●iPadで使えるターミナルアプリとは?

○iPadは開発もいける、ただし物理キーボード必須

iPadを開発環境として使う――そんなこと可能なのかと思うかもしれないが、案外できるものだ。物理キーボードを使えば、iPadを使った開発はそれほど難しくもなかったりする。iPadを使った開発パターンはいくつかあるが、大まかに次の3点に分けられるように思う。

開発アプリを用いる。目的とする開発に利用できる開発環境やツールがアプリとして販売または提供されており、アプリを使うだけで作業が完結するパターン。

クラウドサービスやWebアプリケーションの統合開発環境を用いるパターン。Webブラウザで開発するタイプの統合開発環境などがあり、こうしたサービスで済むことがある。オープンソース・ソフトウェアで提供されている環境などもあって、自分で開発用のWebサーバを運用して利用する方法もある。Safariでは都合が悪いこともあり、Web統合開発環境用にWebブラウザアプリをインストールするといったこともする。

ターミナルアプリからサーバにログインして作業するパターン。SSH経由でサーバにログインしてVimで開発を行うといった使い方など。

開発パターンを完全に分けられることもあれば、上記のパターンを組み合わせて利用することもある。なお、iPadを開発環境として使う場合、模索段階でも有償アプリにはある程度投資することをおすすめしたい。これは試す分も含めてだ。

開発環境の要望はケース・バイ・ケースなので、汎用ケースを示すのが難しい。Visual Studio Codeが使えれば汎用ケースとして取り上げることもできそうだが、今のところVisual Studio CodeはiPadには対応していない。将来対応するかもしれないが、現時点では、他のアプリや方法を探すしかない。

アプリには要求ベースで当たり外れが存在する。高価な有償アプリがドンピシャなこともあれば、無償のアプリがドンピシャなことだってある。使ってみて自分に向いたものを探すしかなく、気になるなら思い切って購入して試すことをお薦めしたい。仕事で使う場合はなおのことだ。

汎用的に操作できるmacOSと異なり、iPadOSは制限が多い。ちょっとした不便が積み重なるとストレスになる。ストレスがなく、かつ、ニーズに合うアプリを使えるのと使えないのとでは、疲れ方が違う。

○何はともあれ、ターミナルはベースライン

開発には、アプリを利用、クラウド/Webアプリを利用、サーバにログインといった方法があるが、本稿ではターミナルアプリからSSH経由でサーバにログインして作業するための最低限の方法を取り上げておきたい。

Webアプリケーション開発やシステム運用などで、AWSやMicrosoft Azure、Google Cloud Platformといったクラウドプラットフォームを使うケースが増えている。こうしたクラウドプラットフォームでコンテナを作成し、そこでアプリケーションやサービスの開発を行う。さらに、SSHでログインしたり、SSH経由で接続したりして開発を行うといったスタイルを取ることが多い。つまり、iPadでSSHを使ったログインができるようにしておくと、なにかとつぶしが利くのだ。

これはシステム開発に限らず運用・保守などにも利用できる。どこにいてもVPNで接続してSSHでログインできれば管理できる、というケースも多い。ターミナルアプリを使うとそうしたことができる。外出中にiPadからリモートでログインして保守しなければならない場合、よくない事態に陥っているものだ。いざという時のためにセットアップしておくのは悪くない。

○ターミナルアプリあれこれ

iPadで使えるターミナルアプリはいくつもあるが、SSHに対応しているものが多い。そして提供されている機能も価格や支払い方法もさまざまだ。最近は日本語対応に問題がないことも多く、これまで以上にアプリの選択は難しいかもしれない。

以下は本稿執筆時点より1年以上前の記事だが、今でも十分役に立つと思う。iPhone向けの記事だがiPadにも適用できる。

iPhoneで使えるSSHターミナルアプリベスト5

上記の記事では、以下のターミナルアプリを取り上げている。

Termius - SSH client

Blink Shell: Mosh & SSH Client

iTerminal - SSH Telnet Client

Shelly - SSH Client App Storessa

WebSSH Pro

ターミナルアプリは合わないと最悪なので、最終的には自分で試してみてほしいのだが、ここでは「Termius」を使う方法を紹介しよう。Termiusは多機能ターミナルアプリで、無償版と有償版が用意されている。無償版では利用できない機能もあるが、それでもほかのターミナルアプリと比較して多くの機能が利用できる。まずは無償版のまま試し、気に入って、かつ、有償版の機能も使う必要があるなら購入するというステップを踏むのがよいと思う。

