昨季途中にG大阪から京都へレンタル移籍し、自身初となるJ2でプレー。貴重な経験を積んだ。(C)RENOFA YAMAGUCHI

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 ガンバ大阪と京都サンガF.C.でプレーした昨季、シーズン終了後には両クラブと契約が満了。その後、藤本淳吾の新たな移籍先は決まらないまま、現在に至っている。今後はいかなるプランで再出発を図ろうとしているのか。それは現役としてなのか、それとも――。

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――新天地を探すなかで、重視していることは?
「こだわっているのは……特にないかな。仲介人の方にいろんなクラブを探してもらっているけど、36歳という年齢は少なからずネックになっているみたいで。“ぜひ欲しい”と言われる選手ではないのかもしれないけど、でも年齢のことを言われたら、もうどうしようもない。詐称するわけにもいかないし(笑)。それで交渉のテーブルにさえ乗れないんだったら、こだわりも何もないというか。できれば家族と一緒にいたいから、関東近辺のクラブだと嬉しいっていうのはあるけど」

――移籍先がなかなか決まらず、焦りや不安をどう受け止めている?
「いや、焦りとか不安とか、そこまでないですよ」

――そうなの!?
「(母校の)桐光学園のサッカー部で練習できていた時はそこで身体を動かせたし、あとは家にいる時間が長いし、子どもの学校のことだったり、習い事だったり、自分のサッカーのことだったり。なんやかんやで、それで1日が終わるから」
 
――これまであまりできなかったことに時間を割ける?
「それはある。ただそのなかでも、いつ決まるんだろうっていう想いはあったし、練習参加させてもらったクラブもある。そこで契約を提示してもらったけど、いろいろ考えた結果、最終的にはお断りする形になって……。自分からお願いして、練習参加させてもらいながら断ってしまって、それは本当に申し訳なく思っている。いずれにしても今はフリーの身でもあるので、期限も関係ないから、とりあえず準備だけはしておこう、と。同時に、辞めるかどうかも考えながら」

――辞めるかどうかを考える、それは過去形だよね?
「いやいや、今も決まっていないわけだから、考えていないわけではない。それには、今季のリーグ戦のレギュレーション変更も少なからず関係している。降格がないわけでしょ? そうなると、どうしてもチームの編成は若手に切り替わるだろうし」
 
――やっぱり、そうなるか……。
「そう思う。普通のシーズンなら、まず若手はルヴァンカップで試してみて、じゃあJリーグでどうなのか、という順番になるだろうけど、降格がなければ、思い切ってJリーグで起用して、当たればそれでいいし、ダメでも場数を踏める。最低でも、あと33試合もチャンスがある。それなりのレベルに達していないと切り替えられないだろうけど、それでも若手には可能性があるし、どう考えても若手を使うメリットのほうが大きい。それだけの理由でベテランを切るかどうかは分からないけど、一方でフェアじゃないなっていう気もする。でも、それが現実と言えば、現実だから。クラブとしては、今年ではなく、2年、3年先を見なければいけないし。ただ、ベテランにとっては厳しい現実ではありますよね」

――それでも、今できるトレーニングをして、準備はしている。どうやって自らを奮い立たせているのか?
「家の中で筋トレをして、汗をかけば気持ちがいい。その気持ち良さが、モチベーションにはなっている。あとは体幹とか、サーキット系のメニューをこなしながら。他の人の家に迷惑をかけないように(笑)。みんな、どうしているのかなって思う。トレーニング以外にも、映像を見返したりもしますね。今は、たくさんのコンテンツが提供されているから。ゴール集とか」

――なるべく人がいない時間帯を狙って、外で走ったりも?
「どうなんだろう。それは人それぞれの考え方というか。否定はしないけど、自分はこういう状況だから割り切るしかないと思っている。個人的には、公園で少しだけボールを蹴ったとしても、それで万が一、感染して動けなくなるなら、家の中にいて少しでもプラスになることをしていたほうがいいという考え。もちろん、十分に注意して、たまにスーパーに行ったりとか、まったく外に出ないわけではないですけど」
 
――我慢するところは我慢して。
「ただ、子どもはかわいそうですよね。本当なら外で遊びたいはずなのに、我慢して家にいてくれているから」

――そうした日々を過ごしながら、今後の身の振り方を模索している。
「正直、迷ってはいる。チームを探すのか、辞めるのか」

――こちらの勝手な意見だけど、辞めてはほしくない。
「今年の初め頃にも、『辞めないで』とか『辞めたらもったいない』とか、周りから言ってもらって、すごく嬉しかった。でも、サッカーができる場所がなければ、ね。カテゴリーを下げれば、という部分はあるけど」
 
