「エール」22話 古舘伊知郎 あやしい興業師として登場。「ひよっこ」の古舘佑太郎と父子で朝ドラ俳優

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第5週「愛の狂騒曲」22回〈4月28日 (火) 放送 脚本、演出・吉田照幸 脚本協力・三谷昌登〉



今日もL字がない。21回の視聴率は21.3%と、番組最高に(関東地区)。やはり裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)が出会って最強になったということか。世の中には、ふたり一組・カップルの仲睦まじさに萌える人も少なくないのである。朝ドラでは「ごちそうさん」「マッサン」「あさが来た」「まんぷく」などがそうだった。

「あそこだ!」

1回で、福島にいきなり怒鳴り込んできた茂兵衛(風間杜夫)に投げ飛ばされた三郎(唐沢寿明)は「あそこだ!」と閃き呉服屋・喜多一を飛び出して行ったので、豊橋にひとっ飛びかと思ったら、いったん川俣にやって来た。裕一(窪田正孝)の文箱をあさって、音(二階堂ふみ)の住所を確認する。いつも過程はふっとばし気味な朝ドラがここだけ過程をちゃんと描くのはなにゆえか。支店長(相島一之)に「素直ないい息子さんですよね。彼(裕一)を見てると楽しくなります 自由に歩ませてあげてください」と裕一を擁護させるためだろうか。彼を見てると楽しくなりますって、支店長たちがいじって楽しくなっているんじゃないか。


「輝きが違う」

その頃、裕一は音とミュージックティーチャー(古川雄大)のところに外国暮らしのレクチャーを受けに向かっていた。
天才作曲家を迎えるティーチャーは「私は先輩なのよ。堂々としてなきゃ」とそわそわ。現れた裕一を見て「輝きが違う」と床に倒れ込む。いやいや、ティーチャーのほうが輝いていますよ。
今回もまた、「ミュージック ティ」で斬られてしまった。美味しすぎる古川雄大。

古舘伊知郎、登場

古舘伊知郎が登場することは、先週の「ネーミングバラエティ 日本人のおなまえっ!」で明かされていた。日本人の名前に関する雑学バラエティー番組で、古舘伊知郎が司会をつとめている。先週は「エール」特集で、吟役の松井玲奈と梅役の森七菜がゲストで出演し、「エール」の意味についてなどが紹介された(エールは名前じゃないけど)。最後の最後に「エール」に今後出る俳優を紹介しますともったいつけて……古舘が登場という趣向だった。

今週は、志村けんも出るし、大物週である。

古舘伊知郎は、カップル萌の元祖かもしれない「君の名は」(91年)に主人公の友人役で出ていて、これで2度目の朝ドラ。息子の古舘佑太郎が「ひよっこ」に出ていて(和菓子屋の息子で弾き語りするヤスハル)、父子そろって朝ドラ俳優である。

さて。古舘伊知郎は鶴亀寅吉という名の興業師(ゆたか興業)。ミュージックティーチャーに懇意の楽器店から聞いたとやって来て、演奏会をやりませんかと誘う。
「怪しいわ 動きも早すぎるし」と不信感をもつ光子(薬師丸ひろ子)に対して、音は「縁起のいい名前」だから大丈夫と乗り気。


結果的に裕一は契約書にサインをする。
契約書にサインというのは、三郎が以前それでひどい目に遭っているエピソードがあり、なんかいやな予感。古舘伊知郎が妙に胡散臭い雰囲気があるので、いやな予感はいっそう強まる。

それにしても賞をとっただけでまだ誰も裕一の曲を聞いていないにもかかわらず、みんなの騒ぎっぷり。この頃の新聞の強さとか、外国で賞をとると箔がつくこととか、影響力がいまとは違ったのだろう。でも、福島の地方紙に載っただけでもこんなに騒がれるのだろうか。全国紙にも載ったのだろうかなどといろいろ考えてしまうが……。

契約書の場面の前に、福島で、裕一の母・まさ(菊池桃子)が、「人を騙す人より騙されるほうがいいの」などと言っているからいやな予感しかしない。

可哀想な弟

三郎が裕一を追って出ていったとき、大事な商談があり、任された浩二(佐久本宝)はまさに愚痴る。父も母も、兄・裕一のことばかり心配していると思って傷ついているのだ。生まれたときは、浩二を母がかわいがって、裕一が寂しい思いをしていたと語られていたが、成長したらみんなすっかり裕一、裕一。とりわけ音楽の才能を発揮してからはその傾向が強くなった。傾きかけた呉服屋を継いだものの、アイデアを父に許可してもらえず悶々としている浩二。
父親の頼りなさがいやでたまらないが、母は「人を騙す人より騙されるほうがいいの」と欲のない人のいい三郎を愛しているのであった。ひたすら暗い顔をする浩二。彼にも親の愛を感じられる場面を描いてあげてほしい。

「極める目をしている」

裕一は、ミュージック ティーチャーに「輝きが違う」と言われるうえ、職人・岩城(吉原光夫)は「極める目をしている」と認める。
その道を極めている人たちにはわかる、裕一のポテンシャル。

そんな裕一は、浴衣を着たかわいい音と、豊橋名物の手筒花火を見に行く。火の粉が舞うなか、花火をあげる勇猛な男たち。その圧倒的臨場感。花火師たちも極める目をしていた。岩城も花火を作ってあげるひとり。実際あげているところは出てこないが、せっせとつくっている姿が描かれた。吉原光夫は体制に抗う民衆を描いた「レ・ミゼラブル」の主人公ジャン・バルジャンを演じていることもあって、思索的な雰囲気が漂う。


内容充実

お祭りを満喫する裕一と音。でも帰って来たら、三郎が仁王立ちしていた。

15分の間に内容がぎゅぎゅっと入っている回だった。古舘伊知郎が出てくるまでわずか2分強。福島、川俣、豊橋と場所がどんどん変わり、それぞれの事情が描かれる。まさと浩二、光子と岩城の会話で、裕一のことを語りつつ、裕一と音の各々の父親像についても語り、妻たちの夫への思いも語られる。

お祭りで豊橋の土地柄を描き、楽しみつつも光子に別れを告げろと言われている音の憂いまで描く。15分の中にこれだけ緩急つけながら詰め込むのはさすが吉田照幸。きれいに譜面が描かれてきた感じがする。これは見やすい。

今日の窪田正孝

お化け屋敷でこわがる音を「こわくねえからこわくねえから。行くよ」とかばう彼氏感。浴衣もお似合い。
(文/木俣冬、タイトルイラスト/おうか)

(これまでの木俣冬の朝ドラレビューはこちらから)

番組情報

連続テレビ小説「エール」 
◯NHK総合 月〜土 朝8時〜、再放送 午後0時45分〜
◯BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜、再放送 午後11時〜
◯土曜は一週間の振り返り

原案:林宏司
脚本:清水友佳子 嶋田うれ葉 吉田照幸
演出:吉田照幸ほか
音楽:瀬川英二
キャスト: 窪田正孝 二階堂ふみ 唐沢寿明 菊池桃子 ほか
語り: 津田健次郎
主題歌:GReeeeN「星影のエール」
制作統括:土屋勝裕 尾崎裕和