僕がプロ1年目の2002シーズン、多くの決定機を外してしまい“裏得点王”なんて呼ばれていたんですよね。ようやく初ゴールが生まれたのは、11月の浦和戦。その時、ベンチの前で一番喜んでくれたのが勇人だったんです。普通なら「アイツ、ゴール決めていいなあ」って羨ましがるところを、勇人はまるで自分のことのように喜んでくれた。仲間想いの選手です。

 勇人以上に決定力が高かったのは阿部(勇樹)。2005年シーズンのJ1で12ゴール、翌シーズンは11ゴールですからね、凄いです。一緒にやっていて感じたのは責任感です。「俺は若いうちからキャプテンを任されている。ならば結果で示すしかない」というような気持ちがプレーから伝わってきました。僕が16年間プロとしてやったなかでも、1、2を争うレベルの選手と言っても過言ではありません。

 イリアン(ストヤノフ)はリベロとして最高峰。彼を最終ラインの真ん中に置きたかったので、3−5−2システムにしました。それぐらい影響力のある選手でしたよ。リベロとしての能力がとにかく高くて、この前、巻(誠一郎)の引退試合で一緒にプレーした時も上手かった(笑)。ボールの持ちだし方、予測が完璧で、技術は嘘をつかないんだなと、それを改めて痛感させられました。美しいサッカーを実践するうえで、「リベロのイリアン」は不可欠な存在です。
 
 イリアンと同じく森重(真人)と今ちゃん(今野泰幸)は後方でボールを捌く技術が抜群。今ちゃんで覚えているのが、1対1で対峙した時の衝撃。今ちゃんの距離感になったらまず逃げられない。「掴まれた」って感覚です。どんなに揺さぶってもついてくるし、間合いの詰め方、球際の強さは尋常ではなかったです。相手に“やばい”と思わせる空気感を持っていますよ。

 GKはゴンちゃん(権田修一)。彼と出会うまではプロのGKは大差ないと思っていたんですよ。でも、ゴンちゃんは1対1になってもよく止める。最悪でも勝点1をもぎとってくれるGKだなと。やられたと思っても、止めてくれるんですよね。シュートを決められたら自分の責任と割り切っているところも凄い。絶対に阻止できないシュートに対しても、「どうやったらあれをセーブできるか」って自問自答していましたから。貪欲ですよね。川口(能活)選手や楢粼(正剛)選手と比較しても、能力的に全然引けを取らない。間違いなく日本を代表する守護神です。

 監督は(イビチャ・)オシムさん。ひと言では片づけられないくらい、感謝しています。プロがなんたるかを教えてくれた恩人です。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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