アフターコロナを見据えたICT教育体制を! モバイル通信各社のU25優遇施策から近未来の通信サービスを考察する
●モバイル通信各社によるU25優遇施策の現状
5月25日、すべての都道府県で新型コロナウイルス感染症問題(以下、コロナ禍)を受けた緊急事態宣言の解除が行われました。
企業活動や学校などの再開も徐々に進むものと思われますが、コロナ禍そのものが過ぎ去ったわけではなく、依然として外出の自粛や店舗営業などもまだまだ慎重な対応が求められる状況です。
そのような中、モバイル通信各社も企業によるテレワークや遠隔営業へのサポート強化とともに、学校に通う子どもたちへの支援と遠隔授業のサポートを目的とした、期間限定によるU25(25歳以下)優遇施策を打ち出してきました。
その多くは、
・契約データ容量の増量
・契約プランの割引
・追加容量オプションの一定量無償化
・通信速度制限時の最低通信速度の増速
こういったものです。
各施策は移動体通信事業者(MNO)、仮想移動体通信事業者(MVNO)を問わず、ほぼすべての通信事業者より実施されています。
これらの施策は当初、5月6日までとされていたものがほとんどでしたが、緊急事態宣言の延長を受けて6月末日まで延長する企業が多く見られます。
「アフターコロナ」の社会に対して具体的な施策を求められる時期に差し掛かる中、子どもたちの教育と健全育成に対し、モバイル通信業界が担うべき役割とは一体何でしょうか。
そして今後どうあるべきなのでしょうか。
KDDIのauブランドによるU25施策
●モバイル通信が遠隔教育の主体となる可能性がある
総務省が公開している「情報通信白書 令和元年版」によれば、固定回線の契約件数は2018年度末で約4025万件となっています。
また別資料によれば、日本の総世帯数は平成31年1月1日現在で約5852万人となっていることから、固定回線の普及率は7割弱程度に留まっていることになります(調査時期が一致しないため厳密な数値は出せない)。
コロナ禍によって学校の遠隔授業の必要性が大きく叫ばれていますが、その実現には学校の教育プログラムのICT化が必要である一方、各家庭での通信環境の整備もまた重要になります。
固定回線契約数も安定した増加を見せていますが、モバイル回線はそれ以上の目覚ましい普及を遂げ、2018年度末でLTEだけでも約1億3664万契約に達しています。
日本人の総人口すらも超える契約へと広がり、小中学生でもスマートフォンを持つ時代となった今、家庭側の遠隔授業を受ける体制において、モバイル回線が受け持つ役割は非常に大きくなっていると考えられます。
「情報通信白書 令和元年版」より引用
モバイル通信およびそのデバイスを遠隔教育の中心に据えるメリットはいくつもあります。
・場所を問わず教育を受けられる(安全の確保)
・固定回線からタブレット端末などを使う場合はWi-Fiルーターを必要とするため、それなりの知識が必要だが、モバイル回線ではその手間と知識が不要(導入の簡便性)
・タブレットやスマートフォンはカメラやマイク機能を標準で搭載しているため、遠隔教育に必要な環境が整っている(追加投資が不要、家庭ごとの環境の格差が比較的小さい)
・回線工事にかかる時間や設備の設置が不要(準備期間の短縮)
これらを考慮すると、現在モバイル通信各社が行っているU25施策は、アフターコロナの社会において恒久性を持たせることも必要になるかもしれません。
レノボが3月に発表した、GIGAスクール構想向けソリューションのプレゼンより。より自由な教育姿勢が求められる時代がやってくる
●U25向けサービスの拡大と恒久化を願う
政府は当初、「1人1台」の通信端末と高速・大容量の通信ネットワークを一体化したICT教育プログラム「GIGAスクール構想」を2023年度までに整備するとしていましたが、コロナ禍を受けて前倒しで計画を進めていくと発表しています。
その内容も、単なる学校内での授業のICT化だけではなく、在宅オンライン学習や遠隔授業全般を取り込んだものへと変化しつつあります。
モバイル通信の側面から見ても、3月末より第5世代移動通信システム「5G」が始まり、固定回線の代用にもなり得る高速・大容量なモバイル通信回線が普及しつつあります。
5Gはコンシューマー分野ではそのメリットをアピールしづらく、BtoBに適したソリューションであると言われることもありますが、ICT教育は非常に適した用途・分野になる可能性があります。
また、モバイル通信料金の低廉化が叫ばれ続ける中、それでもU25向けの料金プランは以前から比較的安価で契約しやすい料金として好評でした。
その上で、さらに現在のような緩和施策やサービスの拡大が続くようになれば、家庭においても「まずは学生向けプランを契約して子どもたちの教育に使う」といった慣習が根付くかもしれません。
度重なる延長が行われたU25優遇施策だが、願わくば恒久的なサービスへと昇華していただきたい
アフターコロナの社会では、それ以前の生活へと戻ることではなく、新たな生活様式や経済活動へと変化していくことが求められています。
大人たちがリモートワークや在宅業務の定着を目指すように、子どもたちもまた新たな教育体制へ順応し、学習姿勢を変化させていく必要があります。
