3歳牡馬クラシックの第1弾、GI皐月賞(4月19日/中山・芝2000m)を堂々たる”横綱相撲”で勝ったあと、コントレイル(牡3歳)の陣営から、こんな声が漏れてきたという。


皐月賞を制したコントレイル。ダービーで二冠達成なるか

「あの勝利は、2つの点でよかった」

 ひとつは、言うまでもなく、勝ったことだ。

 もうひとつは、次なるGI日本ダービー(5月31日/東京・芝2400m)の前に、「課題が見つかった」ことだそうだ。

 レース後、主戦の福永祐一騎手も公言していたように、皐月賞は、陣営が事前に思い描いたレースプランどおりの競馬ではなかった。

 何より誤算だったのは、スタート後、とくに後手を踏んだわけではないのに、コントレイルは自ら進んで前に行こうとしなかった。そのため、後方からの競馬になったことだ。

 コントレイルが得意とする戦法は、いわゆる”好位抜け出し”。デビューから3戦はすべてその形で快勝し、皐月賞のような、後方で待機する競馬は一度もしたことがなかった。

 普段はやんちゃで、レースになると行く気を前面に出す。ゆえに、陣営はこれまで、その前向きな気性をいかにコントロールするかに、最大の注意を払ってきた。

 ところが、皐月賞のレース前、コントレイルはパドックでも、返し馬でも、妙に落ち着いていた。陣営は当初、それは「いいことだ」と思っていたが、レースがスタートした瞬間、それは「間違いだ」と気づいた。

 よくよく考えてみれば、コントレイルの落ち着きは、いわゆる「スイッチが入っていない」状態に過ぎなかった。つまり、皐月賞ではコントレイルの気持ちが戦闘モードに入る前に、ゲートが開き、レースが始まってしまったのだ。

 それでも、コントレイルはそうした”誤算”などなかったかのように、圧巻の競馬で勝利した。見る側からすれば、新たな強みを見せつけられて、ダービーへの期待が一段と膨らんだ。

 ただし、「陣営としては、『勝ったからいい』では済まされなかった」。そう語るのは、関西の競馬専門紙記者である。

「普通にスタートを切っても、前に行こうとしないことがある――それは、デビュー4戦目にして、コントレイルが初めて見せた、新しい一面でした。そして、『もしかするとこれが、次のダービーでは敗因になっていたかもしれない』と、陣営は捉えたわけです。なにしろ、ダービーが最大目標ですからね」

「でも……」と言って、専門紙記者はこう続けた。

「その最も重要な舞台を前にして、コントレイルを矯正すべき、新たな点が見つかった。そのことを、陣営は『よかった』と言ったわけです」

 競馬界最高峰の舞台となる日本ダービー。その大一番を前にして、課題が見つかったことは、コントレイル陣営にとって、このうえない”収穫”だったと言える。

 では、ダービーでの勝算はどうか。

 コントレイル自身、ダービーの2400mという距離は、本質的には適距離ではないかもしれない。だからといって、割引材料になるほどのことでもない。十分に守備範囲だ。

 とはいえ、例年ダービーには、この時期に目に見えて状態を上げてくる馬や、高い成長力を見せる馬がいる。また、2400m戦を「待ってました」とばかりに、秘めた能力を発揮してくる馬もいる。

 つまり、ダービーでは皐月賞以上に、ハイレベルなライバルが集う。

 そのライバルたちを蹴散らすためには、自らもレベルアップを図る必要がある。加えて、陣営としては「皐月賞のような競馬ではダメ」といった共通認識があり、新たに露呈した課題克服が重要になる。その点について、先述の専門紙記者が再び語る。

「後方一気の競馬は、見た目には”強い”という印象を残すかもしれませんが、実はリスクが多い。流れに左右されるし、脚を余して負けたり、取りこぼしたりすることがあるんです。ましてや、ダービーともなれば、みんな、目の色を変えてきますから、隙は見せられない。

 そこで、陣営は『ダービーでは、皐月賞のような競馬ではダメだ』と。やはり、コントレイル本来の”好位抜け出し”の競馬が、『ここでは絶対に必要だ』と考えているんです」

 そうして、コントレイルはこの中間、もう一段上のパワーアップを図ると同時に、入念なゲート練習を行なっている。もちろんそれは、皐月賞のようなことを起こさず、スタート後に好位置を取れるようにするためだ。

 皐月賞後、ダービーに向けての準備過程は順調に進んでいるようだ。東京コースに関しても、GIII東京スポーツ杯2歳S(11月16日/東京・芝1800m)で後続を5馬身もぶっちぎった舞台。相性はいい。

 ちなみに、先の専門紙記者によれば、東スポ杯2歳Sの時は「順調さを欠いていた」という。

「稽古の本数が足りなくて、陣営は負けることも覚悟していました。それが、あのパフォーマンスでしょ。そこから、陣営も『この馬はすごい!』となって、この馬に対する期待が一気に高まったんです」

 コントレイルの父は、昨年亡くなったディープインパクト。同産駒は、過去10年でダービーを5回も制しており、血統面での追い風もある。

 コントレイルが勝てば、2015年のドゥラメンテ以来、5年ぶりの「春の二冠馬」となる。そして、2005年のディープインパクト以来、15年ぶりの「無敗のダービー馬」となり、待ちに待ったディープ産駒初の牡馬クラシック二冠馬誕生となる。「運のいい馬が勝つ」と言われる日本ダービー。万全の態勢を整えつつあるコントレイルは、その”運”も引き寄せることができるのか。注目のゲートがまもなく開く。