来季のフィギュアスケートは「4分の1回転不足」の境目に天地の差
ここでポイントとなるのが、回転不足を判定する審判と、出来栄えを判定する審判が別であるということです。回転不足を判定するのは技術審判(テクニカルパネル)の仕事で、出来栄えを判定するのは演技審判(ジャッジ)の仕事です。2019-2020シーズンの場合、4分の1回転という際どい境目において技術審判と演技審判の見立てが食い違った場合、演技審判側の出来栄えへの判定で食い違いを埋める余地がありました。上の例で言えば、記号「<」がついたジャンプに高めの7.92点をつけることができ、記号がつかないジャンプを出来栄えへの判定で8.80点に引き下げることもできました。
それが2020-2021シーズンでは演技審判による出来栄え判定での影響が少なくなり、上の例の場合、記号「<」がついたときは演技審判が高めにつけても7.04点に抑えられ、記号がつかなかったときは9.90点より引き下げることはできないことになります。また、記号「q」がついたときは出来栄えによる変動はなく8.80点ということになります。「ちょうど4分の1回転不足」という際どい境目のほんの1ミリ2ミリの違いを技術審判がどう見るかだけで、演技審判がどれだけ評価をしても埋められない各段階での大きな差が生じるわけです。
ジャンプの回転不足についてより大きな差をつけるようになっている2020-2021シーズンの規定。記号「q」や「<」をつけたくなるような「4分の1回転不足」付近の際どいジャンプをしてしまうと、技術審判のさじ加減ひとつで大きく得点が影響されることになります。技術審判を疑うわけではありませんが、高速で回転する選手の「4分の1回転の境目」を正確に見極めることは困難であり、かつ外部からの再検証も難しい内容。試合ごと、選手ごとに判定のバラつきも出るでしょう。その「わずかな違いによる大きな差」に翻弄されないためには、誰の目にもクリーンなジャンプを跳ぶ必要があります。回転不足になりがちな選手にとっては、一層厳しいシーズンとなりそうです。
・文=フモフモ編集長