モバイル通信各社には、その変革への助力を行える企業であって欲しいと願うばかりです。
執筆 秋吉 健
5月25日、すべての都道府県で新型コロナウイルス感染症問題(以下、コロナ禍)を受けた緊急事態宣言の解除が行われました。
企業活動や学校などの再開も徐々に進むものと思われますが、コロナ禍そのものが過ぎ去ったわけではなく、依然として外出の自粛や店舗営業などもまだまだ慎重な対応が求められる状況です。
そのような中、モバイル通信各社も企業によるテレワークや遠隔営業へのサポート強化とともに、学校に通う子どもたちへの支援と遠隔授業のサポートを目的とした、期間限定によるU25(25歳以下)優遇施策を打ち出してきました。
その多くは、
・契約データ容量の増量
・契約プランの割引
・追加容量オプションの一定量無償化
・通信速度制限時の最低通信速度の増速
こういったものです。
各施策は移動体通信事業者(MNO)、仮想移動体通信事業者(MVNO)を問わず、ほぼすべての通信事業者より実施されています。
これらの施策は当初、5月6日までとされていたものがほとんどでしたが、緊急事態宣言の延長を受けて6月末日まで延長する企業が多く見られます。
「アフターコロナ」の社会に対して具体的な施策を求められる時期に差し掛かる中、子どもたちの教育と健全育成に対し、モバイル通信業界が担うべき役割とは一体何でしょうか。
そして今後どうあるべきなのでしょうか。
KDDIのauブランドによるU25施策
●モバイル通信が遠隔教育の主体となる可能性がある
総務省が公開している「情報通信白書 令和元年版」によれば、固定回線の契約件数は2018年度末で約4025万件となっています。
また別資料によれば、日本の総世帯数は平成31年1月1日現在で約5852万人となっていることから、固定回線の普及率は7割弱程度に留まっていることになります(調査時期が一致しないため厳密な数値は出せない)。
コロナ禍によって学校の遠隔授業の必要性が大きく叫ばれていますが、その実現には学校の教育プログラムのICT化が必要である一方、各家庭での通信環境の整備もまた重要になります。
固定回線契約数も安定した増加を見せていますが、モバイル回線はそれ以上の目覚ましい普及を遂げ、2018年度末でLTEだけでも約1億3664万契約に達しています。
日本人の総人口すらも超える契約へと広がり、小中学生でもスマートフォンを持つ時代となった今、家庭側の遠隔授業を受ける体制において、モバイル回線が受け持つ役割は非常に大きくなっていると考えられます。
「情報通信白書 令和元年版」より引用
モバイル通信およびそのデバイスを遠隔教育の中心に据えるメリットはいくつもあります。
・場所を問わず教育を受けられる(安全の確保)
・固定回線からタブレット端末などを使う場合はWi-Fiルーターを必要とするため、それなりの知識が必要だが、モバイル回線ではその手間と知識が不要(導入の簡便性)
・タブレットやスマートフォンはカメラやマイク機能を標準で搭載しているため、遠隔教育に必要な環境が整っている(追加投資が不要、家庭ごとの環境の格差が比較的小さい)
・回線工事にかかる時間や設備の設置が不要(準備期間の短縮)
これらを考慮すると、現在モバイル通信各社が行っているU25施策は、アフターコロナの社会において恒久性を持たせることも必要になるかもしれません。
レノボが3月に発表した、GIGAスクール構想向けソリューションのプレゼンより。より自由な教育姿勢が求められる時代がやってくる
●U25向けサービスの拡大と恒久化を願う
政府は当初、「1人1台」の通信端末と高速・大容量の通信ネットワークを一体化したICT教育プログラム「GIGAスクール構想」を2023年度までに整備するとしていましたが、コロナ禍を受けて前倒しで計画を進めていくと発表しています。
その内容も、単なる学校内での授業のICT化だけではなく、在宅オンライン学習や遠隔授業全般を取り込んだものへと変化しつつあります。
モバイル通信の側面から見ても、3月末より第5世代移動通信システム「5G」が始まり、固定回線の代用にもなり得る高速・大容量なモバイル通信回線が普及しつつあります。
5Gはコンシューマー分野ではそのメリットをアピールしづらく、BtoBに適したソリューションであると言われることもありますが、ICT教育は非常に適した用途・分野になる可能性があります。
また、モバイル通信料金の低廉化が叫ばれ続ける中、それでもU25向けの料金プランは以前から比較的安価で契約しやすい料金として好評でした。
その上で、さらに現在のような緩和施策やサービスの拡大が続くようになれば、家庭においても「まずは学生向けプランを契約して子どもたちの教育に使う」といった慣習が根付くかもしれません。
度重なる延長が行われたU25優遇施策だが、願わくば恒久的なサービスへと昇華していただきたい
アフターコロナの社会では、それ以前の生活へと戻ることではなく、新たな生活様式や経済活動へと変化していくことが求められています。
大人たちがリモートワークや在宅業務の定着を目指すように、子どもたちもまた新たな教育体制へ順応し、学習姿勢を変化させていく必要があります。
モバイル通信各社には、その変革への助力を行える企業であって欲しいと願うばかりです。
執筆 秋吉 健