発売11カ月で世界200万部、そのうち4分の1が日本で売れている(2019年12月時点)『FACTFULNESS』。同書は、私たちの世界に関する「勘違い」を「10の本能」に分類している。今回、その10の本能を現代ニュースに絡めて紹介していく。第8回は「分断本能」だ――。(全10回)
▼分断本能
「世界は分断されている」という思い込み
「人は誰しも、さまざまな物事や人々を2つのグループに分けないと気がすまない」とロスリングは指摘する。これが分断本能だ。例えば「金持ち」と「貧乏」、「先進国」と「途上国」といった具合に、人は重なり合わない2つのグループを前提にものを考えたがる。だが多くの場合、多くの人はそのどちらでもない中間部分に位置している。この分断本能を抑えるためには、「大半の人はどこにいるか」という事実を認識すべきだという。

■多くの人々がトランプ支持者像を誤解している

ドナルド・トランプ米大統領の支持者というと、低所得・低学歴の白人男性で、自由貿易の犠牲者であり、現状に不満を抱える「嘆かわしい人々」というイメージがすっかり浸透している。リベラルな米国の大学・メディア関係の知識人層がトランプ支持者に前述のようなレッテルを貼ったのか、日本でも多くの人々がトランプ支持者像を誤解してしまっている。

写真=iStock.com/csfotoimages
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/csfotoimages

しかし、このイメージはトランプ支持者像とデータ上では必ずしも合致するものではない。「トランプ支持者=低所得・低学歴の白人男性」というデータは存在しない。むしろ同大統領を支える人々は実は多様な人々であることをご存じだろうか。

■強烈な言動から本質を見失ってしまった

米FOXが2020年4月に公表した調査によると、トランプ大統領の仕事ぶりを評価する人は、白人57%、アフリカ系19%、ヒスパニック系37%、と人種構成もまばらだ。この結果はトランプ大統領の経済手腕への評価が反映している。また、男性55%、女性44%から支持を得ており、やや男性からの支持が多いものの、女性からの支持も十分にある。年収5万ドル以上54%、同未満42%から評価されており、所得が高い人々からの評価が高い。

白人のみに限定した学歴でも大卒以上55%、高卒等58%の支持を得ており偏りは大きくない。16年の党内予備選挙時にトランプ氏が獲得した世論調査の数字の傾向とほぼ同じか、人種に関しては支持の幅が拡大した状態となっている。つまり、トランプ支持者の実像は共和党支持者という「小金持ちのやや保守的な傾向がある人たち」と大きな乖離はなく、実はほぼ一般的な共和党支持者たちと変わりがないのである。

トランプ大統領は、その強烈な言動のイメージから偏見を助長していると見られているが、広範な米国民から一定の評価を得ており、最も偏見にさらされているのは同大統領本人なのであろう。

ちなみに16年当時、民主党大統領候補のヒラリー・クリントンの勝利を予想し報道していたメディアは、大統領選挙の開票直後から「隠れトランプ」支持者が原因で予測が外れたという言い訳に飛びついたのだが、この隠れトランプの存在は米国政治の状況を丁寧に追っている人にとっては眉唾ものであり、現在では米国ではほとんど支持されない仮説だ。

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渡瀬 裕哉(わたせ・ゆうや)
早稲田大学招聘研究員
国内外のヘッジファンド・金融機関に対するトランプ政権分析のアドバイザー。
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(早稲田大学招聘研究員 渡瀬 裕哉)