ダークホースと言いながら、UEFAクラブランキングでは、レアル・マドリーに次いで第2位(3位バルセロナ、4位バイエルン、5位ユーベ。6位マンC、7位パリSG、8位リバプール……)だ。

 今季も決勝に行く力は十分あると思っている。問題があるとすれば、選手層だ。他の金満クラブに比べると、もう1人、2人足りない。最後の最後で息切れする原因だ。

 そのアトレティコに、レアル・マドリーは決勝で2度勝っている。しかし、当時のレアル・マドリーと現在のレアル・マドリードを比較すれば、当時の方が上だ。決勝トーナメント1回戦で、マンCに先勝されている理由でもある。では、マンCがレアル・マドリーとの第1戦で圧倒的な力を見せたかと言えば、そうでもない。両者はいい勝負をしていた。アトレティコに対して分があるとは言えない。

 バルサしかりだ。レアル・マドリー、マンCよりもっと甘いサッカーに見える。パリSGも頭打ちの状態が続く。CLで優勝しそうなサッカーには見えてこない。

 アトレティコと決勝で戦い、勝ちそうなチームは、ただ1つしかない。バイエルンだ。決勝トーナメント1回戦。チェルシーを3-0で下したその内容は、他のチームのどのチームにも勝っていた。

 バイエルンと言えば、11-12(準優勝)、12-13(優勝)以降、決勝進出をはたしていない。UEFAランキング4位であるにもかかわらず。グアルディオラの時代も、惜しいところで敗れていた。

 ビッグクラブの中では最もモチベーションが高いチームに見える。そのうえ、ハンス・ディーター・フリック監督のサッカーがまたいいのだ。ピッチを広く使った高速なサッカー。パスワーク、展開力にも優れている。機が熟している気がする。今季はバイエルンの順番ではないか。チェルシー戦を見ていると、そう思わずにはいられなかった。

 セルジ・ニャブリ、キングズレイ・コマンの両ウイングがなによりよい。ティアゴ・アルカンタラとキミッヒの中盤も安定感がある。レバンドフスキーも衰え知らずだ。そして光るのが、19歳のカナダ人左サイドバック(SB)。アルフォンソ・デービーズだ。

 今季は若手の躍進が目立ったシーズンだった。各チーム20歳以下に必ずと言っていいほど、将来性豊かな若手を抱えている。アトレティコで言えばジョアン・フェリックスになるが、そのバイエルン版がデービーズになる。速くて巧い。けれんみもない。

 また、右SBのベンジャミン・パバールもいい。つまり、両サイドバックと両ウイングの4人が目立つサッカーなのだ。シンプルながら効率的。アトレティコのシメオネ監督に聞いたわけではもちろんないけれど、最も戦いたくない相手はどこかと訊ねれば、バイエルンと答えるに違いない。他のビッグクラブより雑念がない。今季はチャンスだった。まさに順番が巡ってきた感じだった。この中断を最も悔やんでいるのもバイエルンではないだろうか。