●ターミナル「Termius」をセットアップする

○Terとセットアップ

Termi起動すると、最初は次のようにアカウントの作成を求められる。Termiusを使用するにはアカウントを作成する必要がある。アカウントの作成にはメールアドレスとパスワードが必要だ。アカウント作成が嫌なら、他のターミナルアプリを試してみよう。

Termiusは最初の起動時にアカウントの作成が必須

ある程度の強さのパスワードじゃないとアカウント作成させてもらえない

アカウントを作成すると、次のような画面が起動してくる。14日間は体験版期間であること、それ以降は月額1100円または年額1万800円で使用できること、といった説明が掲載されている。カルーセルを送っておくと、機能は制限されるが14日間以降も無償で利用できるという説明も掲載されている。まずは試したいので、左上の「TRY LATER」をタップする。気に入ったらいつでもサブスクリプション購入できる。

14日間の体験版期間とサブスクリプションの説明。無償利用についてもカルーセルを送っていくと説明が書いてある

Termiusが起動してきたら、ログインしたいサーバを登録する。左から「Hosts」を選択して「New Host」をタップ。起動してくるダイアログで必要データの入力や鍵の生成または設定などを行っていく。

「Hosts」→「New Host」でサーバを登録

ホストおよびアカウント情報を書いていく

これでセットアップ完了だ。どのターミナルアプリでも多かれ少なかれ似たような作業を行うことになる。

○Termiusの使用例

次のスクリーンショットは、Termiusでサーバにログインして作業を行ったり、Vimでファイルを編集しているところだ。コマンドの実行、ファイルの編集、日本語の入力なども含めて不自然さを覚えることはない。

サーバにログインしてコマンドを実行

XMLファイルをVimで編集中

ただし、ソフトウェアキーボードを使って作業しようすると、かなりストレスになことは言っておきたい。慣れればそれなりに作業スピードは上がるが、入力するためにキーボードを何度も切り替える必要があり、物理キーボードほどの快適さは得られない。ストレスを感じずに高速に作業するなら、物理キーボードは必須と思っておきたい。

○当然だがネットワークが必要

「毎日Linuxサーバにログインしている」「手元の仮想環境にLinuxを構築して利用している」「macOSでもターミナルをバリバリ使っている」といった方にとっては、iPadでターミナルアプリを使うことにそれほど違和感はないだろう。物理キーボードさえ使えば、iPadでも同じように作業できるだろう。

特に、自分用のサーバを持っている場合、iPadでターミナルアプリを使うことは強力な武器となる。結局のところ、いつものサーバにログインさえしてしまえば、あとはそちらで作業すればよいだけだ。アクセス元がMacだろうがiPadだろうが、接続した先は同じである。

この方法で注意しておきたいのは、ネットワークが不安定だったり、帯域が細かったりする場所では使い物にならないことだ。タイピングするごとにプロンプトが返ってくるのを眺めるのは、立派なストレス源となる。建物の奥や山岳部、海外などでこうした状況に陥ることがある。ローカルで作業して最後にコミットすればよい環境と違い、ネットワーク接続を前提とした環境にはそうした弱さもある。

○どんな方法にせよ、物理キーボードは欲しい

4Kや5Kのディスプレイを使ってリッチな条件で開発を行っているなら、ターミナル+Vimといった開発環境に慣れるまでに時間が必要かもしれない(もちろんエディタはVimである必要はなく、使い慣れたものを使えばよい)。

既にVimやお使いのエディタでほとんどの開発を済ませている方であれば、iPadでターミナルを使った開発作業にスッと入っていけると思う。使ってみると、iPadの画面は広く感じる。すでにサーバに自分の開発環境が構築してあるなら、あとはiPadからアクセスするだけだ。

ターミナルとSSHのセットアップが完了したら、あとは必要に応じて開発アプリやクラウド/Webアプリケーションの統合開発環境も試していってもらえればと思う。

どの方法を使うにせよ、やはり物理キーボードがポイントになってくると思う。「iPadは仕事でどこまで使えるか?(2) iPadの物理キーボード・マウス・ペン、仕事に使うなら何を選べばよい?」などを参考に物理キーボードについて検討してもらえればと思う。