「ニコニコ窓口担当」がツイッターで示した見解

写真拡大

安倍晋三首相が2020年5月6日に出演したインターネット動画配信サービス「niconico」(ニコニコ)の番組や動画で、投稿された安倍氏や政権への批判的なコメントが番組運営によって大量に削除されたのではないかという主張がネット上であがった。ツイッターでは1万回以上リツイート(拡散)された投稿もあり、「言論統制」とする向きもあった。

一方で動画内容と無関係とみられる罵詈雑言のコメントも散見されたことから、「誹謗中傷は削除ってことだよね」という声もあった。ニコニコを運営するドワンゴは取材に対し「niconicoでは表現の自由を尊重しており、規制は最小限にとどめておりますが、『コメント削除ガイドライン』に則って対応を行っております。また、他のユーザーの利用を妨害するものとして、規約違反と判断し対応を行う場合もございます」として、削除の基準を示した。

「何を基準に削除しているのかドワンゴは説明しろ」

ドワンゴはヤフーとの協力で6日夜、「ニコニコ生放送」(ニコ生)上で、安倍氏と京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長(リモート出演)を招いて生配信。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応に関し、視聴者から募集した質問を番組内で安倍氏に投げかけた。安倍氏5月末までの延長が決まった緊急事態宣言について、14日をめどに専門家会議に再評価を求め、国の解除基準を示す考えを明かした。山中氏からはインフルエンザ治療薬「アビガン」の特例的な承認を求める提言などがなされた。生放送は約70分行われた。

ニコニコでは、動画を閲覧しながら視聴者がコメントを投稿し、画面上に表示できる機能があるが、放送後にコメントの「削除」がネットで話題にのぼった。一部ユーザーが、削除の事実を含めてニコニコの動画コメントを閲覧できるウェブサービス「ニココメ」のものとみられるスクリーンショット画像をアップ。今回の安倍氏らのニコ生でのコメントだとしており、画像に写る約50のコメントほぼ全てが「運営により削除」となっている。唯一残っているコメントは「安倍首相は頑張っていると思う」だった。

ツイッター上ではこの画像をもとに「言論統制そのもの」「露骨すぎ」「何を基準に削除しているのかドワンゴは説明しろ」などと政府や運営サイドに批判の声が寄せられた。政権に批判的なコメントが「運営により削除」されたとみなされたようだ。ただ一方で、「小学校低学年レベルの罵詈雑言が画面を埋め尽くしたからだよ」「普通に誹謗中傷は削除ってことだよね」といった声もある。

今回の安倍氏と山中氏を招いたニコニコ生放送は、終了後もタイムシフトで視聴できる。だが記者が確認した時点では、ニココメ上では検索してもヒットせず、投稿コメントの閲覧もできない。一方、このニコ生に先立ち、「ニコニコ動画」には「安倍首相から皆さまへのメッセージ動画」が6日昼に投稿されている。動画は生放送と同じ「ニコニコニュース」公式アカウントによる投稿で、安倍氏1人が8分超、カメラに向かって語る内容だ。

ツイッターではこのメッセージ動画のスクリーンショットとともに、「運営により削除」が並んだニココメのスクリーンショットを並べて投稿したユーザーもいるが、このニココメのスクショは、上記の6日夜のニコ生のものとして拡散されたものと、ほぼ同一の内容だ。そのため、コメントの削除が行われたとして、それが問題のニコ生ではなく、6日昼の動画のほうではないか、という疑問を呈する向きも出始めた。

「『コメント削除ガイドライン』に則って対応」

ニコニコを運営するドワンゴの広報は7日、J-CASTニュースの取材に対し、削除したコメントの内容やその理由について、次のように回答した。

「niconicoでは表現の自由を尊重しており、規制は最小限にとどめておりますが、『コメント削除ガイドライン』に則って対応を行っております。また、他のユーザーの利用を妨害するものとして、規約違反と判断し対応を行う場合もございます」

ここで言及している「コメント削除ガイドライン」は公表されており、その内容は大きく2つ。1つは「niconicoに書き込まれたコメントが『niconico利用規約』に規定される禁止事項に該当するもので、niconicoの適正な利用のためにコメント削除が必要であると運営会社が判断した場合」とするもので、具体的な「禁止事項」は下記のとおり。

