私は映画が大好き。今週は、皆さんにお伝えしたい映画の話をさせてください。テレビドラマも映画も、人間の葛藤を描くということでは共通しています。映画の世界で、日活が元気です。佐藤直樹社長の指導の下、意欲的に優れた作品を送り出しています。

なかでも心打たれた作品が、2019年に公開された「ひとよ」です。劇団「KAKUTA」を率いる桑原裕子さんの原作で、白石和彌監督が映画化しました。テーマは「家族」で、15年前の事件によって家族の岐路に立たされた、ひとりの母親と子どもたち三兄妹のその後を描きます。キャッチフレーズは「壊れた家族は、つながれますか」です。

どしゃぶりの雨降る夜に、タクシー会社を営む一家の母(田中裕子)はDVの夫を殺めました。それが、最愛の3人の子どもたちの幸せと信じて。そして、母は15年後の再会を子どもたちに誓い、家を去りました。

一夜で崩壊した家族の15年、それぞれの葛藤を生き生きと描く

時は流れ、現在、東京でフリーライターとして働く次男(佐藤健)、夫婦関係に思い悩む長男(鈴木亮平。その妻役のMEGUMIも好演)、美容師になる夢を諦めスナックで働く長女(松岡茉優)の三兄妹は、事件の日からこころの傷をかくしたまま大人になりました。

そんな一家に、母が帰ってくるのです。そこに、別れた妻との間に17歳の息子を持つ、タクシー会社の新人ドライバー(佐々木蔵之介)がからんで、物語が進行していきます。

登場する一人ひとりの人物が、大変生き生きと描かれています。そして、いろいろな過程を経て、最後に、フリーライター役の佐藤健が東京に帰るのを皆が送るところで、ハッピーエンドになっているのです。

あまりに切ない"母なる事件"から15年。ヒューマン・ドラマの傑作です。