今週から始まるGI6週連続開催。そのトップを飾るのは、古馬の「最強ステイヤー決定戦」となる天皇賞・春(5月3日/京都・芝3200m)だ。

 長距離戦と言えば、実力差が出やすいため、馬券的には”堅い”というのがかつての定番だった。しかし、ここ最近は然(さ)にあらず。天皇賞・春の過去10年の結果を見ても、1番人気は2勝、2着1回、3着0回、着外7回という有り様で、3連単は10年中7回も10万円超えの高配当となっている。そのうち、2012年は145万2520円という超高配当が飛び出した。

 こうした状況を鑑(かんが)みれば、一発”長打”を狙っていきたいレースと言える。実際、日刊スポーツの太田尚樹記者もこう語る。

「過去3年こそ1番人気が連対していますが、その前の3年はふた桁人気の馬が馬券(3着以内)で絡んでいて、1番人気はさっぱり。こうしたレース傾向を考えれば、今年もひと筋縄ではいかないと踏んでいます。

 とりわけ今回は、近走が冴えない実績馬が多く、上り調子の馬にしても、GIの舞台で好走できるかどうか、疑問符がつきます。そういう意味では、穴馬が台頭する可能性は大いにあり得ます」

 そして、デイリー馬三郎の木村拓人記者も、実績馬や人気馬に疑問の目を向けて、波乱ムードを匂わせる。

「まず注視したいのは、今回の出走馬の中に『ステイヤーはいるか?』という点です。

 メンバーの顔ぶれからして、大きく崩れることがなく、一番計算できる馬と言えば、昨年の覇者であるフィエールマン(牡5歳)。一見、同馬の相手探しのようなレースに見えますが、この馬にしても、『ステイヤーか?』というと、そうでもありません。今の時代、長い距離への適性がそこまでなくても、3000mぐらいの距離なら、こなせてしまうことが多いんです。

 3歳時にGI菊花賞(京都・芝3000m)を勝っているキセキ(牡6歳)も、本質的にはステイヤーではありません。近走で3000m級の重賞で好走を続けているメイショウテンゲン(牡4歳)にしても同様です。同馬の場合、結果を左右するのは、距離というよりも、展開がハマるかどうか、という印象が強いです。

 さらに、前走でGII日経賞(3月28日/中山・芝2500m)を快勝したミッキースワロー(牡6歳)は、同距離が上限でしょう。2走前にGII日経新春杯(1月19日/京都・芝2400m)を勝って、前走の日経賞でも2着と奮闘した”上がり馬”モズベッロ(牡4歳)も、父がディープブリランテですから、3200mはかなり厳しいのではないしょうか。

 要するに、実績馬や人気馬には、れっきとしたステイヤーは見当たらず、荒れる要素は十分にあると思います」


天皇賞・春での大駆けが期待されるトーセンカンビーナ

 そこで、木村記者が推奨するのは、前走のGII阪神大賞典(3月22日/阪神・芝3000m)で2着と好走したトーセンカンビーナ(牡4歳)だ。

「父がディープインパクトなので、同馬も決してステイヤーとは言い切れませんが、勝ち上がってきたレースを振り返ってみると、派手な勝ちっぷりを見せたことがほとんどなく、そういうところがいかにも”ステイヤーっぽい”。しっかりと2着を確保した前走の内容からも、距離が延びてよさが出る部分を垣間見ることができました。

 正直、今回積極的に買いたいのは、この馬とフィエールマン。抑えで、ユーキャンスマイル(牡5歳)。ですから、オイシイ馬券を手にするためにも、トーセンカンビーナより実績のある馬たちには、どんどん人気になってもらいたいと思っています(笑)」

 トーセンカンビーナについては、太田記者も気になるという。

「ゲートに難はありますが、近走は5戦連続で最速の上がりをマークしており、終(しま)いは確実に伸びてきます。そして、今回の舞台となる京都では2戦2勝。その相性のよさは、おそらく坂の下りを利用して加速できるのが合っているのだと思います。

 同馬を管理する角居勝彦調教師も、『精神的に安定してきた』と成長を認めていますから、出遅れがなければ、上位との差はもっと詰められるはず。人気も背負わずに気楽な立場でしょうから、無欲の末脚は怖いと思いますよ」

 太田記者にはもう1頭、トーセンカンビーナ以上に注目している馬がいる。「最強の1勝馬」と呼ばれるエタリオウ(牡5歳)だ。

「よくも悪くも、典型的なステイゴールド産駒。気性が災いして結果が出ていませんが、晩成の血からして、5歳春で衰えるにはまだ早いです。裏を返せば、気持ちさえレースに向けば、一変があるということです」

 昨秋からこの春にかけては精彩を欠いているが、3歳時の菊花賞では2着、昨年のこのレースでも4着と善戦したエタリオウ。間違いなく距離適性は高い。そのあたりも見越してか、同馬を管理する友道康夫厩舎では今回、レースに向けての”秘策”を用意しているという。太田記者が続ける。

「全国リーディングトップを走る友道厩舎。ここでは、2つの策を講じてくるようです。

 ひとつは、展開面での作戦です。近走は先行策に活路を求めてきましたが、友道調教師によれば『人が促すより、自分のリズムでいったほうがいい』ということで、今回はもともとの末脚勝負に徹する構えです。

 ふたつ目は、馬具です。深いブリンカーだと視野が狭まって、(レースで)緊張してしまっていたようなので、今回は浅くして臨むそうです。

 一昨年の菊花賞では、フィエールマンをハナ差まで追い詰めた実力馬。この2つの策が実れば、勝ち負けになると思います」

 父ステイゴールドは、天皇賞・春2着の実績を持つ。その産駒もまた、過去10年で延べ4頭が戴冠を果たしている。ならば、エタリオウの一発があっても不思議ではない。 今年も波乱の様相を呈している伝統の一戦。穴党記者厳選の2頭に夢を託してみるのも悪くはない。