シンガポールの最高裁判所(手前)=2016年、ロイター

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 新型コロナウイルス感染防止のため外出制限が続くシンガポールで、薬物取引事件の被告が、オンライン会議システムを通じて死刑を宣告された。

 同国の最高裁判所によると、リモート(遠隔)裁判で被告に死刑が宣告されるのはこれが初めてだという。

 15日の一審の公判で死刑を宣告されたのは、37歳のマレーシア人男性。2011年に実行役の男性2人が手がけた28・5グラム以上のヘロインの違法取引を主導したとして、16年に逮捕されていた。シンガポールでは麻薬犯罪に対する刑罰が厳しく、実行役の2人についてもすでに死刑と終身刑が宣告されている。

 被告側は「実行役とされる2人の証言は信用できない」として関わりを否定したが、裁判官は検察側の証明が十分だと判断した。

 シンガポールでは4月7日から6月1日までの予定で、大半のオフィスを閉鎖する大規模な外出制限を続けている。刑務所でも4月7日から外来者の訪問を中止し、入所者の出廷が必要な場合も、できる限りオンライン会議システムを使ってきたという。ロイター通信は、被告側の弁護人の話として刑務所内にいた被告への死刑判決言い渡しには「Zoom」が使われたと報じた。

 最高裁の担当者は「新型コロナの感染拡大を防ぐ政策に歩調を合わせ、刑事裁判も含めリモートでの裁判を進めている。今回の裁判も、関係者全員の安全のため、ビデオ会議システムを使って実施した」と説明している。

 国際人権団体などからは「非人道的だ」と反発する声が上がっている。アムネスティ・インターナショナルは「Zoomでも対面でも、死刑は残酷で非人道的。コロナで世界が人の命を守ることに集中している時に死刑など、とんでもない」とのコメントを出した。(シンガポール=西村宏治)