・法令に違反する行為及び違反する行為を幇助・勧誘・強制・助長する行為
・「niconico」のサーバーに過度の負担を及ぼす行為
・「niconico」の運営を妨害する行為、運営会社が不適切であると判断する行為
・他の利用者の「niconico」の利用を妨害する行為
・公職選挙法に抵触する行為
・他人の名誉、社会的信用、プライバシー、肖像権、パブリシティ権、著作権その他の知的財産権、その他の権利を侵害する行為(法令で定めたもの及び判例上認められたもの全てを含む)
・他の利用者への中傷、脅迫、いやがらせに該当する行為
・差別につながる民族・宗教・人種・性別・年齢等に関する表現行為
・自殺、集団自殺、自傷、違法薬物使用、脱法薬物使用等を勧誘・誘発・助長するような行為
・性交及びわいせつな行為を目的とした出会い等を誘導する行為
・性的、わいせつ的、暴力的な表現行為、その他過度の不快感を及ぼすおそれのある行為
・児童買春・ポルノ、無修正ビデオ動画のダウンロードサイト等へのリンク掲載
・運営会社の許諾を得ない売買行為、オークション行為、金銭支払やその他の類似行為
・運営会社の許諾を得ない商品の広告、宣伝を目的としたプロフィール内容の公開、その他スパムメール、チェーンメール等の勧誘を目的とする行為
・他人の名義、その他会社等の組織名を名乗ること等による、なりすまし行為
・公序良俗、一般常識に反する行為
・その他上記に準じる行為

ガイドラインのもう1つは「メールアドレス、電話番号、住所、学校名、会社名、その他個人情報やプライバシーに関係するものであると運営会社が判断した場合」となっている。

「当該画像は下記動画への数万件の同一投稿を運営側で削除したものです」

上記回答の中にある「規約」のうち「他のユーザーの利用を妨害するもの」としては、「他者の表現を妨害することは認めません」という項目に次の記述がある。

「コメントはニコニコ最大の特徴であり、ニコニコはその文化を守り抜こうとしています。しかし一方、コメントによって他者の表現を妨害したり、表現する人を萎縮させたりするようなことはあってはなりません。そのコメントが、コンテンツを発表した人やそれを見て楽しんでいる人たちの望まないものであるならば、ニコニコは投稿者の表現の自由を守る立場から、以下のようなコメントをニコニコの自主的判断により削除する場合があります」

なお規約の「コンテンツによる表現の自由は無制限ではありません」の項目には、「発表したコンテンツによって問題が生じた場合は当事者同士で解決することが原則であって、ニコニコによる表現の規制は最小限にとどめますが、一部、掲載を認めないことがあります」との記述がある。具体的には「犯罪、違法行為」「他者の権利を侵害する行為」「公序良俗に反するもの」「その他、ニコニコが不適切と判断するもの」の4項とそれぞれの細目を列挙している。

ドワンゴは公式ツイッターアカウント「ニコニコ窓口担当」でも7日夜、「言論統制」に関する見解を発表した。

「『「安倍首相に質問!みんなが聞きたい新型コロナ対応に答える生放送」の政権批判コメントを運営が削除している』という画像ツイートが出回っていますが、これは事実ではありません。当該画像は下記動画への数万件の同一投稿を運営側で削除したものです」

投稿では「安倍首相から皆さまへのメッセージ動画」のURLとともに、動画のコメント管理画面のスクリーンショットをアップした。それによると、上記拡散された画像で「運営により削除」とされていたものの大半は「ユースビオ」という同一のコメントだった。ユースビオは、政府配布の布マスク(いわゆるアベノマスク)の発注先として最後に明かされた社名だ。

ニコニコ窓口担当の続く投稿では、

「niconico運営は表現の自由を尊重し、可能な限りコメント削除は行いたくないと考えています。しかし、今回のようにコメント自体に問題がない場合でも、同一人物による機械的かつ大量のコメント投稿は、他の発言を押し流す迷惑行為と判断し、削除する場合があります。ご理解の程よろしくお願いします」

と理解を求めた。さらに、

「なお、当該ツイートの画像は5月6日13時投稿の動画(編注:安倍首相から皆さまへのメッセージ動画)についてのものであり、生放送(編注:安倍首相に質問!みんなが聞きたい新型コロナ対応に答える生放送)のものではありません。事実とは異なる情報が拡散されることは遺憾であり、正しい情報が皆様に伝わることを望んでおります」

と説明している。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)

「『安倍首相に質問!みんなが聞きたい新型コロナ対応に答える生放送』の政権批判コメントを運営が削除している」という画像ツイートが出回っていますが、これは事実ではありません。当該画像は下記動画への数万件の同一投稿を運営側で削除したものです。https://t.co/1qqU9ztS9n実際の管理画面↓ pic.twitter.com/MhqzwjLGh0

- ニコニコ窓口担当 (@nico_nico_talk) May 7, 2020