2020年3月下旬から、新型コロナウィルス感染拡大予防のために外出自粛が叫ばれ、多くの企業がリモートワークを導入。家族が一つの家で1日を過ごすストレスは大きく、4月上旬には、「コロナ離婚」という言葉がメディアをにぎわせています。

それから1か月。5月11日には、東京都の感染者数が9日連続で100人下回るという報道がされ、外出自粛ムードも穏やかになってきたのではと感じる人も多いのではないでしょうか。

そんな中、離婚に悩む多くの人が相談に来ている『銀座さいとう法律事務所』の齋藤健博弁護士に、コロナ禍中の離婚について伺いました。

【第1回目】はコロナ離婚のリアルケースについて、2回目の今回は離婚とお金について紹介します。

コロナ離婚は慰謝料ゼロのケースも!?

――コロナ離婚は、浮気、悪意の遺棄、DVなど、第三者の視点からも「これは浮気理由になる」と判断できる原因が少ないことも特徴のひとつだと伺いました。

齋藤健博弁護士(以下・斎藤):目に見えない我慢の蓄積の結果が、コロナで噴出したというケースが多いです。育った背景も文化も違う他人同士が生活すると、様々な摩擦が生まれます。

そういうことが、通勤や外出などで相手と離れ、「ま、いいか」と自分の中で折り合いをつけていた人が多い。

しかし、コロナによるリモートワークで、バッファーのようなものが無くなった影響は、大きいと感じています。

――明確な理由がない場合の離婚には、慰謝料が発生しにくいと考えられます。

齋藤:その通りです。ここ10年ほどで離婚件数が増え、そもそも慰謝料の相場が下がっている。離婚には、当人同士の合意で離婚する「協議離婚」と、裁判所で調停する「調停離婚」、そして家庭裁判所で裁かれる「裁判離婚」があります。

協議離婚でも、慰謝料の額や支払い条件などに弁護士が関わるケースも多いです。

コロナ離婚の場合、多くの人の経済不況が、かなり悪くなっているにも関わらず、「とにかく離婚したい」と感情が先走り、慰謝料にフォーカスしないケースが多いです。

――なんでもそうですが、渦中にいると、自分を客観視できないものですよね。

齋藤:そうなんです。トイレットペーパーやマスクの買い占めも、今思えば「別にしなくてもよかった」と思いますが、渦中にいるときは、家にあるのに買ってしまった人も多いと思います。

離婚も同じで、話し合いをしているときは、「その先の未来」が見えにくい傾向があります。

子供がいるのに慰謝料ゼロ。もっとお金をもらっておけばよかった!

修復のための行動はすべて悪手

――Suits WOMANの記事に「コロナ離婚」のドキュメントがあります。実際にコロナ離婚をした人の中には、「元夫からお金をもらっておけばよかった」と言う人もいました。

齋藤:離婚がありふれたものになり、共働き家庭も増え、気軽に離婚を選ぶ人もいます。「紙切れ一枚」などと揶揄されますが、やはり一度家族になった人が、別れるという離婚は人生の一大事。

よく話を伺うと、慰謝料請求権は発生する場合があります。手持ちのお金がなくても、分割での支払いも決められるし、養育費などが取れるケースも多々あります。

――コロナ離婚における特徴として、妻側から離婚を求めるケースが多いと前回伺いましたが、離婚される夫はどういう行動をしているのでしょうか。

齋藤:お子さんがいる場合、休校やリモートワークで、家族が家にいるようになりました。普段は子供の世話をして、何かと口うるさく言うお母さんに対して、お父さんの方が甘い傾向がある。すると子供はお父さんの方に行きます。そのときに「ママよりパパの方が好きだろ? 離婚してお父さんのところに来るんだよ」などと、お子さんに入れ知恵して、妻の怒りが爆発するケースがありました。

さらに、離婚を避けたい夫は、妻に対して、修復のためのアプローチを繰り返す傾向があります。これは、本当に逆効果です。

――そういえば先日、離婚するために、コロナ禍でも別居に踏み切った夫婦の話を聞きました。夫は妻に毎日のようにLINEし、居場所を突き止めるために、妻の勤務先付近をうろついて、妻は本当に心が離れたと言っていました。

齋藤:それも非常に多いケースです。関係修復のためにしつこく行動し、警察に通報されたり、接触禁止の仮処分が出たという話もよく聞きます。

関係修復に最も有効なのは、「連絡をしないこと」。そのことを頑張ればいいのに、真逆の行動をしてしまうのです。

離れた心をつなぎとめようと「頑張る」ほど、相手の心は離れていく。それは恋愛も結婚も同じ。


 弁護士齋藤健博

銀座さいとう法律事務所代表。2010年慶応義塾大学総合政策学部卒業。2013年慶応義塾大学法学部法律学科卒業。2015年慶応義塾大学法科大学院卒業、同年司法試験に合格し、弁護士となる。不倫、男女問題、離婚、脅迫対応、債権回収に実績がある。LINE ID【bengoshisaito】を公開し、依頼人の心に寄り添う弁護活動を行なっている。http://ginza-saito.com/

取材・文/前川亜紀