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既婚者同士による「W不倫」。不倫の当事者が主婦や主夫のとき、慰謝料の支払いをめぐって困ったことになるときがあります。

「妻にダブル不倫されました。妻は資産も収入もありません。不倫相手の配偶者から慰謝料を請求された場合、僕が払うことになるのでしょうか」

男性から不安の相談が弁護士ドットコムに寄せられました。

ただでさえ、配偶者に裏切られて傷ついているのに、慰謝料も立て替えなければならないのなら、「二重の理不尽」に感じられるかもしれません。

W不倫をした妻も、夫にさらなる負担をかけるかもしれない後ろめたさでいっぱいのようです。別の相談者の事例を紹介しましょう。

「ダブル不倫を5年間してきました。私は専業主婦でお金を持っていません。裁判で慰謝料を払えとなったとき、夫の給料などが差し押さえられるのでしょうか」

はたして、不倫した本人に経済的余裕がない場合、その配偶者が慰謝料を払わないといけないのでしょうか。伊藤真樹子弁護士に聞きました。

●第三者に対して責任追及はできない

不倫相手の配偶者に払ってもらうことはできるのでしょうか。

「日本の法律では、原則として個人が負う債務についてはあくまでその個人の債務であり、たとえ、家族であっても第三者に対して責任追及することはできません。

例外的に、夫婦については、『日常家事に関して生じた債務』は連帯責任を負うこととされています。これは食料・衣料などの購入費や、子の養育・教育費などが対象となります。

慰謝料の支払いは対象外ですから、不倫相手の配偶者に支払いを求めることはできません」

離婚していないのなら、相手の配偶者が自発的に払ってくれることもありそうなものですが…。

「任意に支払ってくれるのであれば、受け取ることに問題はありません。

ただ繰り返しますが、不倫相手の配偶者に請求する権利は法的にはありませんので注意しましょう」

法的には相手の配偶者が何もせず、慰謝料を回収できないということもありえるようです。

●W不倫、慰謝料の相殺はできる?

W不倫だと、お互いに慰謝料を請求しあう状況もありそうです。相殺することはできないのでしょうか。

「W不倫では、不倫された配偶者にそれぞれ慰謝料の請求権があります。

原因は1つなのだから、慰謝料は相殺できるはず。そう考えられるかもしれませんが、実はこれはできないのです。

そもそも、相殺は二人が互いに同種の債務を負担し、双方の債務が弁済期にあるときに、一方当事者の意思表示によって対当の額で債務が消滅することです。

W不倫で双方の夫婦関係が継続する場合には、「家庭」というくくりではお互いに債務を負っているように見えます。

しかし、上記のとおりあくまで慰謝料の支払義務を負っているのは当事者であり配偶者ではないため、互いに慰謝料の支払義務を負っている関係にはなりません。従って、相殺はできません。

無益なようですが、双方で支払いをし合わなければならないことになります」

なんだか、W不倫は後処理もとってもむなしいようです…。

【2020.05.08】「相殺はできない」という部分の説明を修正しました。

【取材協力弁護士】
伊藤 真樹子(いとう・まきこ)弁護士
2008年に弁護士登録後、離婚や相続などの家事事件、債権回収などの民事事件を500件以上取り扱う。「何かあったらすぐに相談に行ける、身近な法律事務所」をモットーに法律事務所を運営。
事務所名:仙川総合法律事務所
事務所URL:http://sengawa-law.jp/