしょう(イヤホン本体が両方とも約7g、充電ケースが約50g)。

また充電時間は、公称で約2.5時間。かつ10分の充電で約1時間の再生が可能となっています。加えて充電端子はもちろんUSB Type-Cとなっており、こうした使い勝手を重視するあたりはさすがのオーテクと呼べそうです。

もう一つのポイントとなるのが、本体がIPX2相当の防滴仕様となっている点。製品を15度傾けた状態で、上から落ちる水滴に対して保護される仕様なので、多少の水滴であれば耐える水準です。

▲イヤーピースには専用に調整されたコンプライ製バージョンも付属。音質や装着感の違いを追加コストなしでだけで楽しめます(沼の入り口やもしれませんが)。

そしてイヤーピースは4種類の大きさ(XS/S/M/Lサイズ)に加えて、低反発ポリウレタン系の雄だるCOMPLY(コンプライ)フォームイヤーピース(Mサイズ)も付属。装着感や遮音性能に合わせて柔軟に試せます。このあたりもオーテクらしいところでしょう。

オーディオ機器としての基本的な仕様は、出力音圧レベルは106dB/mW、ドライバー側の再生周波数帯域は20〜25kHz(ただしBluetooth部は20〜20kHz)、インピーダンスは14Ωなど。

……といっても本機は有線接続不可能なので、ドライバー側の特性表記にはほぼ意味がないと思われますが、こうした仕様もしっかり公開するところもオーディオテクニカらしいところです。

▲メーカー公式ページには、「カフェにて(おそらくワコムのペンタブレットPCで)ドローイング作業をするユーザー」という使用例写真も(……客層をよく理解っていらっしゃる……!!)

このようにATH-ANC300TWは、世界的なヘッドホン・イヤホンメーカーの一大製品だけあり、ドライバーユニットの新開発や豊富なイヤーピース、そしてANCやコーデックの明示的選択機能など、ユニークかつオーテクファンにとっては“らしい”特徴を備えたイヤホン。

既に試聴したレビューアなどからの音質的な評価も良好なことから、ANC搭載TWSイヤホンの市場を活性化してくれる存在となることは間違いなさそうです。

Source:オーディオテクニカ 製品公式ページ

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