ミシン、「あつ森」も…コロナ禍でも収益を伸ばした意外な企業

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「マスクを手づくりしようと思って久々にミシンを出したんですが、古いから壊れてしまって。新品を買いに行ったら、売り切れていて店に1台もなかったんです!」

60代の主婦がそう嘆く。その後インターネットでの購入も検討したが、ネット上でも品切れが続いていて、1カ月近くたった現在も購入できていないという。

家庭用ミシンの国内トップメーカーである蛇の目ミシン工業の広報担当者はこう語る。

「3月までの弊社のミシン売上げ台数は前年比15〜20%ほど増加しています。そのために、一部在庫が追いつかない機種もあるほどです。外出自粛中の家での過ごし方として、ミシンで服をつくる方が増えていると考えています」

新型コロナウイルスの影響で、わたしたちの消費活動に大きな変化が起こっているーー。

コロナに関連する経営破綻は5月19日時点で全国で166件(東京商工リサーチ発表)。外出自粛などの影響を受けて、多くの会社が減収減益を余儀なくされているが、それでもこの状況だからこそ売上げが急伸した商品、また収益が伸びている企業もあるのだ。コロナ禍でも増収増益の主な企業は次のとおり。

【ユニ・チャーム】純利益の伸び具合:前年同期比51.3%増(’20年1〜3月期連結決算)

国内でマスクやウエットティッシュの特需が発生したほか、海外で生理用品などの備蓄意識が高まったため

【ライオン】純利益の伸び具合:前年同期比3.9%増(’20年1〜3月期連結決算)

ハンドソープやボディソープなどのビューティケア分野の売り上げが前年同期比47.5%増。洗剤も売れた。

【日清食品ホールディングス】純利益の伸び具合:前期比51%増(過去最高益)

外出を控え家で過ごす人が増えてカップ麺の売り上げが増加。中国など海外でも同じようにカップ麺が伸びた。

【キッコーマン】純利益の伸び具合:前期比2.3%増(過去最高益)

手軽に調理できる具材調味料「うちのごはん」や、つゆ類やたれ類、豆乳飲料などの売り上げが好調だった。

【日清製粉グループ】純利益の伸び具合:前期比0.6%増

家庭用小麦粉の需要が増大している(ただし大幅増収の主な要因は、海外の小麦粉事業会社の買収など)。

【任天堂】純利益の伸び具合:前期比33.3%増

3月発売『あつまれ どうぶつの森』が1,177万本を記録。Nintendo Switchソフト史上最大の滑り出し。

【NEC】純利益の伸び具合:前期比2.5%増(過去最高益)

主因は企業などのIT投資が旺盛だったためだが、在宅勤務の増加でパソコン販売が伸びたこともプラスに。

「わかりやすいのは、感染対策品を取り扱う企業でしょう。マスクや除菌用ウエットティッシュの売り上げが伸びたユニ・チャームや、ハンドソープなどに大きな需要があったライオンは増収増益でした。ほかにも、外出自粛で家での食事が増えたことで、食品業界は好調です。日清食品ホールディングスやキッコーマンは過去最高益を更新しています」(全国紙記者)

飲食店と消費者をつなぐデリバリーサイトを運営する出前館も、外出自粛の影響で需要が増えた企業の1つだ。

「弊社サイトへの4月のオーダー数は昨年比で50%以上の増加です。また現在、多くの飲食店さまから出前館への出店に関するお問い合わせをいただいており、弊社では人員を増員して対応を行っております」(出前館広報担当者)

調達・購買業務コンサルタントで未来調達研究所取締役の坂口孝則さんは、コロナ禍で伸びている商品や企業について「第一に、やはり“巣ごもり需要”」と話す。

「在宅ワークに必要なパソコンやテレビ会議用のWebカメラが売れています。また、任天堂の『あつまれ どうぶつの森』などのゲームも大ヒットしています」

ゲームなどの娯楽品について特定の傾向があると坂口さんは言う。

「親御さんが子どもたちと一緒に楽しめるものが売れているんです。『あつまれ どうぶつの森』も、子どもたちだけでなく、お父さん、お母さんもやっています。一見子ども向けのように見えて、親も遊べるものが人気のようですね」

「女性自身」2020年6月9日号 掲載