リビアの首都トリポリで、航空防衛システムを配備するリビア国民統一政府(GNA)の部隊(2020年5月20日撮影)。(c)Mahmud TURKIA / AFP

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【AFP=時事】シリアでは内戦の停戦合意によってロシアが支援するアサド政権軍と、トルコが支援する反体制派の戦闘が減少している。しかしそれと入れ替わる形で、両国出身の傭兵たちは今度はリビアで戦闘を続けている。

 トルコは、シリアでは反体制派の一部を支援し、リビアでは国連(UN)の承認を受けた国民統一政府(GNA)を支援している。これに対しロシアは、シリアではバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領とその政権軍を支援し、リビアでは東部を拠点とする軍事組織を率いるハリファ・ハフタル(Khalifa Haftar)司令官を支援している。

 国連の最近の機密報告書によると、シリアの民間航空会社シャーム・ウィングス航空(Cham Wings Airline)が今年に入り、リビア行きの33便を運航したことが明らかになっている。これはシリア人の傭兵を輸送したと考えられている。

 リビアに科された武器禁輸措置を監視している国連の専門家らは、この報告書の中で「地上の情報源から推測すると、(ハフタル司令官の)作戦を支援するシリア人傭兵は2000人未満」と推測している。

 専門家らは、シャーム・ウィングス航空でリビアへ向かったシリア人らは、ロシアの民間軍事会社ワグネル(Wagner)との間で3か月の雇用契約を結んでいたとみている。同社はハフタル司令官側について戦闘に参加する傭兵の採用活動を行っていたとされる。一方、ロシア政府はリビアにおけるロシア人傭兵の存在を否定している。

 英オックスフォード大学(University of Oxford)研究者サミュエル・ラマニ(Samuel Ramani)氏は、シリアのアサド政権とリビアのハフタル司令官にはトルコという「共通の敵」がいるとAFPに指摘した。

 ラマニ氏によると、ロシアの狙いは「リビアでの戦闘を激化させることで、トルコに二つの戦線への対応を強いて戦力展開を間延びさせ、それによりシリアでのトルコの軍事作戦に対して、ロシアが優位に報復できると警告することにある」という。

 国連の専門家らは、リビアでGNAを支援するためにトルコに雇われた戦闘員を含め、最大5000人のシリア人傭兵がリビアにいる可能性があると指摘する。トルコはGNA支援要員を派遣したことを認めているが、人数については明確にしていない。

 一方で英国に拠点を置くシリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)は、トルコがリビアへ派遣したシリア人傭兵の数はさらに多く、約9000人と推計している。中には未成年者150人も含まれているという。

 シリア人権監視団のラミ・アブドルラフマン(Rami Abdul Rahman)代表は、リビアの首都南方の複数の前線への派遣を想定し、「さらに3300人の戦闘員がトルコの複数の軍事基地で訓練を受けている」と話す。

 また、同氏によると、これらのシリア人傭兵は同国北部イドリブ(Idlib)県の親トルコ派反体制組織による連合体「シリア国民軍(Syrian National Army)」に属しており、そのうち子ども兵士17人を含む298人がすでにリビアで死亡しているとの見方を示した。

 オックスフォード大学のラマニ氏は、シリア人傭兵の多くの動機は「貧困や失業、シリアの社会経済的喪失」からの逃避だと話す。ロシアが雇ったシリア人傭兵らは、リビアで民間軍事会社ワグネルと共に、ハフタル司令官側について戦闘に参加しているという。

 同じくハフタル司令官を支援するアラブ首長国連邦(UAE)は、スーダン人の傭兵を集めているという。諸外国によるリビアとシリアへの関与は、両国内での戦闘をそれぞれ激化させている。

【翻訳編集】AFPBB News

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