「後悔がいっぱい」大坂なおみが内気な性格に悩んだ日々を告白

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大坂なおみ(日本/日清食品)にとって、グランドスラムでの2回の優勝、あっという間に世界ランキング1位に上り詰めたことは目が回るような経験だった。テニスツアーも中断し、今後の予定も決まっていないこの長期にわたる外出規制中に、22歳の彼女は自分の内面の敵と向き合っている。彼女が語った“後悔”を、CNNスポーツが伝えている。

「夜寝る前に後悔の気持ちがいっぱい押し寄せてくる。その大部分は、自分が思っていたことをちゃんと口に出さなかったことなの」と、ロサンゼルスの自宅のキッチンからインタビューに答えた大坂。


そのインタビューの前夜、2019年に初めて世界ランキング1位となり現在10位の彼女が、自分の魂と向き合う一連のツイートを投稿し、内面の苦悩を明かしていた。


大坂は、「もうシャイでいるのをやめるわ。本当に時間の無駄だから。もっと多くの考えを分かち合えていたはずなのに。もっと色々な世界の人たちと会話ができていたはずなのに。もっと多くの事を学べていたはずなのに。なのに、できていない。自分で狭めた限界の中にいる」と綴っていた。


大坂は自分の声を上げられない性格が、時に自分からチャンスを奪っていたと説明。「自分の意見を言っていい時がたくさんあったのに、私は黙ったまま、周囲に流されるままになっていたの、それが自分の好まない方向でも。もしそこで自分の意見を言っていたら、変えられていたことがあったかも知れないって、今は思ってる」


彼女の心の中に何度も何度も蘇って来る出来事は、実はテニスとは無関係な出来事だった。それは彼女の最大のアイドル、ジェイ・Zとビヨンセに会った時のことだった。


大坂は、2019年のオフシーズンに、このスーパースター同士のカップルに会うことができた。それはバハマのタークス・カイコス諸島でバケーション中のことだった。その時、彼女は“一文”もしゃべることができなかったのだ。


「彼から私に話しかけてくれたの。でも私は緊張しちゃって“一言返事”を繰り返し始めたの。そしたら彼が“君って内気なの?”って。それで、私が“うん…”って答えたら、会話はそこでぷっつり途切れてしまった」


ジェイ・Zとビヨンセは共に世界で成功しているミュージックアーティストだ。テニス界では世界的スターでも、二人の前に立った大坂は我々と全く同じ普通の人間で、大スターに会って息をのんでしまった。我々と違うのは、彼女には多分また彼らと会うチャンスがあるということだ。そしてその時には自分が何を話したいか分かっているだろう。


「私は、自分が感謝している人たちに、その気持ちを伝えるチャンスを逃したくないと思ったの」と大坂。「私はジェイ・Z とビヨンセに感謝を伝えたかった。私をやる気にさせてくれる音楽を作ってくれたことに感謝しているって。私の人生で、ビヨンセの歌う姿だけを何度も見てやる気を奮い立たせていた時期があったわ。今でも、昔のジェイ・Zの曲を聴いている。本当に素敵だから」


これまで自分を抑え、自分の意見を押し殺してきた日々から、大坂は随分と前進したと思っている。半分笑いながら思い出していたのは、プロとしてキャリアを始めた当時、トーナメント会場のロッカールームに入っていくのさえ心臓がドキドキして大変だったこと。


「私はすごくシャイで、何をしていいか、自分のバッグをどこに置いていいのかも分からないって感じだったわ。多分2、3年前の私だったら、すごくすごく内気で、インタビューでもきっと一言、二言しか話さなかったけど、でも今はちゃんと文章をしゃべってる!」


こんな風に自分を振り返る時間があるのは、新型コロナウイルスの感染拡大で世界がシャットダウンし、彼女のキャリアも止まっているからだ。普段なら、彼女がやっているのは「全米オープン」と「全豪オープン」を連続優勝した時の自分を振り返ることだっただろう。


だがテニスコートは使えず、ヒッティングパートナーもなく、練習する快適な状況にはない。大坂はこの時期を受け入れ、できる範囲で普段の生活に近づけるようにしている。


「やっぱり少し心配。でも他の選手達も多分私と同じ境遇にいると思っているわ。テニスのやり方を忘れちゃうっていう不安ではないの。今は、1日5時間練習するっていう気持ちにはなれない。燃え尽きちゃうのはよくないし、トーナメントがいつ再開するのかまだ全然分からないから」


2018年「全米オープン」と2019年「全豪オープン」で優勝した大坂は、自分を変えようと決めている。


「これからはもっと感謝の気持ちを持つと思う。同じようなことがいつまた起こるか分からない。テニスがしたくてたまらないわ。でもこの時期を、何か新しいことを学ぶため、自分を良くするために使いたいと思った。こんなに長い自由時間を持てることはもうないだろうから」


時は儚く過ぎ去る。大坂はその一日一日を大切にしようと思っている。


テニスデイリー編集部)


※写真は2020年「ブリズベン国際」での大坂なおみ
(Photo by Chris Hyde/Getty Images)