「令和の花嫁修業」の中身とは

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花嫁修業という言葉、今は本当に聞かなくなりましたね。

けれど、もしかしたらお母さまやおばあさまなどに「花嫁修業をちゃんとしなさい」と言われたことがある人もいるかもしれません。

今日は令和版「花嫁修業」について、考えてみましょう。

■花嫁修業とは何か

今では女性が働くことは当たり前のことになっていますが、1985年に制定された「男女雇用機会均等法」が施行されるまで、「男性は仕事、女性は家庭」「男女とも、結婚して当たり前」と一般的に考えられていました。

ですから、女性は大学を卒業して就職したとしても、それは「家庭に入るまでの数年間」であり、男性のサポートしかさせてもらえませんでした。上流階級の家庭の場合、「お勤めすると、スレてしまう」と、仕事をすること自体にも否定的であったようです。

田辺聖子さんの『孤独なココア』(新潮社)に収められた短編を読むと雰囲気がよくつかめるのですが、当時の女性は25歳くらいになると、若い後輩に囲まれて、何となく肩身が狭くなって会社を辞めています。

それで会社を辞めて何をするかというと、花嫁修業なわけです。

今のようにコンビニもありませんし、家電製品も発達していませんから、家事は重労働だったことでしょう。料理はもちろん、洋裁和裁など、家の中のことは全て女性の仕事であり、いちいち男性の手を煩わせないのが“いい主婦”だったのです。加えて、たしなみとして華道や茶道を習う人もいました。

花嫁修業は家事の実践スキルを磨く意味もありますが、お見合いの際などに「私はいい妻になれます」とアピールするため、もしくは箔を付けるためにしていた部分もあるでしょう。

■現代の女性の花嫁修業とは

「男性は外で働き、女性は家で家事をする」という役割分担が正しいと信じられていた時代、「家のことが一人でできる女性」というのは、男性にとって魅力的だったと思います。

しかし、経済状況が悪化し、男性一人の収入で家族を養える人はごくわずかになっています。また、男女平等教育の浸透で、「オトコだからといって、なぜ女性を養わなくてはいけないのか」と考える男性も増えています。

現代は外食産業も発達していますし、コンビニもありますから、「家でなければ食事ができない」という時代ではありません。家電も発達していますし、家事を外注する人も増えています。

こうなると、「私は家の中のことは、全部できます」というアピールは婚活ではプラスにはあまりなりません。家事がお金で買える時代ですから、仕事をしてお金を稼ぐ女性の方が、男性にとってはメリットのある存在といえます。

つまり、現代の女性にとっての花嫁修業とは、仕事をすることだといえるでしょう。

■かつての「花嫁修業」をすることも無駄ではない

現代女性における花嫁修業が仕事であるなら、「結婚するため」に何かを習うことは、あまり意味がないと思えます。

しかし、生活に関わることで、ほんの少しでも興味のあることは、現代であっても習ってみたり、挑戦してみたりするのは悪くないでしょう。

◇かつての「花嫁修業」の習い事

☆料理

学校の家庭科で習って以来、包丁を持ったことがないという人もいるかもしれません。オムライスなど好きな料理を、自分の家で作れるというのは楽しいと思います。

お母さま母親に教わるのもいいと思いますが、料理教室ならプロが理論と実践面でしっかり教えてくれるでしょう。料理教室のメニューは、主菜と副菜二品というところが多いと思いますが、プロが考えたメニューですから、栄養のバランスが取れているという利点があります。

このメニューをレシピを見ないで作れるようになれば、一人で食べるときも、お友達や家族にも楽に振る舞うことができるでしょう。

☆華道

華道(やフラワーアレンジメント)も同じです。花が好きな人にとっては、家に花があるだけで、気持ちが晴れやかになることでしょう。

☆縫物

和裁や洋裁といった縫物は、無心になって針を動かすことが、ストレス解消につながるそうです。

家の中にいる時間が心地良い方が、疲れは取れます。それが仕事への活力にもつながります。

「自分は何が心地良いか」を考えてみて、興味のあるものに挑戦してみたらどうでしょうか。

◇習い事にはメリットがたくさんある

職場と家の往復だと、付き合う人は限られてしまいますが、習い事をすると全く違う職種の人や年齢の離れた人と出会えるかもしれません。

縁があれば、そこから何十年単位のお付き合いになることもありますし、そこから未来の夫を紹介されるという話も無い訳ではありません。

実際にいろいろな人と接して、世界を広げてみましょう。

◇とはいえ習い事アピールは慎重に

現代女性の真の「花嫁修業」は仕事とはいえ、まだまだ上記のような習い事は「花嫁修業」をイメージさせてしまうことがあります。

例えば、料理を習っているとしましょう。「料理に興味があるんだな」と解釈する人がほとんどでしょうが、「婚活対策」と取る女性もいるでしょうし、男性でも「いいお嫁さんになるアピール」と取る人もいます。

上下をつけないと気が済まない性格の女子や、男性にモテるほうが勝ちという価値観の女子に「料理を習っている」と話すと、どうしても「オトコ受けを狙っている」と解釈される確率は高くなるでしょう。

また、結婚しても家事をやる気がない、もしくは家事はオンナがやるものと考えている男性にとって「料理を習っている」は、「自分と結婚したいアピール」に思われるかもしれません。

反対に女性に経済的に依存されたくないと思っている男性の場合、「いい奥さんになれるアピールが重い」となる可能性もあります。

なので、曲解されたくないときは、人を選んで話した方がいいと思います。

■現代の女性に花嫁修業は必要なのか

かつての「花嫁修業」であった習い事は、現代においては、良い妻になれそうアピールになるという意味での「花嫁修業」とはなりません。

そしてさらにいえば、令和の時代に「結婚するために修業する」という考え方自体がナンセンスではないでしょうか。

皆さんの「結婚したい」という気持ちを、もちろん心から応援したいと思っています。しかし、皆さんは「男と女は結婚して一人前」の時代に生きているわけではありませんし、結婚するために生きているわけでもありません。

しっかりと仕事をし、自分にとって心地良いライフスタイルを確立する。花嫁になるための修業ではなく、人生修業をした結果、花嫁になってほしいと思います。

(仁科友里)

※画像はイメージです