1/6NASAの「ヴォイジャー2号」は、1989年に海王星のそばを飛行し、最後となった写真の1枚を撮影した。バックミラーのなかで海王星をとらえたうようなこの写真では、右下の隅のほうに海王星の衛星トリトンも見える。PHOTOGRAPH BY NASA/JPL 2/6ヴォイジャー2号は、33万マイル(約53万km)離れたところから、このトリトンの写真を撮影した。実を言うと、科学者たちはトリトン表面にもっと多くのクレーターがあると予想していたが、クレーターはほとんど見られなかった。この事実は、トリトンの表面が、地質学的プロセスによって絶えず新しくなっていることを示唆している。PHOTOGRAPH BY NASA 3/6トリトンには、冥王星と同じような波形の領域がある。宇宙空間に氷を噴出する「プルーム」もある。ちょうど、氷の下に海が広がる土星の衛星エンケラドゥスで見られるようなものだ。さらに、エウロパのものと似た「内部海」もあるが、トリトンはエウロパよりずっと寒い太陽系の領域に位置している。表面が薄いピンクや赤みがかった色をしているのは、大気中や衛星表面のメタンが紫外線照射され、「ソリン」と呼ばれるタール様の物質が生成されているためと見られている。PHOTOGRAPH BY NASA 4/6木星を取り巻く79個の衛星のひとつであるイオは、まさに特殊な衛星だ。この岩石でできた小さな天体は、木星のごく近くを周回しているため、引っぱられては押しやられ、また引っぱられるというサイクルを絶えず繰り返している。その結果イオの表面は、火山であばた状になっている。木星のほかの氷衛星と同じように、イオにもかつて、海と氷の外殻があった。しかし、木星の潮汐力によって外殻がむしりとられ、溶岩を噴き出す表面があとに残ったと科学者たちは考えている。PHOTOGRAPH BY NASA/JPL/UNIVERSITY OF ARIZONA 5/6この写真は、NASAの木星探査機「ガリレオ」がとらえた、史上最も解像度の高いイオの写真だ。ガリレオは2000年2月22日、火山をもつイオのクローズアップ写真を撮影し、未知の地表活動が起きていることを明らかにした。科学者たちによればこの表面の組成は、なんらかの侵食作用、もしくは固体の氷の気化により生じた可能性があるという。PHOTOGRAPH BY NASA/JPL/UNIVERSITY OF ARIZONA 6/6木星の南半球をとらえたこの写真は、NASAのヴォイジャー2号が1979年6月25日に撮影したものだ。木星の荒ぶる雲の前に見えているのが、衛星のイオだ。イオは、ガリレオ衛星と呼ばれる木星の4大衛星のうち、最も内側の軌道をまわっている。PHOTOGRAPH BY NASA/JPL

このほど米航空宇宙局(NASA)は、低コストで効率のいい太陽系内探査を目指す「ディスカヴァリー計画」の次期ミッションとして、4つの最終候補を発表した。

「海王星の衛星トリトンと、木星の衛星イオを訪ねて:今週の宇宙ギャラリー」の写真・リンク付きの記事はこちら

ひとつは「VERITAS」(Venus Emissivity, Radio Science, InSAR, Topography, and Spectroscopy:金星放射率、電波科学、干渉合成開口レーダー、トポグラフィ、および分光学の略)と呼ばれるミッションである。金星軌道を周回し、その高温の惑星の表面を地図化するものだ。

もうひとつの候補として残った金星ミッションは、「DAVINCI+」(Deep Atmospheric Venus Investigation of Noble gases, Chemistry, and Imaging Plus:貴ガス、化学、イメージングその他の金星深部大気探査)と呼ばれている。こちらは金星の大気中に球形の探査機を降下させ、金星表面に接近させるミッションだ。

3つ目の候補は、木星の衛星イオを探る「IVO」と呼ばれるミッションだ。イオに急降下し、その表面やいくつもの活火山を近くから観測することになる。

4つ目の「TRIDENT」と呼ばれるミッションは、海王星の衛星トリトンを訪ねる。氷の衛星トリトンは表面下に“海”が広がっているとも言われ、表面から宇宙空間に水が噴き出している可能性もある。

3つ目と4つ目の候補に敬意を表して、今週の宇宙ギャラリーではイオとトリトンへと旅しよう。どちらの衛星も遠くからではあるが、別のミッションの一環として実施されたフライバイで観測されている(「ヴォイジャー2号」は1989年にトリトンをちらりと覗き見た)。

最終候補に残った2つのミッションが実現すれば、イオとトリトンに史上初めて専用の探査機が送られることになる。これから1年ほどかけて各ミッションを担当するチームが提案を練り、次の選考ラウンドに進む予定になっている。

だが、喜びの瞬間が先延ばしになる覚悟はしておこう。というのも、金星に行くまでそれほど時間はかからないが、木星にたどりつくまでにはおよそ7年の歳月を要する。もしTRIDENTが選ばれたなら、探査機は2038年になるまで海王星とトリトンには到着しない。

それまではこちらから、『WIRED』の宇宙写真ギャラリーを楽しんでいただきたい。