和氣あず未、Run Girls, Run!、ワルキューレ──最新音楽ジャンル「フューチャーベース」の波が到来! 旬な女性声優アーティストの新譜を徹底レビュー【月刊声優アーティスト速報 2020年5月号】

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当月にリリースされる注目の声優アーティスト作品をレビューする本連載。先般からの新型コロナウイルスの甚大な影響より、2020年5月はシングル/アルバムとも非常にリリース数の少ない月となってしまった。なかには、下記にて紹介する和氣あず未さんのように、CDと配信のリリースを別々のタイミングで設ける例も見受けられた。今月は全3本のレビューとはなるが、どれも珠玉の1枚となっているため、漏れなくチェックしてほしい。

和氣あず未さんが5月13日に配信リリースしたのは、2ndシングル「Hurry Love/恋と呼ぶには」。アーティストデビューから約4か月足らずで、俊龍さんやhisakuniさん、SUIMIさんに小野貴光さんらといったアニソン界のトップクリエイターが早くも顔を揃える1枚となったが、その試聴後には、彼女の今後の活動が順風満帆に進むことを頼もしく信じさせられた作品だった。

 

 

なかでも、TVアニメ「社長、バトルの時間です!」(TOKYO MXほか)オープニングテーマに起用されている表題曲「Hurry Love」は、アニソンの“おいしい”ポイントがぎっしりと詰まった楽曲。そのテーマは、“恋バナ”好きを自負する和氣さんがラジオDJに扮して、リスナーからの恋のお悩み相談を受けるというものだ。役柄の“なりきり”をしながら歌うという、声優の強みを発揮できる楽曲であり、本人も雑誌などのインタビューで言及していた通り、ポルノグラフィティ「ミュージック・アワー」にも通ずるラジオならではの歌詞にも注目だ。

 

また、楽曲構成も面白く、冒頭はいきなりサビのメロディからスタート。そこからリスナーのお悩み(という名の浮かれたのろけ話)が幕を開けるのだが、これがサビに入っても続くうえに、そのメロディは軽快ながらも先ほどとは少し異なっている。するとリスナーの手紙を読み終わるところで冒頭のメロディに立ち返るという、2段階なサビの構成にニヤリとしてしまう。その後は、和氣さんがリスナーにアドバイスを伝えると、まるでその答えがバッチリだったと祝福するように、にぎやかなシンセサイザーのメロディが奏でられるなど、それぞれのメロディが番組のSE的に効果的に使い分けられているポイントも、ラジオらしさを踏襲したところだろう。

 

そして、歌詞における言葉の配置や、メロディックなギター、アトラクション感あるシンセサイザーのサウンドなど、“キャッチー全振り”ともいえるサウンドについて、聴く人が聴けば、その作り手が俊龍さんであることを一発で理解できるはず。底抜けににぎやかなトラックをはじめ、前述した歌い手の役柄の設定や変則的な楽曲構成などは、まさにアニソンだからこそできる自由度の高さだろう。

 

 

ほかにも、フューチャーベースを主軸にした「恋と呼ぶには」や、ミドルテンポなR&Bテイストの「Touch the moon」など、本当であれば全曲とも紹介したいところなのだが、全体を通して気になったポイントをひとつだけ述べておこう。それは、カップリングを含めて恋の群像劇を収めたシングルでありながら、「Hurry Love」における和氣さんのラジオDJという立ち位置が“フリ”として効くことで、作品として抜群の“統一感”が生まれていることだ。その上で、各楽曲における本人の歌のニュアンスがやや異なっているので、ぜひ意識しながら聴き比べてみてほしい。

 

今年でデビュー3周年を迎えるRun Girls, Run!は、活動当初から声優楽曲ファンたちの注目を集めてきたユニット。彼女たちは、2017年開催の「Wake Up, Girls! AUDITIONー第3回アニソン・ヴォーカルオーディション」合格者3名で結成された、Wake Up, Girls!のDNAを受け継ぐ存在といえる。と、ここで勘のいい人であればもうわかるかもしれない。彼女たち自身の人気はもちろんだが、その楽曲制作を支えているのは、Wake Up, Girls!とも深く親交のあった作詞家・只野菜摘さん、そして田中秀和さん、石濱翔さん、広川恵一さんなど、遊び心と作品クオリティを高いレベルで両立する作曲家集団・MONACAであるのだ。

 

5月20日発売の1stアルバム「Run Girls, World!」には、ユニット初のソロ楽曲のほか、デビューシングルより継続してきた、只野さんと石濱さんによる“四季”楽曲シリーズの完結作「水着とスイカ」が収録される。これまでの「サクラジェラート」「秋いろツイード」「スノウ・グライダー」にて、意中の幼なじみにうまくアプローチできない女の子のやるせなさを表現してきた。2人の距離感の難しさに、リスナーももどかしさを覚えてきたかもしれないが、「水着とスイカ」ではいよいよその結末が明かされる。

 

 

さらに同曲では、過去の楽曲を引用した歌詞や、石濱さんいわく「懐かしい雰囲気」にしながらも、“Kawaii Future Bass”に通ずる泡が弾けるようにポップなサウンドなど、これまでの楽曲とのコンテクストが詰まっているだけに、それぞれ只野さん/石濱さんワークスの充実ぶりに、コンテンツへの信頼も否応なしに厚くなってしまうに違いない。

 

最後は、ワルキューレが、5月27日発売のシングル「未来はオンナのためにある」で、2年3か月ぶりにようやく帰ってくる。表題曲は「劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!」イメージソングとなっており、アグレッシブなトラックの上で、日常の辛いことや世の中の不条理に立ち向かう想いを歌った楽曲。JUNNAさん(美雲・ギンヌメール役)いわく、悪びた歌に仕上がっているとのことだ。また、歌詞やメロディと同様に、MVも彼女たちの定番な昭和テイストになっている(戦術音楽ユニット=戦闘だから“銭湯”とかけたのだろうか……)。

 

 

前作「ワルキューレは裏切らない」以降、メンバー全員がソロアーティスト活動を始動した彼女たち。グループとはまた別の形で、自身の歌声やその特徴と向き合うことで、以前よりもそれぞれの歌声が聞き取りやすく、よりハッキリとしたキャラクターを帯びたように思われる。サビ終盤の鈴木みのりさん(フレイア・ヴィオン役)から始まるソロパートはその象徴ともいえ、なかでも安野希世乃さん(カナメ・バッカニア役)が、持ち前のやわらかな歌声を大切にしつつ、それ以上に凛々しさを前面に押し出す部分は、今楽曲の重要なポイントだろう。

 

日増しに暑くなってきている今日この頃、待望の夏を前にそろそろ爽やかなサマーチューンも聴きたいところ。来月以降はどのような素晴らしい楽曲のシャワーを浴びられるのか、引き続き楽しみに待っていたい。

(文/一条皓太)


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