日本に就職するため、インドネシア人が持ってきたスーツに会社の人事は……

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「グローバル化」を目指し、海外から外国人をリクルートしてくる企業が増えました。就職のため初めて来日した外国人には、日本のビジネスシーンに驚くことがたくさんあるようです。方言が飛び交う会議で「それはアカン」と言われ、赤い物を差し出したら再び「アカン!」。電車では、同じ過ぎるスーツに「制服か!」とおののく。インドネシア人のエンジニアが受けた衝撃から、日本のビジネスシーンの「当たり前」を考えます。(withnews編集部・松川希実)

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きょうのことば

おらん……関西弁で、「(人が)いません」という意味です。場所によっては、「おらへん」、「いてへん」、「いてはらへん」、「いいひん」とも言います。

【話をした人】
インドネシア出身のカルビンさん(30歳)。
カルビンさんは日本で暮らして、4年目です。滋賀県内のエンジンメーカーで、エンジニアをしています。

初めての日本暮らし

私は、滋賀県草津市に住んでいます。
私の町からは、京都も、大阪も、奈良も近いです。旅行が好きな私には、最高の場所です。

日本に来たのは、働くためです。それまで日本で暮らしたことはありませんでした。

日本にくる前は、韓国と、インドネシアで、エンジニアとして働いていました。転職を考えていたとき、日本の会社が人を探していると知って、応募しました。
就職が決まってから、ジャカルタで5カ月、日本語学校に通いました。

日本語学校の先生は「カルビンさんはこの学校で一番優秀な生徒です」と言いました。

それなのに、日本に来て、驚きました。まわりの人が何を言っているのか、全く分かりませんでした。

5カ月勉強したのに何も分からない

たとえば研修の時、上司が私に、「あ〜、カルビンくん、それはアカン」と言いました。私はまわりを見ました。「あか」と聞いて、すぐ近くに、赤い物があったので、それを上司に渡しました。
「赤じゃない、アカン!」

「アカン」とはどういう意味なのか、辞書で調べても載っていません。意味を聞くと、関西弁(関西の方言)で「いけない」ということだそうです。

「あの人は、オラン」と上司が言ったとき、私は「あの人は、人だ」と説明しているのだと勘違いしました。

インドネシア語でオラン(orang)は、「人」という意味だからです。
「そうだよなぁ、あの人は『人』だよなぁ」と、私はしばらくの間、納得していました。
「おらん」は関西弁で「いない」という意味なんですね。

インドネシアにも方言がありますが、仕事や会議などでは標準語を使います。だから、私は「会議になれば、分かるだろう」と思っていました。

私の考えは甘かったです。
会議でも、関西弁で話します。

私はせっかく5カ月も日本語を勉強したのに、最初から関西弁を覚えなければなりませんでした。
方言の言葉は辞書に載っていないので、一つ一つ、まわりの人に「どういう意味ですか」と聞いて覚えました。周りの人が話している内容がわかるようになるまでに、半年かかりました。

でも関西弁で話すと、日本では、人とすぐに親しくなることができることも分かってきました。

一番好きな関西弁ですか? それは、「わからん」ですね。一番、よく使うことばなので。

「若い人は薄い色」なのに

私は、ジャカルタの日本語学校で、日本のビジネスマナーも勉強しました。

日本人の先生は、「日本のビジネスマンはスーツを着ます。年上の人は濃い色、若い人は薄い色のスーツを着ることが多いです」と教えてくれました。

インドネシアでは、スーツはあまり着ません。暑い国なので、ビジネスマンは、いろいろな色のバティック(インドネシアの伝統的なろうけつ染めのシャツ)を着ています。

韓国で働いていたとき、韓国のビジネスマンは、いろいろなスーツを着ていました。私は「スーツはファッションなんだ」と思っていました。

だから私は、日本にブルー、ライトグレー、ネイビーの色のスーツを持ってきました。
シャツは赤、青、ピンク、グレーです。

私は、大阪で、初めて通勤の電車に乗ったとき、びっくりしました。

「みんな同じスーツを着ている!」

私は「なぜだろう」と考えました。そして、「あ、そうか、みんなが着ているのは制服か。みんな同じ会社の人なんだな」と思いました。でも、電車を降りると、みんな別々の会社に入っていきました。私は、ショックを受けました。

私の会社の人事の人は、私に「スーツは紺色か黒色だけです。シャツは白は着てください」と言いました。でも、そのことは会社のルールには書いていませんでした。

「若い人は薄い色のスーツ」と教えてくれた日本語学校の先生に言いたいです。違いましたよ! 若い人も、年上の人も、日本では全部、黒か紺です!

在宅ワークで日本の景色は変わるか?

日本の大手紳士服のウェブサイトをよく見ると、少し色が違うものもありますね。でも、やっぱり、外で見るとみんな同じに見えます。

「リモートワークでも、ちゃんと仕事をしているように見える服」の特集もありました。これは、意味が分からないです。リモートワークだから、そのときにどんな服を着るかは、その人の自由ではありませんか。

タイやバリ島のリゾートで、リモートワークをしている外国人を見たことがあります。みんなとてもカジュアル(Casual。普通のときの服)です。ノースリーブ(no sleeve。袖がない服)を着ている人もいました。その人たちは、自分が気持ちよく感じる服を選んで着ているのだ、と思います。

日本人はまじめ過ぎるのでしょうか。日本の文化は、「仕事は仕事(リモートワークのときでも、仕事だから、仕事の服を着なければならない)」と考える文化だからでしょうか。

私の会社も、今は、コロナウイルスの影響で、ほとんどリモートワークです。
私は自由に、気持ちよい服を着ています。お菓子を食べて、音楽を聴いて、リラックスして仕事をしているので、いつもより仕事が早くできる気がします。

コロナウイルスの前は、確かに「仕事は仕事」、きちんとした服を着なければいけない、という考えの人が、日本では多かった気がします。

でも、これから、日本でもリモートワークが増えるでしょう。自分にとって心地良い服が良い、と考える人が増えてくるのではないでしょうか。そうだといいな。

でも、私はそんな日本人のまじめ過ぎるところが、世界トップ(TOP)の技術を作ったと思っています。私はエンジニアとして、その技術を学ぶために、これからも日本で頑張っていきたいと思っています。

大好きな旅行で、日本中に行って、もっと日本のこと、日本の歴史を知りたいです。そして、日本各地で、ラーメンを食べたい! 中国から来たラーメンを、ここまでいろいろと工夫して、おいしくした日本はすごいですね!これも世界トップです!
京都にある和醸良麺 すがり の「もつつけめん」が、今の私の世界一です。

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