塗料の種類は高級車も大衆車も同じ

 高級車のひとつの条件として、ボディの表面がツルツル・テカテカで、深みのある色を長期間にわたってキープするというのがある。果たして、高級車の塗装と大衆車の塗装は何が違うのか?

 真っ先に考えられるのは、塗料の違い。高級車は塗料そのものが高品質の高級品なのではないかと思われるが、いまの新車専用の塗料、熱硬化性樹脂塗料は非常に優秀で、じつは高級車も大衆車も同じ塗料を使っている。

 では何が違うかというと下地と工程。

 メッキの良し悪しは下地で決まるというのは知られているが、塗装もまったく同じこと。高級車は、溶接、組み立てが終わったボディを、塗装する前に表面を研磨して、溶接の継ぎ目などもツライチに仕上げている。プレスの跡、切り返しの凹面も平滑に修正。

 これらの手間ひまがまず違う。

高級車のボディは塗膜が厚くなる!

 工程は、普通のクルマだと3工程。

 1.ホワイトボディをプライマリー塗料が貯まったプール(塗装漕)にクルマを浸し電着

 塗装(プライマリー塗装 ドブ漬け)→高温乾燥室で焼き付け

 2.中塗り→焼き付け

 3.上塗り→焼き付け

 このように3回塗って、3回焼き付けることを、3コート・3ベークという。

 メタリックカラーの場合は、上塗りのあと、クリアを塗ってから焼き付けるので、4コート・3ベーク。

 これが高級車になると、上塗りを二度に分けて重ね塗りをするので、4コート・4ベークになるので、塗膜が厚く、クオリティがアップする。

 超高級車になると、上塗りがさらに1回プラスされ、5コート・5ベークに!

 しかも、上塗りの途中で研磨加工を入れるという念の入れよう。徹底的に平滑度にこだわることで、高級車ならではの塗装の輝きと艶を出している。

 だから高級車と大衆車では、新車のときから輝きと深みが違うし、長期間使用したときの色の褪せ方にも差がつくというわけ。

 さらに、大衆車は屋外の駐車場で保管されるケースも多いが、高級車はシャッター&屋根付きのガレージに……。洗車の頻度も大きく違うはず。

 生まれも育ちも違う以上、色・艶の持ちが違うのはしょうがない。