by michael bamford

愛らしい姿のペンギンは水族館や動物園で人気の動物ですが、魚主体の食生活もあってかなり体臭がキツいことが知られています。同様に強い臭いを発するペンギンの「糞」について分析したところ、ペンギンの糞からは医療現場において麻酔目的で使われる笑気ガス(亜酸化窒素)が発生していることが判明しました。

Combined effects of glacial retreat and penguin activity on soil greenhouse gas fluxes on South Georgia, sub-Antarctica - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0048969719352477

Researchers go 'cuckoo' over Antarctic penguin poop | AFP.com

https://www.afp.com/en/news/826/researchers-go-cuckoo-over-antarctic-penguin-poop-doc-1rk2zq1

Researchers Accidentally Got High on Laughing Gas From Penguin Poop

https://gizmodo.com/researchers-accidentally-got-high-on-laughing-gas-from-1843481214



デンマークと中国の研究チームは、南極大陸の近くに位置するサウスジョージア島における氷河の後退と、それに伴うオウサマペンギンの急増が温室効果ガスの放出に与える影響について調査していました。サウスジョージア島の氷河は1993年から1kmも後退しており、ここでは人間がもたらした地球温暖化によって氷河が後退し、それによってオウサマペンギンが急増してさらに地球温暖化が加速するという、一種のフィードバックループが始まっています。

研究チームは氷河と海岸に挟まれた地帯から5つの土壌サンプルを採取し、研究室で分析を行いました。その結果、ペンギンのコロニーに近い場所から採取した土壌には、非常に高濃度の亜酸化窒素が含まれていたとのこと。研究を主導したコペンハーゲン大学のBo Elberling教授は、「ペンギンの糞はとても高いレベルの亜酸化窒素をコロニーの周囲に放出します」と述べています。

亜酸化窒素は地球の大気に放出されると紫外線によって分解されて一酸化窒素となり、オゾン層を破壊するという作用を持っています。また、研究者らによると、一酸化窒素には二酸化炭素の300倍もの温室効果があるそうです。



また、亜酸化窒素は麻酔用の笑気ガスとしても用いられており、ペンギンの糞がもたらす影響はコロニーの周囲で調査を行う研究者らにも及んだとのこと。Elberling教授は、「ペンギンの糞に囲まれた研究者たちは、『バカ』になってしまいました」「数時間にわたって糞の臭いを嗅ぎ続けると、ある者は完全にバカになります。別の者は頭痛を感じ始めます」と述べています。

研究チームによると、ペンギンの糞そのものに亜酸化窒素が含まれているのではなく、ペンギンが多く食べるオキアミと魚に高レベルの窒素が含まれていることが原因だそうです。ペンギンが糞をすると糞に含まれる窒素が地面に放出され、土壌細菌によって亜酸化窒素に変換されると研究チームは指摘しています。

一連の結果から、研究チームはサウスジョージア島におよそ30万羽いるというオウサマペンギンのコロニーが、温室効果ガス排出のホットスポットであると結論付けました。「今回のケースにおける亜酸化窒素の放出は、地球全体のエネルギー収支に影響を与えるほどではありません。しかし私たちの研究は、ペンギンのコロニーが周囲の環境に与える影響に関する新たな知識に貢献しており、これはコロニーが次第に広がっていることを考えると興味深いものです」と、Elberling教授は述べました。



by David Cook