世界経済は分業で成り立っている

 人類は、技術革新や学問の成果を独り占めにせずに共有してきました。例えば、一般の方々には意味がないように思われる円周率の計算。スーパーコンピュータで延々と小数点の計算を繰り返すことは、太陽系外の惑星にピンポイントで人工衛星を着陸させることに役立っています。円周率が3.14では誤差が大きすぎて、月にさえ、到着できません。

 日本はかつて生糸の輸出国でした。その後、織物が主力産業になり、次に鉄鋼や化学、その次は家電や半導体が主力になりました。こうした一連の歴史を、一国の隆盛という狭い視野で捉えるべきではありません。世界は共同作業で成り立っている。日本が生糸を提供した先には、それを織りなす他国の協力があった。日本が鉄鋼を供給したその先には自動車や産業機械をデザインする国があったのです。

 労働力を供給する国、材料を供給する国、マーケティングをデザインする国など、世界各国にそれぞれ役割がある。どこかの国だけが特別に得をしているわけではありません。一様に、技術の革新や改善の恩恵を共有しているのです。

 世界は互いを信頼し合い、仕事を持ち寄り、共同事業しているのです。半導体製造装置を日米欧で作り、半導体を中韓台で作り、消費財をアセアン諸国や東欧諸国でアセンブルする。こうしたそれぞれの国が役割を分担し、人々やモノやサービスは世界中を移動します。

 各自ができることを各自がしたお陰で、どの国も豊かになり、どの国民も生活水準が上がりました。水道や電気・ガスなどのインフラが整備され、白物家電が普及し、女性の家事の負担は大きく低減しました。子供たちは学校へ行く時間や余裕ができ、青年たちは大学へ進学することが可能になりました。

長期投資とは世界分業の積み上げ

 人類には類まれな才能があります。互いに励まし、応援し合ったり、教え合ったりできることです。デジタル化が進んだ今、先人の叡智が分かりやすく共有され、誰もが最先端の学問に触れることができます。長期投資のキャピタルゲインは、先人の積み上げた上に我々が積み上げる成果です。長期投資とは世界分業の積み上げにほかならないのです。

 一方、技術革新によって単純作業を機械やITが担い、グローバル化で人の移動が活発になることで、先進国の労働者が失業するという負の側面もあります。その結果、移民に職業を奪われたと憤る移民排斥運動が活発化します。いつの時代も扇動的な右翼政党が躍進するといった利己的で保護主義的なトレンドも変わらず存在しているのです。

 利己主義は、世界分業を否定し、世の中の進歩を止めてしまいます。人類が利己主義に感染すると、互いに協力しなくなる。そうなると文明は退化し、ひどい時には滅びたこともある。危機下で利己主義が台頭すると、人の移動は制限され、賑わいをなくして景気が悪化し、国が貧困に陥る。そんなことが過去に繰り返されてきた。それを繰り返してはならない、と私は考えます。

 新型肺炎の蔓延によって世界中でロックダウンが生じました。私たちは、人類の退化運動を実体験しているのです。感染の恐怖によって、人々は「利己的な」行動を取らざるを得なくなりました。自分が感染したり、他者を感染させたりする可能性があるため、出歩いたり、人と会ったりすることを自重する状況に陥ってしまったのです。

人命と経済は両立できる

 ロックダウンは命を守る手段かもしれません。それでも、自らを守ろうとする行為はやはり利己的なものであって、本来の人類の生きる意義とはかけ離れたものです。思い起こせば、人は他者によって生かされています。他者への貢献が自らを助け、自らを幸せにすると信じてきた。だからこそ、利己ではなく、利他の精神が敬われてきたのです。 

 社会は、衣食住があればよし、というものではありません。イエス・キリストは言いました。人はパンのみに生きるにあらずと。音楽や演劇などの芸術、旅行、映画、レストランも私たちの大切な一部です。今回の疫病で一番大きな被害にあった欧米諸国がもう少し待てば夏休みだというのに、急いで学校を再開させつつあるのは、自粛が長引くことによる子供の学力や体力の低下、うつ病やDVの増加などといった健康被害や精神的被害を考慮していることも一因です。経済的苦境による自殺者も防ぐ必要もあります。

 世界分業の火を消さず、私たちは自粛明けに、早急に経済を回す必要があります。もちろん、人命も大事です。ありとあらゆる工夫を施すことで、人命と経済は両立できるはずです。人と人が触れ合い、感情を共にすることで、人類は進歩を遂げてきました。世界分業を止めてはなりません。分断された「利己的」世界を実体験した今こそ、その悲惨さを学ばなければならないのです。未来のために。そして、死者のためにも。

(DFR投資助言者 山本潤)

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