ハリウッドで表面化したセクハラ問題をきっかけに、SNSなどで性暴力被害者に連帯する「#metoo」運動が拡大。それでも次々と報道されるセクハラ問題。最近、有名出版社の“天才”編集者が、ライターの女性にしつこく性交渉を迫っただけでなく、原稿料も支払わなかったという卑劣な事件が明るみに出ました。

業界人から受けた「タダ働き」の受難

お話を伺った東田明日香さん(32歳・仮名・無職)も、「私も同じような経験をしました」と言います。明日香さんは2年前まで、出版業界でフリーランスのライターとして働いていました。

「私が組んでいたのも、自分のことを“天才”と自称する30代後半の男性編集者です。多くのヒット企画を担当しており、『この人の言うことを聞いていれば、私の未来は開けるかもしれない』と頑張りました。その結果、1年近くタダ働きをさせられただけでなく、男女関係も許容してしまい、全てを支配されてしまったのです」

明日香さんはその時の経験が大きな原因となり、じんましんなど不調に悩まされ仕事を辞めています。現在は都内の実家で病気療養中です。

「幼いころから本が大好きでした。表現に関わる仕事がしたくて、30社以上の出版社を受けたのですが全滅。大手飲料メーカーに就職しつつ、広報やマスコミ関係の様々なセミナーに通いました。24歳のときに“ライター”という職業を知り、これが私の天職だと思い、勉強をすることにしたのです」

明日香さんは「28歳で会社を辞めて、ライターになる」を目標にしていました。そのために様々なセミナーや講座に通い、その投資額は100万円以上だとのこと。

「ライターを養成するセミナーみたいなものは各所で行なわれており、土日は勉強していました。大手出版社の編集者、現場の第一線で働いているライターさん、コラムニストの方が、企画のイロハ、文章術や取材術だけでなく、生き方まで教えてくれるんです。当時の私にとっては、夢のような時間でした」

登壇しているのは、男性講師が圧倒的多数だったそう。明日香さんはそこで「実践的内容を学んだ」と語ります。

「課題として、企画を出したり、あるテーマについて文章を書いたり……それが実際に講師の先生の仕事として、一流の雑誌やWebサイトに採用されたこともありました。今、思えばあれは受講者にタダ働きをさせていたということですよね。そういうことのひとつひとつが悔しいです」

オンラインサロンは、“タダ働き”の温床なのか?

お金を払って仕事をする「モチベーション詐欺」

明日香さんは、さまざまなオンラインサロンに参加していたそうです。

「マスコミ業界は、私にとっては憧れの遠い世界。周囲の友達にもそういう人はいない。“中の人”のリアルな話が聞きたくて、オンラインサロンにも参加していました。ある男性コラムニストのサロンで、私が出した企画が本になったこともあったんです。文章も書かせてもらいました。今思えば、自分がお金を払って仕事をする……変な話ですよね」

28歳のとき、予定通り、会社を辞めてライターとして独立をしました。

「人脈もできたので、思い切りました。私なんかが“ライター”などと言っていいのか……とドキドキしながら名刺を作ったことを覚えています」

最初の仕事は、セミナーに登壇していた、大手出版社の女性編集者からの発注でした。

「セミナーの後の懇親会で、その女性編集者に相談したら『それなら私のサイトで書いてよ』と言われ、ウェブサイトでのレギュラーの仕事をいただきました」

しかし、“お客さん”として仕事をするのと、実際に成果物を仕上げるのは全く違ったそうです

「セミナーでは『いい線いってるね』と言われていた私の原稿は、ダメ出しの嵐でした。そういうことが何回も続いて、自分的に申し訳なくて『卒業したい』と伝えたら、その女性編集者は『もう少し頑張ってみたら?』と言ってくれたのですが、もう限界で。だって、私の意見を“書かないでほしい”と言われるんですよ。私の意見を書かない原稿って何のことだと思いましたが、今は、事実を正確にわかりやすく伝える原稿が、基本だということがわかります。思えば、その女性編集者はそれを私に教えてくれていたんですよね」

その後、セミナー時代の人脈で、男性向けのウェブ媒体からレギュラーの仕事を得ます。

「副編集長が担当になったのですが、彼は自称“天才”編集者でした。でもすごいエネルギッシュに仕事をしているように見えたし、『この人について行けば間違いがない』と直感したのです。そういう気持ちって反応するんですかね。夜中もLINEで呼び出されたり、仕事のダメ出しをされたりするうちに、気が付けば男女の関係にさせられていました」

深夜に呼び出されても、タクシー代は自腹。飲食費も請求されることがあったという。

「断ったら、仕事がもらえなくなるかもしれない」と横暴を許してしまう……〜その2〜に続きます。