「勝ち組」サラリーマンに募る危機感。大手ゼネコン、テレビ、広告…

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 新型コロナウイルスの感染拡大により、仕事をクビになったり、給与が大幅に下がり生活が立ち行かなくなったりする人が増加する中、普段は「勝ち組」と呼ばれるエリートサラリーマンたちもいよいよ「危機感」を感じ始めている。

◆管理部門に広がる焦燥

 都内の大手建設系シンクタンクでコンサルタントを務める藤吉豊さん(仮名・30代)は普段、建設物の立地や条件から、運営によって生まれる利益などを算出し「建設するための前提」に“GOサイン”を出すという中枢部署で業務を行なっている。

「全ての建設は、現場では私たちの判断に沿って動きます。作業員などはいくらでも代えがきくが、私たちの代わりはいない。そういう自負があったのは事実です」(藤吉さん、以下同)

 ところが4月に入り、大手ゼネコンなどが相次いで建設現場における「業務の一斉休止」を発表。藤吉さんの会社でも、ほぼ全ての建設現場で作業がストップすると、藤吉さんも次第に不安にかられるようになった。

「我々がいないと建つものも建たないと思っていましたが、そもそも現場がない、現場に人がいないとなると、手足をもがれたような状況に陥ることに、今さらながら気がつきました。我々と現場は一蓮托生、両輪なんです」

 コロナ明け、現場も案件も激減することは明らかで、現場作業員が切られたら、遅かれ早かれ藤吉さんの収入にも響いてくるはず。エリートの前に初めて立ちはだかる危機、というわけだ。

◆視聴率は堅調だけど

「数字は毎日かなり高い水準です。私がいる報道はいつにも増して激務、バラエティ番組などは再放送や再構成モノでもかなり視聴率はいい。家ごもりの方が増えて、多くの皆さんにテレビを見てもらっています」

 こう話すのは、都内の大手テレビ局に勤務する中堅の報道ディレクター・佐々木和昭さん(仮名・20代)。2月頃から「ネタはコロナ一色」と疲労を隠しきれないが、仕事がなくなる、仕事にあぶれるという危機感は持ち合わせていない。

 一方で対照的なのは、同じテレビ局でも広告営業部署に勤務する大原恭さん(仮名・40代)。制作陣とは違い、大きな危機感を抱いている。

「普通、視聴率が上がれば広告費も当然上がりますが、広告を出す企業がコロナの影響でダメージを受け、すでに広告費や宣伝費を大幅に削減する動きが出てきています。視聴率が上がったと小躍りする現場を尻目に、我々は頭を悩ませている」(大原さん、以下同)

◆負の連鎖は続く…

 大原さんが続ける。

「テレビは単に“見てもらえたらそれで良い”ということではありません。見てもらった上で、カネが動かないとテレビ局の収益はゼロになる。イベント部門でも、全ての予定がパーになり、全く仕事がない状況が続いています」(大原さん)

「広告」は普段、あってもなくても変わらないなどと思われがちだが、現代における「広告」は、人に何かを知らしめるという目的以上に「カネの流れ」を生み出すために必要不可欠なツールであることに、コロナ禍をきっかけに気がついた人も多いのかもしれない。

 大手広告代理店に勤務する宜保新一さん(仮名・40代)が沈痛な表情を浮かべる。

「テレビの広告枠も値段がどんどん下り、深夜帯だとタダ同然の価格でも売れない場合があり、テレビ局は自社の報道番組のCMを打って間を埋めている状況。人が動くところに必ずあるのが広告なんですが、人が動かないと広告は必要ない。

 身近なところで言えば、電車の中吊り広告など、ダイエットや植毛、老人ホームとお墓関連は辛うじて残っていますが、その他はほとんど鉄道会社の自社広告になっています。ネット上の広告費も下がっていて、盤石だと思っていた広告業界も雲行きが怪しい」(宜保さん)

 コロナ禍により、いち早く仕事がなくなり、生活が困窮した人々について「もともと負け組」「不安定な仕事をしていたからだ」と意地悪に指摘する声もあるが、当然、影響はそうした人々たちにだけふりかかるものではない。

 隣人が倒れれば、その影響は必ず自分自身にも訪れる。日常生活ではなかなか感じられることのなかった“常識”を、エリートたちも今、改めて噛み締めているのだ。<取材・文/山口準>

【山口準】
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。