――たとえば、JFLや地域リーグのクラブとか?
「本当に自分がそのクラブでやりたいと思えるなら。言い方を変えれば、続けようと思えば続けられるかもしれないけど、辞めようと思えば、辞められるし、辞めたいと思ったら、辞める。今はそういう感じかな」

――可能性がある限り、そう簡単に引退はしない、現役にしがみつくのではないか?
「どうだろう。ただ、将来的には指導者になりたいから。そのためにも、現役中に感じられることって大事になる。ほらこうやるんだよと、ちゃんと手本を見せられるのが一番説得力があるし、いろんな指導者の教え方、試合への持っていき方、モチベーションの上げ方、選手への言葉のかけ方、そういうのをすべて学べるのも現役中だから。だから迷ってますね」

――毎日、どうしようか、どうしようか、と思い悩んでいる?
「いや、そこまで追い詰めていない(笑)。今は世の中が大変な状況で、選手からしてもデメリットはあるけど、そればかりでもないし」

――泰然と構えて、再開を待つしかない。
「リーグの再開が決まっても、1週間とか2週間の準備で試合なんてできるわけがない。試合に向けては、もっとしっかりとした準備が必要になる。日程の問題があるのは分かっているけど、無理にスタートさせて質が低かったら、今年はしょうがないかってなるかもしれないけど、一方で「え?」って思う人もいるはず。それはプロとしてどうなのかと思う。だからこそ、今のこの時間をどう過ごすかが大事になってくる。再開に向けて、頑張ってくれているたくさんの人たちのためにも。何も決まっていない自分からすれば、ゆっくり考えられる時間でもあるかな」
 
――自分と向き合う時間も増えたと思うけど、そこで新たな発見は?
「なんだろう……自分はどうしたいのか、なかなか決まらないもんだなって」

――36歳という年齢になったからこそ、どんなプレーを見せられる?
「パスの質。何気ないパスでも、見ている人にもメッセージが伝わるようなパスは出せるし、そこは気を遣っている。視野の広さや技術の面でも自信はある。走るのは、まあ、なんとか(笑)」

――たとえ動く量が減っても、その分、伸びている部分がある。
「ひとつ、ふたつ先の展開をイメージして、選択肢を2個、3個持っておく。そういうスタイルには変わってきている。たまに“見えすぎて”いて、あ、ここもフリーだって考えて、それで遅れてしまうこともあるけど(笑)」
 
――やっぱり見てみたい。円熟味を増した藤本淳吾を。
「そういう言葉は嬉しいし、ありがたいけど、オファーがないのが現実だから」

――再出発を待ち望んでいるファンやサポーターに向けて一言。
「ちゃんと決まったら報告します。うーん、もう少し時間をください(笑)」

――吉報を待ってます。
「はい。なによりも、早く世の中が良くなってほしい。なんにも気にせず外を歩いたりとか、そういうのができないと、なんか骨折してギブスしている感じ。普通に歩けるって、超いいじゃんって(笑)。そういうことも、改めて実感しているかな」

――◆――◆――
 少なからず後悔している。いくつか恣意的な意見や質問をぶつけたことを。引退してほしくない、まだまだできるはず。そう投げかけるのは簡単だ。だが、現役を続けたくて、でもそれがままならず悩んでいる当の本人からすれば、答えようがなかったはずだ。

 それでも藤本は、「ありがたい」と気遣いを見せる。引退もあるかもしれないと、包み隠さず話してくれた。「そこまで追い詰めていない(笑)」と飄々と語る姿も藤本らしかった。

 現役としての“ゴール”は見えているが、それはどこにあるのか、自身もはっきりと把握はしていない。明日には目の前にすっと表われるかもしれないし、しばらく先にあるのかもしれないが、積極的に探そうとはしない。ケ・セラ・セラ。藤本が言うとおり、思い詰めても仕方がないのかもしれない。なるようになれ。そんなスタンスで、とにかく納得のいく答えを出してほしいと思う。

PROFILE
藤本淳吾 ふじもと・じゅんご/1984年3月24日生まれ、神奈川県出身。173センチ・69キロ。横浜プライマリー―横浜Jrユース―横浜栄FC―桐光学園高―筑波大―清水―名古屋―横浜―G大阪―京都。J1通算328試合・54得点。J2通算8試合・0得点。J3通算4試合・2得点。日本代表通算13試合・1得点。01年U−17世界選手権出場。06年Jリーグ新人王獲得。10・11年Jリーグベストイレブン選出。自慢の左足を駆使して、チームのポゼッションを支え、敵陣バイタルエリアで好パスを配給する攻撃的MF。視野の広い展開力、正確無比なロングキックやサイドチェンジにも定評あり。

取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)